見出し画像

都市型文化集積場

こんにちは、コーイチです。
 今回は、近年リノベーションスポットや話題のレストランが増加している江寧路に2023年1月に新たにオープンした、ハイエンドリテール、クオリティライフスタイル、トレンディ、50以上のハイブランドショップなどを融合した、ショッピングモール「MOHO」を見ていき、日本でもこのような業態のモールが今後出てくるのか考えたいと思います。


1.歴史の継承と新たな創造


 「MOHO」は上海市江寧路699号に位置し、江寧路文化街、陝西北路歴史文化街、昌平路創意産業集結区のジャンクションにあたり、景安寺、南京西路、夜間城の3つのコアビジネス地区に近く、南京西路の「後園」となっています。
 このモールがオープンしたことにより、南京西路の高級ビジネス・商業エリアの最後のクローズドループが完成し、静安北部のビジネスの雰囲気を大きく豊かに変えることとなっています。

(出典:BENOY HPより)

出典:news.winshang.comより

 江寧路は旧名ゴードンロードと呼ばれ、120年の歴史を持ち、前世紀の石庫門や新式車線建築が多く残っており、 周辺には「M50莫干山芸術公園」、「同楽広場」、「長寿公園」、「上海自然博物館」などもあります。
 また、都市ビジネスマップによると、「MOHO」のある長寿路エリアは、雇用と居住のバランスが取れており、価値指数、人口密度指数、交通便利指数、地域資源指数、消費力指数がいずれも0.9以上と高い水準で、壮年ファミリーや若いファミリー層の※TGI指数は、都市平均より高く、市平均を上回っているエリアとなります。
※TGI指数:(Target Group Index)
 ユーザーのある話題への関心度を示す指数のこと

 「MOHO」プロジェクトは、80,000㎡の高級ショッピングモール「MOHO」、グレードAのインテリジェントオフィスビル、ハイエンドホテルスタイルフラットを含む、総計180,000㎡の計画総床面積を有しているプロジェクトです。
 また、「MOHO」は、伝統的な小売の常識を覆すものとなっており、ハイエンドな小売、質の高いライフスタイル、先駆的なトレンド、一風変わった味をカバーしつつ、50以上のブランドファーストショップを導入しています。
 「MOHO」は数百年の歴史を持つ文化を継承しつつ、新しい建築文化、インテリアシーン、店舗空間デザインなどで、新たな商業空間を創造しています。

2.オリジナルIP

出典:news.winshang.comより

 赤レンガの中庭、ヴィンテージの時計台、ヴィンテージのエレベーターロビーなど、「MOHO」に足を踏み入れると、大きなグレーの箱の中に、前世紀建築の風景的な空間が随所に見られます。
 また、「MOHO」の敷地内には、かつて中国共産党中央委員会の指導者が重要事項の協議や書類の確認に使用した「赤い建物」、旧中国共産党中央委員会書記局があります。

 歴史的建造物の保存と再生の観点から、「MOHO」は心地よいスケールの建物群を作り上げただけでなく、中国共産党中央書記局の跡地をプロジェクトの正面玄関のオープンスペースに配置し、2階建ての古い建築をより多くの人に見てもらえるように工夫しています。

 「MOHO」のコンセプトは、「時代とともに進化し、東洋と西洋、古いものと新しいものが融合した建築空間で、あらゆる年齢層の人々が居場所を見つけられるようにすること」となっています。
 「MOHO」は、ハイエンドな商業不動産を商業的に探求したもので、「ブランドと一緒に新しい商業空間を作ることで、消費者が単に買い物に来るのではなく、展覧会をキュレーションする概念を導入し、ショッピングセンターで買い物をするような体験をしてもらう」ことだと「MOHO」の総経理である張嘉菁は語っています。

 このプロジェクトのハイライトは、「MOHO」が上質な生活体験の観点から、「MOHO BEAUTÉ」、「IDÉE LABO」、「MOHO MARCHÉ」、「MOMO」といったオリジナルIP(知的財産)を創造したこととなります。
 「MOHO」は、リテール空間をさまざまなデザインの美意識が発揮される舞台と捉え、新しい美意識のライフスタイルセンターを創造しました。
 これらは、現代の商業空間を創造する新しいアイデアと言われ、「MOHO」の高いクオリティを反映する重要なものとなっています。

出典:news.winshang.comより

 「MOHO BEAUTÉ」は、新しいビューティーリテールIPで、キュレーションされた商品セレクション、マルチエイジ&マルチジェンダーコンセプト、没入型アート展示スペースが特徴で、メジャーブランドのセレブ商品からニッチなトレジャーまで幅広く取り揃えています。
 店内には、香水エリア、ビッグブランドハイケミカルエリア、ニッチグッズエリア、メイクアップ&フードエリア、テクノロジー美容機器エリアの5つのテーマエリアがあり、ソーシャルフィールドのコンセプトにより、高品質、フルカテゴリー、フル体験が出来るエリアとなっています。

