中二病院(結-ムスビ-)

「うん、中等度の中二病だね」

キッパリと言われてしまったので返す言葉が見つからない。
「厳密に言えば重症に近い中等度ってとこかな?悪化する前に診れてよかったわ。」
「…どういう意味⁇それ」おそるおそる聞いてみた。

「問診表に友人の数書く欄あったでしょ。そこにゼロを書いたよね。友人ってのは日常生活で重要な存在だったりするんだ。人によってはクラスメイトとか部活の同期はいるけど友人はいないなんて書く奴もいるけどね。あと、幼少期のアニメや特撮も結構観てるね。悪いことじゃないんだけど、アンタの場合そのワンシーンについてめちゃくちゃ熱くなって書いてる。これがそれだけど、わかる?」
見せてくれた問診表にびっしりと文字が連なっている。確かにアニメの話になると止まらないという節があるが、それが中二病と何の関係があるのか。
「…まあ、ヲタクと呼ばれる奴もいるんだし、ここまで熱くなる事は別になんとも思わないけど、気になるのがここ。」そう言って問診表のある項目を指差して更に続けた。
「その他に『今どうして生きているかわからない』って書いたでしょ。これ、どういう意味かわからないけど、問診表を要約すると『今なんでこんな平凡な生活しかしていないのかわからない』って事でいいのかね?」
仰る通りで頷くしかない。
「あのさ、自分が主人公の空想ごっこもいい加減にしたら?」呆れた声で促されたが、我慢ならずに反論した。
「空想の何が悪いんですか⁈毎日毎日くだらない話に付き合って、クラスメイトも先生も親も、みんな自分勝手に生活してるだけでしょ⁈誰一人として自分のことしか考えていないし、そもそも友達いなくて困った試しはありません‼︎幽霊のあなたにとやかく言われる筋合いはありませんから、もう帰ってもいいですか」
「帰るって、まだ診察終わってないけど」と言われたのと保健室のドアを開けようとしたのが一瞬だった。が、ドアはびくともしない。
まさか、閉じ込められた⁈
「一応診察が終わるまではここから出られないからね。後処方箋出して終わるから戻ってきな」
手招きされたが、戻る気になれない。察したのか何か書いてドアに近づいてきた。
「一応これ、アンタの処方箋ね。処方箋といっても薬ではないから薬局いってもムダだけど」
はあ、と適当に答えた後、「今起こった事は他言しない方がいいからね。仮に他言したらアンタ一生こじらせて生きるハメになるよ」
…どういう意味だろうか。
「んじゃ、お大事にー」とドアを開けられで半ば強引に保健室を出された。
一瞬訳がわからなかったが、我に帰り振り向くと見慣れた保健室が佇んでいるだけだ。
手には、間違いなく処方箋が握られている。
こうしちゃいられない。と慌てて体育館に駆け出した。もちろんみんなに早くこの珍事を伝えたい一心で。

この後、一生涯孤立することになるなんて予想しなかったけど…

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