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マニュアルがないコーヒー店

こんにちは、コーイチです。
今回は、日本で数年前からBlueBottleCoffeeやGORILLA COFFEEなどのサードウェーブコーヒーが流行っていますが、サードウェーブ発祥の地であるアメリカで、ユニークな方法で存在感を高めているサードウェーブ系の「Philz Coffee」を見ていき、今後日本にも出店するのか、また同じようなカフェが出来るのか考えていきたいと思います。

1.Philz Coffeeとは

                  (出典:PhilzCoffee youtubeより)

 「Philz Coffee」(フィルズ・コーヒー)はアメリカのカリフォルニア州サンフランシスコで発祥したコーヒーチェーン店です。
 創業者のフィル・ジェイバー(Phil Jaber)はパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区出身で、アメリカに移住して7年後の1976年にサンフランシスコのミッションディストリクトにあるコンビニエンスストアを買い取ったところから始まります。
 パレスチナで8歳の頃からコーヒー豆を売り、祖母の元でコーヒーを飲みながらブレンドや抽出の技術を身に着けていた彼は、酒屋でウイスキーや玉子を売りながら、コーヒーへの情熱を捨てませんでした。
 その後、1,000を超えるカフェを周って研究し、今でも看板メニューとして存在している「Tesora」というブレンドコーヒーが生まれました。
 2002年にジャワコーヒーの提供を始め、ドットコムバブル崩壊で食料品やアルコールの売り上げが急落する中、店舗を本格的なコーヒー店に変えました。
 その後、息子のすすめもあってサンフランシスコを中心に店舗の拡大を行い、現在の「Philz Coffee」が誕生しました。
 Tech業界がサンフランシスコの街を変えていく中で、店舗を拡大させ、「Philz Coffee」は学生やプログラマーのたまり場となりました。

2.こだわりと人気の理由

                     (出典:Coin youtubeより)

「Philz Coffee」最大の特徴は、コーヒー豆への圧倒的なこだわりにあります。20種類もの豆をカスタマイズし、ブレンドしたコーヒーを提供しています。店のバリスタはコーヒーに関する知識を備え持ち、お客さんに合ったとっておきの一杯を用意してくれます。
 初めてのお客さんには、フィルズ・ウェイ(Philz Way)と呼ばれる、甘さミディアムにミルクを足したものをオススメしているようです。
 「Philz Coffee」ではフェアトレードによるコーヒー豆の調達を行っており、「原産地がわかること(Tracebility)」、「労働者と環境に配慮すること(Worker Safety & the Environment)」、「社会的価値(Social Value)」をコーヒー豆調達の際に重んじています。

 また、サードウェーブで美味しいコーヒーを提供しているにも関わらず、気取らず泥臭い感じが人気になっている理由です。

 多店舗展開するカフェチェーン店はどうしても効率化のためにオペレーションがマニュアル化されてしまい、どこか機械的な印象を持ちがちです。  しかし「Philz Coffee」に限っては、マニュアル化があえてされていない部分が多く、それが人間味を出しています。
 海外では注文の際に、お客さんの名前を聞いて、コーヒーが出来上がったら名前で呼ぶというのが通例ですが、この制度も廃止して、他のチェーン店みたいに名前で呼ぶことはありません。それが逆に人間的でカジュアルだという信念に基づいているとのことです。

 そんな「Philz Coffee」ですが、その味とスタイルがサンフランシスコやシリコンバレーの人々にウケていて、2018年には累計でエンジェル投資家などから総額$75M(約80億円)もの巨額な資金を集めたことでも有名となりました。
 2019年8月末現在ではサンフランシスコ、ロサンゼルス、サンディエゴ、ワシントンDC、シカゴで52店舗を展開しています。

3.Philz Coffeeの特徴

                  (出典:PhilzCoffee youtubeより)

〇注文方法が初心者には難しい

 カジュアルさを極めて、マニュアルに従わないがゆえに、注文方法は初心者には難しいという特徴もあります。
 注文方法は、まずバーカウンターで店員にコーヒーをオーダーします。
 次にレジに行って自分が何を注文したかを告げます。
 (あくまでも自己申告なので、間違うこともあるようです)
 そしてバーカウンターに戻り、自分のドリンクができたら受け取ります。
 バーカウンターにはドリンクを作る人が4人くらいいて、自分のドリンクを作る担当の人が1人づつ付くような形となります。
 他のチェーン店みたいに、まずレジで注文して、それをドリンクバーで受け取った方が効率的で楽ですが、その非効率的な感じが楽しくて、逆に親近感のようなものがわいてくるようです。
 敢えて非効率的なことをして、規則だった行動でお客さんも店員も動けなくしていることが、あの独特なカジュアルな雰囲気を作ることに貢献しているのかもしれません。