出典:news.winshang.comより

 「MOHO MARCHÉ」は、レストランの西洋化、中華料理の西洋化によって、消費者の視覚と味覚を覆すことを目的としたソーシャル・イーティング・スペースです。
 このエリアは約5,000㎡で、中には20〜30軒のユニークな屋台があり、それぞれ特徴的なシーンで紹介されています。
 例えば、ミルクティー屋のように見える屋台で、実は辛い鍋を食べていたり、「新聞売場」に入れば実はコーヒーを飲めたり、美しい「花屋」では小鍋を食べていたり、面白いコンセプトと快適な公共施設で、より親しい生活形態、不思議な出会いや驚きがあるエリアとなっています。
 また、バンドやスタンドアップコメディなどのパフォーマンスも紹介し、週末は朝方まで営業して「ナイトエコノミー」の雰囲気を深めていく予定とのことです。

 「IDÉE LABO」は、約1,500㎡の面積を持ち、ハイエンドヒップホップショップ「HOW III」をはじめ、様々なヒップブランドを紹介しています。
 ショップの型破りなデザインに合わせ、異なる時間、空間、地域、文化を組み合わせ、新しいミックス&マッチスタイルを提案する、実験的なアプローチをとっています。

 「MOMO」は、中国の小売業界の顔となる超リアルなバーチャルアイドルで、映画のようなCG技術で作られたオリジナルのデジタルIPで、肌や髪などのディテールを非常にリアルに再現し、「MOHO」に力を与えています。
 2年前に誕生した「MOMO」は、写真やスケートボード、ドラムを楽しみ、展覧会を訪れ、街の面白いところを探検する「クールガール」的な性格で、現代のトレンディな若者を象徴しています。
 「MOMO」は、Little Red Bookやソーシャルメディアへの日々の投稿を通じて、多くのファンを獲得しています。
 これらの新しい試みによって、南京西路の他の商業施設と明確な差別化を図っています。

(出典:winshang.comより)

3.トレンドをリード

(出典:小安Walk youtubeより)

 「MOHO」は多くの高級住宅地に囲まれ、消費力の強いホワイトカラーやシニアのオフィスワーカーが多く住んでおり、多くの高級ショッピングモールが近くにあることから、このプロジェクトはユニークな個性を持ちながら高級なスタイルを維持することが必要となりました。

 都市文化や流行の発信地としての「MOHO」は、強い流行の特徴を持ち、消費者の今の関心に合致させ、さらには関心のトレンドをリードするブランドの紹介に力を入れています。
 全テナントのうち50店舗が上海初出店の店舗だということで、中国初の映画館「白瑛三家」、IGFDファッショングループの高級自社デパート「LE TEMPLER LUXX」、中国初の「景碩没入体験シアター」、「豊山」などのテナントや中国初のプロサーフィン会場を持つ「ALOHA SURFHOUSE」、静安初の若者文化ブランド「INNERSECT」、静安初のスケートボードブランド「AVENUE & SON」、静安初のヤングプレーヤー向けショップ「ADLV」、華東初出店の「BOOKSTORE」、静安初出店の「INNERSECT」、上海ショッピングセンター初出店の「ALIMENTARI PIAZZA」など、個性的なメインショップが揃っています。

 日本からも、「TSUTAYA BOOKSTORE」、「KOMEHYO」、「IDEE LABO」などが進出しており、ファミリーや中高年富裕層よりも、若者を意識した店舗が多く入っています。

 これらのハイパワーなブランドが加わった背景には、「MOHO」が徹底したオペレーションを理解、実践し、ブランドとブランドエクステンションに重点を置き、斬新で先進的なビジネスコンセプトだけでなく、消費者に「LIFE MORE EXTRAORDINARY(もっと驚くような人生を)」というコンセプトを提供するという、「MOHO」プロジェクトの究極の定義があります。
 「MOHO」自体が、斬新で先進的なビジネスコンセプトであると同時に、マルチカルチャートレンドにつながるライフスタイルコンセプトとなることを望んでいるようです。 

4.最後に

中国商務データより

 2022年、コロナの影響が繰り返される中、上海初上陸店は1,073店、ハイエナジーな初上陸店が集中するなど、上海ビジネスは引き続き強い魅力を発揮しました。
 経済力でも消費ポテンシャルでも、上海は国際ブランドが中国に初進出する際、また国内ブランドが新ブランドをインキュベートし、新しいフォーマットに挑戦する際の最初の選択肢であることに変わりはないようです。
 中国ビジネスデータは「上海一号店データ報告・発展動向」の新版を発表しました。
 2022年に、「ファーストショップ地区」の王座が交代し、導入店舗数・容量ともに静安区が黄浦区を初めて抜いたことと共に、上海に12店舗の「大容量ファーストショップ」(グローバルファーストショップ、アジアファーストショップ)が導入されました。

 日本では、「GINZA SIX」が比較的この施設のコンセプトに近いように思えますが、体験という点が劣っているように思えます。
 今後、このような最先端のライフスタイル、トレンドをリードするような施設が出てくるのか楽しみにしたいと思います。

 今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
よろしければ、率直な感想などコメントを頂けるとモチベーションにつながります。
又、フォロー、サポートの方もよろしくお願いいたします。


よろしければ、サポートお願いします。サポートされたものは、今後の活動費として活用させていただきます。