ローカルアプローチの店舗
こんにちは、コーイチです。
今回は、デザイナーとメーカー、デザイン業界の専門家が協働して、持続的に商品を作ることができるローカルネットワークを構築することを目指している「Atelier100」というロンドンにある小さな施設の取り組みなどを見ていき、このような施設が日本でも展開されるのか考えていきたいと思います。
※尚、今回は動画はほとんどありません。
1. Atelier100とは
(出典:couriermedia.comより)
2022年6月に、英ロンドンのハマースミス地区に「Atelier100」のコンセプトショップがオープンしました。
「Atelier100」は、「IKEA」と」「H&M」の店舗を展開する「Ingka Group」が手がける、新しいコンセプトのショップスペースであり、ロンドンのクリエイターのためのコンテンポラリーな「ハイパーローカル」サーチの場所となります。
この施設は、地元のデザイナー、メーカー、そして素材にフォーカスした店舗で、ワークショップやコワーキングスペースを備えたこれまでにないショップであり、販売されるアイテムはすべて、ロンドン中心部から100km以内でデザイン・製造が行われています。
さらに、ビジネスが学べるマスタークラスやマンツーマンのメンター制度もあり、合格者はオリジナルのアイデアを「Atelier100」で商品化し、販売できる機会も得られます。
合格者には、最大1万ポンドの資金が与えられ、業界のエキスパートによる指導が受けられます。
審査員は、「Ingka Group(IKEA)」のチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるマーカス・イングマンと、「H&M」のグローバル・ブランド・イノベーション・マネージャーであるカミラ・ヘンリクソンが務め、彼らもメンターになるとのことです。
また、多機能スペースは、クリエイティブコミュニティのハブとしても利用されるそうで、独自のブランドを育成・展開するために必要なサポートも受けることができます。
デザイナーは、「Atelier100」のスペースを、地元のクリエイターやその製品、地元のコミュニティの個性を反映し、常に進化し続ける一時的な展示スペースととらえています。
店内は、購入客もデザイナーもテンションがあがるような、活気あふれる内装を採用しており、訪れた人は、地元に住み、働く人が手がけるアイテムだけでなく、店舗に反映されているその独特な雰囲気も楽しむことができます。
また、照明、棚、鏡などの什器の多くは、オックスフォードストリートにある「Topshop」の旧旗艦店などから再利用されたものとなっています。
「Atelier100」の設計にあたっては、単なるショップではなく、トークやワークショップ、イベントなどを開催し、常に進化し続けるエキシビション・スタイルのスペースを作ることに重点を置いたものとしています。
「Atelier100」は、アトリエ、ワークショップ、スタジオであり、メーカーや製造業者、クリエイターが集まって、自分たちだけではできないことを実現するための場所となります。
因みに、東京駅から100kmというと、ほぼ関東圏が対象エリアとなります。
(出典:はんけいサイトより)
2.2大ブランドのコラボレーション
(出典:theoneoff Tic Tokより)
このプロジェクトは、外から見ると、世界的に有名な2つのブランドとの大きなプロジェクトに見えますが、この2つのブランドがコラボレーションに挑戦することが大きいプロジェクトとも言えます。
以前、「IKEA」と「H&M」は、一緒に仕事をしたことがあり、持続可能な生産、新しい素材の発見などを模索していましたが、消費者向けに何かをしたことがありませんでした。
本プロジェクトの初期の段階で、この2つの会社がお互いにスポンサーになることは、とてもインパクトがあり、私たちが実際に変化を起こす一員になれると感じたといいます。
常に学び続けなければいけないし、他の誰もが何かを与え、貢献できることを知るという考え方全体がとても重要だといいます
このプロジェクトは小さな規模で始まりましたが、プログラムに参加しているクリエイターたちが本当に成功し、そうでなくても、もしかしたら違うテクノロジーに拡大し、さらに多くの企業にこのような取り組みが生まれる道を示すことができればと願っているとのことです。
