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プリキュアで「死」を描くという事! プリキュアの力は「現実」に対しては機能しない?

こんにちは! 今回はちょっと重いのだが笑、プリキュアと「死」の関係について語っていきたい。この話について語る上で、プリキュアシリーズ17作目の「ヒーリングっどプリキュア」をメインに参照しながら進めていこうと思う。それでは初めていこう。

 まずプリキュアシリーズは、言うまでもなく子供向けであり、人が死ぬなどの過激な描写はほぼないし、「死ぬ」「殺す」等の単語も、作中の緊張感を出すために、仕方がない場合を除いて、極力使われないように作られている。そんなプリキュアシリーズの中でも、ヒープリでは、比較的「死」という単語が使われる事が多い。これは、ヒープリの作品としてのテーマと関係している。

 ヒープリのテーマの1つは「生きる」という根源的なテーマだ。しかし、このテーマを上手く描くのは割りと難易度が高い。
 僕達の生きている状態というのは、ある種当たり前の事で、日常生活の中で、今自分は生きてる!と生を実感する事は少ないし、プリキュアメイン視聴者層の子供達もそれは同じだろう。

  なので生きてる事の尊さを描くには、逆に「死」を描かなくてはならないと思うのだ。「死」を意識してこそ「生」の大切さがわかるからだ。そして、ヒープリでは、やはり、普通の人より少しだけ「死」に近いキャラが出てくる。それが主人公の花寺のどかだ。のどかは、小さい頃に原因不明の病気にかかり、長い入院生活を送っており、中学生になったくらいで、ようやく体を自由に動かせるようになったという不憫なキャラである。のどかは元気になった後も、病気の原因が不明のままのため、再発の危険もあり、定期的な診断も行われている。このように、健康で元気な他のプリキュア達よりも、少しだけ「死」に近い所にいる主人公なのだ。

 そんなのどかは、病院での入院生活が長かったため、学校に行きだしてからは、電車に乗るなどの、日常のちょっとした事にいちいち感激する。そして、その度に「生きてるって感じ~」と口癖をいう。そんなのどかを見て、子供達は何を感じるだろうか?きっと、自分達が健康で今生きている状態は当たり前ではなく、幸せな事何だと気づいてくれる子もいると思う。このように、のどかという「死」の影が少し強い子を描く事で、逆に「生」の輝きを描いたのがヒープリというシリーズなのである。

 そしてヒープリの悪役には、ビョーゲンズという、病原体モチーフの敵キャラが出てくる。ネタバレしてしまうと、のどかを苦しめていた原因不明の病気は、このビョーゲンズが原因であった事が物語の後半に判明する。

 ここまでの展開を見て僕が感じたのは、正直、のどかの病気はビョーゲンズ由来ではなく、リアルな病気にして再発させたほうが、絶望感は遥かに大きかったと思う。
 なぜかというと、ビョーゲンズのような、悪役の力による物ならプリキュアの力で解決できるからだ。逆にいえば、プリキュアの力が通用するのは、悪役(虚構)に対してだけであり、病気(現実)の問題に対しては無力なのである。

 もう少し詳しく説明すると、プリキュアは現実パートと虚構パートに分ける事が出来る。
 大雑把に分けると、前半の日常描写が現実パートで、後半のプリキュアに変身してからが、虚構パートだ。つまり、虚構パートに出るプリキュアも、悪役もどちらも虚構であると考える事が出来る。だからこそ、プリキュアの力が効力を持つのは同じ虚構の力である悪役に対してのみなのだ。日常パートの、友達と喧嘩したとか、自分の目標を達成したいとか、そういった現実の問題にプリキュアの力は何の役にも立たない。

 ヒープリでは、のどかの病気は悪役(虚構の力)が原因という事になったのでプリキュアの力で解決が出来た。しかし、もしのどかの病気がリアルな病気だった場合、プリキュアは力では解決出来ず、のどか自身が現実の問題として向き合わなければならなかった。僕はどちらかというとそちらが見たかったのだ。
 ただ、そうなるとプリキュアとしての物語の本筋とは別に、のどかの闘病の話が入ってきて、話がとっちらかる恐れがあるので、のどかの病気とプリキュアとしての使命である、ビョーゲンズとの戦いを繋げてきた製作者側の考えは理解出来る。後そんなにのどかちゃんをいじめるような展開は見たくない笑

 ただ、のどかの病気が現実の病気だったとして、実際に病気で苦しんでいる子供達もいる中、プリキュアの力で病気が簡単に治りました!なんて展開は恐らく出来ないだろう。だからこそ、もしこっちの路線で、ヒープリを描ききる事ができたら、今までのプリキュアとは全く別の場所に辿りつけていたのではないかとも思うのだ。

 とまあ、今回僕が話たかったのはこんな所だ。ヒープリは他のプリキュアと比べて色々と面白い試みをしている。今回話した事以外でも、ヒープリのシリーズ全体としての結論である「生きる事は戦う事」であったり。物議を醸したのどかの自己犠牲問題などについても、また別の記事で僕なりの見解を出していきたいと思っている。

 それにしても、のどかは主人公として非常に魅力的だと思う。自分が病気で辛い思いをしたからこそ、人に優しく出来るのどかの姿はポカポカと温かく、また胸が痛くなる程美しいのだ。

最後まで読んで下さってありがとうございました🙇 これからもプリキュアシリーズの批評はどんどん出していきますので、よかったらぜひ読んで下さい。ではまた🙋

 
 


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