見出し画像

増加するまちごとホテル(前編)

こんにちは、コーイチです。
今回は、2015年頃から増加している分散型ホテルの中、今年1月にまちごとホテル「SEKAI HOTEL(セカイホテル)」が、3号店となる「SEKAI HOTEL Takaoka」を富山県高岡市にオープンしましたので、その施設については前編で、後編では他の街をホテルにした事例を見ていき、今後もこのような形態のホテルが増加していくのか考えていきたいと思います。

 まちごとホテルは「街全体にホテル機能を分散させたホテル」のことで、「分散型ホテル」とも呼ばれます。
 海外ではイタリアにある「アルベルゴ・ディフーゾ」が有名で、以前の記事「新たな宿泊業のかたち」で紹介した「NIPPONIA」が展開している古民家をホテルにしている事例もその一例となります。


1.やわやわブルー

(出典:sekaihotel.jpより)

 「SEKAI HOTEL」とは、クジラ株式会社が開発、運営し、まちに分散する客室に宿泊し、夕食・朝食会場や大浴場を周辺地域の商店と連携することで、まち全体をホテル化し、「旅先の日常に飛び込もう」というコンセプトのもと、有名観光地ではない地域に展開している分散型ホテルのこととなります。
 2019年に空き家の再利用、地域経済への貢献などの観点から、「日経優秀製品・サービス賞 日経MJ賞 最優秀賞」を受賞しました。
 1号店は、大阪の西九条で、2号店は、東大阪の布施で開業しています。

 「SEKAI HOTEL Takaoka」では、富山県高岡市界隈の魅力に飛び込んでもらう合言葉として「やわやわブルー」を掲げています。
 かつて、大伴家持が多くの歌を詠いたくなったほどの魅力を持つ雨晴海岸(あまはらしかいがん)や立山連峰が見られる高岡市には 日常生活においても多くの魅力的な「青」が介在していることに気づき、「青」のコンテンツを楽しむ体験に始まり、色彩豊かな「繊細さ」と、新しい人や価値観を受け入れる「寛容性」を持つ高岡市民とのコミュニケーションに発展するよう、しい印象を受ける「やわやわブルー」を「きっかけの青」として提供することになりました。

※「やわやわ」とは「ゆっくり」「ゆったり」「そろそろ」という意味を持つ富山弁。

 高岡市民の「もっと地元の魅力を発信したい」という想いに対する「SEKAI HOTEL」からの『そろそろ高岡が誇る魅力的な青を発信しましょう』というメッセージでもあるとのことです。

 「SEKAI HOTEL Takaoka」で「SEKAI HOTEL」とパートナーシップ契約を結ぶのは、100年を超える歴史を持つ地元企業である有限会社大野組で、高岡で生まれ育った専務取締役の大野 海氏と「SEKAI HOTEL」代表の矢野氏が3年にわたるコミュニケーションの末、「やわやわブルー」の合言葉にたどり着いたとのことです。

MAP

2.青のコーディネート

フロント、カフェ
フロント
ゲストルーム
(以上、出典:sekaihotel.jpより)

 「SEKAI HOTEL Takaoka」は、地域で有名な書店である文苑堂書店の4階建ての本店跡地をリノベーションしており、「柔らかさ」や「優しさ」を感じるための曲線や色を組み合わせ、空間の中で「青が目に留まる」、「青を手に取る」など体験を促す青のコーディネートを意識したホテルデザインとなっています。
 客室は、ドミトリータイプの個室や2人部屋、4人部屋の計8室を備え、雨晴海岸から雪の立山を眺めるイメージを表現したカーテンや青い胴幕の獅子舞のイラストなど、青を引き立てた柔らかい雰囲気で演出されています。

 チェックインの際には、青のカタログからお気に入りの青を選ぶと、その色にちなんだ観光スポットを紹介するカードを受け取ります。
 フロントはカフェ&バーを兼ねており、宿泊以外の客も自由に出入りし、地域住民に親しまれる場となるようになっています。
 また「SEKAI HOTEL」は、宿泊者に地域周遊パスポート「SEKAI PASS」を発行しており、提携する飲食店などでドリンク無料や割引のサービスを受けられ、「ORDINARY(日常)」に溶け込みやすくなるようにしています。

(出典:sekaihotel.jpより)

 「青のまち、高岡」には、遠く昔から残る雄大な自然による青から、高岡の人々が紡ぎ発展させてきた人工的な青まで、暮らしのあらゆるシーンに青が存在しています。
 天気の良い日には雄大な立山連峰が望める雨晴海岸や青色の国民的キャラクター(ドラえもん)や高岡大仏、まちを走るレトロな路面電車や、鮮やかな青に染められた高岡銅器など、多くの魅力的な青と出会うことが出来ます。

 また、富山湾を有する富山県高岡市には注目のグルメも豊富で、新鮮な海の幸だけでなく、高岡の人々に馴染み深い「すりみ揚げ」も有名です。
 国宝「瑞龍寺」や土蔵造りの街並み「山町筋」などの歴史スポットや、加賀藩がお祭りを奨励し続けてきた高岡の風景も必見のスポットとなっています。

3.歴史の想い出

(出典:鈴木スシタローの旅 youtubeより)

 「SEKAI HOTEL Takaoka」の中核を担うのは、リノベーションされた旧文苑堂書店で、かつては藤子・F・不二雄氏も足繁く通ったという歴史ある書店です。
 当初ホテルとしての再利用について、最初は、文苑堂の吉岡会長に断られたようですが、時間をかけ話し合っているうちに、高岡のために頑張っていきたいというところで了解を得たとのことです。

 地域住民はもちろん、全国の漫画ファンにとっても聖地といえる文苑堂は、リノベーションを経て「SEKAI HOTEL Takaoka」の中核へと生まれ変わりましたが、今まで地域に愛され、藤子不二雄の2人も若き日に通った書店の味わいを残すために、「文苑堂書店」の看板や店舗の床、階段はそのままにしたとのことです。
 古い建物の歴史をできるだけ残し、書店時代には公開されていなかった部分を活用しているのは歴史の奥行きさを感じさせます。
 また、ホテル内には同書店の吉岡会長が寄贈したドラえもんの複製原画も飾られています。

 ホテルと地域とのつながりが強く広くなるほど、「SEKAI HOTEL」の魅力は増していくかと思われます。
 現在、周辺の空き家も順次、宿泊施設とする計画で、2軒が候補となっているようです。

(出典:google.account youtubeより)

後半へ続く・・・

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
よろしければ、率直な感想などコメントを頂けるとモチベーションにつながります。
又、フォロー、サポートの方もよろしくお願いいたします。


 


よろしければ、サポートお願いします。サポートされたものは、今後の活動費として活用させていただきます。