プログラムに参加しようとするクリエイターの多くは、最初からサステナブルな考え方を持っており、多くのクリエイターの頭の中には、資源を大切にし、使えそうな素材を探して再利用することを考えています。
「Atelier100」では、ロンドンから100km圏内ですべてを完結させるという目標を掲げており、クリエイターにとっても、生産者や顧客にとっても、不必要に遠く離れた場所でモノを作らないことで、よりエキサイティングなものになっていくことが期待されています。
3.インスピレーションの網を紡ぐ
(出典:allevents.inより)
「Atelier100」は、ロンドンという地域社会の中で、あらゆる形の創造性とデザインのつながりを生み出し、インスピレーションの網を紡ぐことを目的としています。
ファストファッションが環境に与える影響が注目されている昨今、「Atelier100」は、ハイストリートリテールに必要とされるハイパーローカルアプローチを刺激することが期待されています。
「Atelier100」は、オープン前の4月に、ロンドン中心部から100km以内に住むクリエイター、メーカー、製造業者に、革新的な製品のアイデアを募集しました。
選ばれた最初の20人の地元クリエーターたちは、「Atelier100」の資金援助と指導プログラムの一員となり、最大1万ポンドを受け取って、アイデアの実現を目指しています。
これらの製品は、2022年秋から「Atelier100」の店頭に並ぶ予定ですが、何が提供されるかは今のところ公表されていません。
しかし、ロンドンを含む歴史的、地質学的に興味深い場所から発掘された粘土を作品に使用する「Alison Cooke」のような宝物がラインナップに含まれていることは確かと思われます。
それまでの間、店内で販売されている商品は、すべてロンドンを拠点とするクリエイターがデザイン・製造したスモールビジネスによるものとなっています。
ロンドンの学生エラ・ラッシュとカイア・ビビーは、「Atelier100プログラム」に参加するクリエイターの一人で、自分たちのブランド「Gum LdN」のもと、サーモクロミック素材を使ったユニークなハンドメイドジュエリーを制作しています。
彼らが「Atelier100」の公募を見たとき、この機会を逃すわけにはいかないと思い、すぐに応募したとのことです。
ここでは、指導や資金提供を受けられるだけでなく、同じような道を歩むクリエイターとコラボレーションして、ビジネスを次のレベルへ引き上げることができると考えていると言います。
4.最後に
このプロジェクトが地理的に狭い範囲に集中していることは、環境にとって素晴らしいことで、プロトタイプの段階で関係するクリエイターが快適に協力し、将来的に成功し、持続可能なビジネスを共に構築するための関係を維持できるようにするための方法でもあります。
尚、「Atelier100」は将来的に他の都市でも展開する可能性もあるようです。
日本では、2022年3月に東京、白金台に「作り手の見えるモノ」を、商品が生み出されるストーリーを知ってもらうと共に、買い物できる場所である「タビエ・マビエ」という店舗がオープンしました。
(出典:タビエ・マビエ パンフレットより)
「タビエ・マビエ」はクリエイターが住むマンションをイメージしており、実店舗での販売と並行して、マンションに暮らしながら商品を制作するクリエイターの風景をSNSを通じて紹介していき、顧客との交流をしています。
店頭には洋服、靴、バッグ、アクサセリー、陶器、アロマなど大量生産ではなく一つひとつ丁寧に作られた商品が並びんでおり、それぞれのモノ作りの根底には、使い捨てではなく長く大切に使ってもらいたいとの想いがあります。
クリエイターが在店しているので、作り手から直接説明を聞きながら商品を選ぶことができます。
「タビエ・マビエ」は、少し規模感や目的は違いますが、これもローカル、モノを大切にしている事例かと思われます。
日本でも、イベント的に有名ブランドが色々とやっていますが、地域に密着しながら、新しい物、人を育てるような店舗はないかと思います。
今後は、日本でもそのような施設が出来れば、もっと豊かなヒトやモノが出来るのではないかと思います。
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