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変化する青果市場

 2019年に蘇州市内でオープンし、中国では大きな話題になった青果市場「双塔市集」。
 この市場を皮切りに、中国全国におしゃれな青果市場(食材市場)が増加しているそうです。

(出典:Eat InChina youtubeより)

 青果市場とは、庶民的な八百屋、肉屋、卵屋などが一つの建物に集まった形態の施設で、レストランなどへの卸売から一般家庭への小売まで行っている場所のこととなります。
 日本でもスーパーマーケットが少なかった時代は、このような市場が一般的でした。
 今回は、2021年12月に上海市普陀区にオープンした「真如・高陵集市」を見ていき、日本でも昔ながらのこのような市場が受け入れられるのか考えていきたいと思います。

1.青果市場の変革

(出典:shanghainavi.comより)

 青果市場とは、果物、野菜、茄子、魚、肉などがたくさんあり、近隣の人々が新鮮さと便利さを追求するために、買い物をする中で人々と出会う場所です。
 上海の庶民には「籠の中の様子を見よ」という言葉があり、上海の食品市場の変革は、都市再生の詳細を表しており、都市の生き生きとした証だとも言えます。

 2021年10月に期間限定で、ファッションブランドの「プラダ」が「呉中市場」と手を組み、約2,000㎡を超える面積に、約50のブースが同居する市場を作りました。
 1階には野菜や魚介類が並び、2階ではシェフが軽食をその場で提供しています。
 ラグジュアリーブランドが運営する生鮮食品市場なので、価格が高い商品が並ぶと予想されていましたが、実際には上海の一般的なスーパーマーケットと価格面で大きな差はなく、デジタル人民元決済などの先端技術もなければ、限定販売される商品もありませんでした。
 それでも開店と同時に多くの人で賑わいを見せ、SNSではプラダのショッパーを撮影した投稿が飛び交いました。

(出典:adkd.neより)

 他にも百年続く野菜市場「三角地」は常に革新と変化を求めていたり、「無印良品野菜市場」は北外灘に中国初出店したり、「鎮寧野菜市場」はスマート野菜市場にアップグレードし、デジタル人民元による野菜購入や、スナックバー、デイケアセンターをすべて揃えたりしています。

 これらの変革は日常生活の中で行われることによって、誰もが質の高い生活を享受し、街の温かさを感じられる街という都市の方向性を明らかにしています。

2.上海の路地裏の雰囲気

(出典:TVB Anywhere Life youtubeより)

 2021年3月に「高嶺路青果市場」は建て替えのため閉鎖され、9か月の再設計と改装を経て、2021年12月末頃に「真如・高陵集市」として新たな形態で正式にオープンしました。
 「真如・高陵集市」の総建築面積は約3300㎡で、 「Hanli Business Management (Shanghai) Co., Ltd.」のもとで「Wanyou Market」ブランドの運営・管理再建後、「生鮮市場 + 上海名物小吃館 + 街区サービスセンター」の「三位一体」のワンストップの生活センターとして、「新空間、新市場、新方向」というコンセプトのもと、昔の上海風の雰囲気を作り出しつつ、数十の上海風の老舗を導入し、ショッピング、食事、公共サービスを一体化した普陀区の新しいランドマークとなりました。

 青と赤のレンガが織り交ぜられた石庫門2階建ての建物は、1930年代の上海の路地裏をイメージしており、石庫門住宅の路地が市場の建物のなかにすっぽり入っている感じです。
 戦前の上海を思わせる看板やポスター、自転車、郵便ポスト、自転車などが置いてあったりと、なかなかに凝った作りとなっています。

(出典:meet-in-shanghai.neより)
(出典:meet-in-shanghai.neより)

 この場所の中心となるのは青果市場で、青果、魚介類、鶏肉、調理済み食品が所狭しと並べられています。 
 また、上海の老舗屋台が十数軒集まり、一角にはテーブルや椅子もあって、自由に食事できるようになっています。 
 2階には理髪店、ジム、コミュニティ食堂、託児所、児童成長センターなども入っています。

 市場は手頃な価格の野菜と貧困救済のための特別カウンターを設置し、ブランド企業と協力して有機野菜、輸入牛肉と羊肉、特別なフルーツなどを直接供給しており、オリジナルの特殊工芸品や調理済みスナックなどのカテゴリーも提供しています。
  またサービス面では、鎮路町街区サービスセンターに統合されており、各種パーティーや高齢者デイケア、コミュニティ食堂、修理・修繕、家事サービスからコミュニティステージ、共有フィットネススペース、子供教室まで、豊かで温かいコミュニティの交流空間と活動シーンを創出しています。

(出典:meet-in-shanghai.neより)

3.ローカル色が強い街

(出典:喜歡上海的理由 youtubeより)

 「真如・高陵集市」のある普陀区は上海市西部の水陸交通の主要地で普陀路として名付けられました。
 呉松江(俗称蘇州川)は中国全国土を横断する川で、西連太湖流域と黄浦江、長江に通じる内河航路となり、9世紀末、中国と外国の商人たちは呉松江の水運を利用して両岸に工場を相次いで建設し、それが上海の有名な工業地帯となりました。
 現在はローカル色が強い街となり、地元の人や昔ながらの雰囲気を楽しみたい観光客に人気があるエリアとなっています。

「真如・高陵集市」の場所は普陀区の真如というエリアで、市街地からはかなり遠く、周辺は新興住宅地になっています。
 新興住宅地なので、市街地の開発でこのエリアに移り住んだ高齢者も多いと思われます。
 市場で売られているものはどこでも買える庶民的な食材なので、彼らにとっては、市街地に住んでいた頃に慣れ親しんだ老舗の味と、開発によってなくなってしまった路地裏の風景を楽しめるのはこの上ないことなのかもしれません。

4.最後に

(出典:wenhui.whb.cnより)

 欲しいものごとに何軒も店を回るのではなく、ひとつの店でいろいろなモノが買えるスーパーマーケット。
 その革命的な業態の誕生は、世界経済を揺るがした大恐慌の翌年である1930年(昭和5年)、アメリカ・ニューヨーク州ロングアイランドに開業した「King Kullen」と言われています。
 創業者は、マイケル・カレン氏で、長年グロサリーストアで働いた経験を生かし、セルフサービス方式を採用し、商品を低価格で提供するスタイルの店は、大恐慌にあえいでいた庶民の心をしっかりととらえました。

 日本初のスーパーマーケットが誕生したのは、「King Kullen」の開業から25年あまり経ったころと言われおり、
その後、高度成長期を迎えた日本では、1956年(昭和31年)には「西友」の前身となる「西武ストアー」が設立。
 1957年(昭和32年)は、のちにゼネラル・マーチャンタイズやショッピングモールを取り入れて業界を牽引する「ダイエー」が創業。
 1961年(昭和36年)には「イトーヨーカー堂」の前身「ヨーカ堂」がレギュラー・チェーン化に着手しました。
 2023年1月時点では、全国で17,227店舗ほどもあるようです。

 現在は、様々なタイプのスーパーマーケットやネットで購入できるECスーパーなどもあり、非常に便利で快適ですが、人とのつながりはなく、単に買い物という作業的側面が拭えません。
 一般客も行ける卸売市場もありますが、ほんの一部です。
 
 日本でもノスタルジーを感じられ、人とのつながりが出来る「真如・高陵集市」のような市場が街に出来れば、コミュニティーが生まれ、街が元気になっていくかと思います。
 また、外国人になどのインバウンドでも人気が出るかもしれないですね。

 今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
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