〇エスプレッソマシンが存在しない
 カフェであるにも関わらず、エスプレッソマシンが存在しないということも特徴と言えます。
 普通のカフェだったら飲めるラテ、カプチーノなどといったものが飲めません。あくまで提供するメインのドリンクは注文を受けてから作り始めるドリップコーヒーであり、サードウェーブに徹しています。
 コーヒーメニューは焙煎の程度によって、ライトロースト、ミディアムロースト、ダークローストの3種類の中から選ぶことができます。一般的なサードウェーブのコーヒーは季節の良い豆を店側が選んでブレンドすることが多いですが、「Philz Coffee」ではお客さんの好みに合わせて選びます。
種類があまりにも多いので、詳しくないと戸惑うことになります。

〇店舗によって雰囲気が全く違う
お店によって中の雰囲気が全く違うという点も特徴と言えます。
 カジュアルなインテリアという点ではどこも同じなのですが、店舗によって雰囲気が違います。
 例えば、サンフランシスコの中でも若者やスタートアップの多いSOMA地区では、お店の壁が完全に地元のバスケットボールチームであるNBAのゴールデンステート・ウォーリアーズの写真で埋まっています。
 逆に同じサンフランシスコでも、ファイナンシャルディストリクトといって金融系の比較的真面目なサラリーマンの多い地域では、木目調の落ち着いた雰囲気のお店が多いようです。
 また、家具も店によって全く違うテイストの物が使われています。
 このように、同じ店でも地域の特徴に合わせてローカライズしているのも、大きな特徴だと思います

4.スタートアップに溺愛されている

                  (出典:Forbes Life youtubeより)

 このようなカジュアルな雰囲気が、サンフランシスコやシリコンバレーを拠点に働いているTech系のスタートアップから大好評であり、プログラマーから絶対的な人気を得ています。
 ここまで多くの店舗を出す前から、サンフランシスコの学生やプログラマーのたまり場として使われることが多かった経緯もあり、Tech系のスタートアップには多くの「Philz Coffee」ファンが多いです。

 Tech系スタートアップの代表格とも言えるFacebookについても同様であり、CEOであるザッカーバーグも「Philz Coffee」にテナント料を払わなくていいから、どうしても本社内に入れて欲しいと誘致したほどです。
 ザッカーバーグの「Philz Coffee」好きエピソードはまだあり、自身の結婚式に「Philz Coffee」のオーナー親子を呼んで、内輪の人しか参加できないパーティーでコーヒーを提供してもらったとも言われています。
ちなみにこの時は、「Philz Coffee」のオーナー親子の方が、いつも良くしてもらっているからと、無償で提供したと言われています。

  Facebookに限らず、Twitterのジャック・ドーシーCEOにマーケティングのアドバイスを求めたり、Appleに従業員研修の方法を請いたりするなど、Tech業界とは深いつながりを持っているようです。 

5.価格はスターバックスの約2倍

                  (出典:PhilzCoffee youtubeより)

「Philz Coffee」にはエスプレッソ系のメニューがなく、代わりに7年がかりで商品化されたカフェインが強めのミディアム・ロースト「Tesora」などが知られています。
 一流のコーヒーハウスのような特別な設備はなく、コーヒー豆は注文を受けてからひかれ、丁寧にドリップされます。
 味わい深いコーヒーは、決して安くはなく、Sサイズのコーヒーの価格はスターバックスの同サイズの2倍近い価格となります。

「Philz Coffee」の常連たちは、その価値がコーヒーだけでなく、そこで過ごす時間や「グランマの家」と呼ばれるくだけた雰囲気にあるといいます。
 マニュアル対応が目立つスターバックスや、流行に敏感な人が通うBlueBottleCoffeeに対し、「Philz Coffee」は肩の凝らない雰囲気が売りとなっています。
 バリスタはコーヒーを一杯ずついれ、客の好みに合わせてクリームとブラウンシュガーを加えるというように、顧客との心の交流を重視するスタイルを、ジェイバーの息子でCEOのジェイコブは、「コーヒービジネスではなく、人とのビジネスだと捉えている」と語っています。

6.最後に
 「マニュアルを作らず、昔ながらのこだわりのコーヒーをお客様の好みに合わせて提供する」、何でもデジタルやハイテクで便利になった世の中は、時間に追われるようで、せわしなく、たまに疲れてしまうこともあります。だからこそ、このようなホッとする時間を欲しているのかもしれませんね。

 現時点で「Philz Coffee」は、日本に上陸する予定はまだなさそうです。  
近い将来にも日本にも来るかもしれません。

 「おもてなし」にかけては、世界的にも優秀な日本人は、きっとこのような業態を作るのがうまいのだろうと思います。            
 日本独自のこのようなカジュアルで温かみのあり、味に徹底的にこだわった店舗が出現することを楽しみにしています。

今回も最後まで見ていただき、ありがとうございました。        よろしければスキ、フォロー、サポートのほどよろしくお願いいたします。


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