鬼の霍乱みたび
雨がザーザー降ってきたり、UFOがあっち行ってこっち行って落っこちたりする6月6日に私は散歩がてら、病院へ行った。おとさんと一緒に。
五月半ば頃、黄砂に吹かれて、恋の歌は歌わねど、鼻水がとばらだい。いや、とまらない。夜は咳に悩まされ。自分の声を忘れるくらい見事な鼻声にハスキーボイスも加わって、
「大原麗子です」
と明石家さんまさんの真似をした。おとさんと一緒に。
実のところ私より先に鼻水がズビズバ言っていたのはおとさんで、ティッシュを抱えて暮らしていた。
おとさんは仕事が忙しくなるとてきめんに口内炎ができる。
おとさんは鼻水と口内炎と咳に悩まされて、市販薬をあれこれ試していた。
2人でズルズルコンコン。熱は出ない。
息子の月が病院へ行きなさいという。さすがの月も心配になったよう。
それに、月は選択の余地なく私に病院へ連れて行かれる。私だけ大丈夫と言い切るわけにはいかぬ。重い重い腰をあげた。
火曜日はおとさんが休みなので、一緒に病院へ行こうと約束をとりつける。旅は道連れ。近所にできた病院へ行ってみようと決めた。
ここ2回くらい発熱で病院へかかったけど、どちらも車の中で、鼻をグリグリされただけ。
今回はどうだろう。
近所なので2人でぶらぶら歩いて行った。入口で看護師さんが待ち受けていて、症状を話す。熱がないこと、covid19の検査に来たのではないことを確認され、入れていただく。玄関脇の椅子に座って問診票を記入すると、別室へ通される。
これはやっぱり隔離されているのかな?診察室に通してもらえるのはどんな症状の人なんだろうと話しながら待つ。
何人かの患者さんの診察が終わると、お医者さん登場。
フェイスシールドとマスクだけ。ああ新鮮。防護服バンバンの目しか見えないお医者さんにしかこのところお会いしてないもので。
どちらからでもいいですよと言われ、おとさんから診察していただく。
問診票を見ながら、喉を見て、背中から肺の音を聞かれた。おお新鮮。診察らしきことをちゃんとしていただけた。患者に触れることもなく、話を聞くだけの診察をして、鼻グリグリが定番だったので、おお~と驚いた。そして、目の前でおとさんが診察を受けているのもおお~と驚いた。これ私の診察も見られるじゃないか。
お医者さんは、肺の音もきれいなので、鼻水を止める薬と咳止めと、痰が出やすくなる薬と口内炎の薬とトローチをだしますねと言って診察を終えた。
今度は私。同様に問診票を見ながら、喉と肺の音の確認。私は喉はさほどひどくないので、口内炎の薬とトローチはなし。私を診察しながら、
「市販薬は使われましたか?」
と聞かれる。おとさんは、
「のどスプレーを使った」
と答えると、
「のどスプレーが合わなくて喉に炎症ができたかもしれませんね」
と言われて、おとさんと顔を見合わせた。なるほど。治りたい一心でシュッシュッとやっていたのが良くなかったかぁ。
口の重いおとさんに代わって、
「風邪薬も咳止めもの飲んでました」
と伝える。
ああ、これではまるで子どもに着いてきた子離れできない母親みたいじゃないか。しまった。お医者さんは、
「けっこう飲んでましたね。いいんですよ。でもこれからは今日の薬でお願いします」
と言われた。
そして診察の最後に、
「旦那さんでいいんですよね?」
と確認された。
9歳年下のおとさんは童顔でもあって、今日はTシャツ短パンサンダル姿で、やんちゃな少年のよう。時々親子と間違えられるので、今日も迷われただろうなと思った。
「ハイ」
って言っちゃったけど、ちょっと謎めいたままにしておきたかったなあなーんて。
会計して、薬局へ行って帰る。2人で4000円くらい。豪華なランチが食べられたね〜なんて言いながら、あちこちの紫陽花を見て帰る。早く治そう。
シオカラトンボが飛んでいた。もう夏ですな。
早くスッキリしたい。仕事がしにくいのだ。
このところの咳で3kg体重が落ちた。見た目残念ながらわからないだろうな。
シャキッとして健康的にやせて、スパッと暑い夏に向かいたい。
梅雨空のようなグズグズした体。梅雨なのにカラッとさわやかな空。
うーん。私もさわやかに澄んだ心と体になるぞ〜。
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