中2病院(序)

目の前の光景に、当てはまる言葉が見つからなかった。

退屈だった。
中学生になって最初の夏休み。
卒業した小学校と、学区の違う小学校が混ざって入学した中学校はいわゆるマンモス校。
制服はあるが校則はほぼなし、しかも公立で進学率や部活の全国大会出場率も高いとなるとさぞ羨ましがられる環境だが、人が増えれば人間関係だって面倒だし先輩や教員とのやりとりだってしんどくなる。
アニメでよくある友人関係やラブコメでありがちな教師と生徒の恋なんて現実の話では夢のまた夢だ。
部活こそ入ったが連日練習だし、最初こそ応援してくれた親は帰りが遅いやら勉強がどうとか顧問の言いなりで家では何もしないだのと小言を言われる始末。
正直、家にも学校にも居場所なんかなかった。
このまま消えても誰も悲しむ奴なんかいないのだろう。と本気で考えるくらいだ。
そんな時に耳に入った噂。
夜の学校に霊が出る。
しかも学校の保健室が乗っ取られて勝手に病院にしている。
そんなものただの都市伝説だろうと思っていた。どうせ先輩か悪友の作り話だろう。
だから、クラスでやる学校のお泊まり会で学校内の肝試しにも正直乗り気は全然なかった。

お泊まり会当日。
学校のジャージで登校して、テニスコート前の広場でBBQやホールでロシアンルーレット。
クラスメイトははしゃいでいるが楽しそうな雰囲気と反比例するかのように純粋に淡々と過ごした。
そして、本題の肝試し。
学校内の照明は全て落とされている。
肝試しといっても、体育館を出て決まったコースを通るだけ。言い換えれば体育館から校内一周するだけのマラソンだ。
あらかじめ決められた班に分かれて懐中電灯を渡されわーきゃー言いながら校内を歩き回っていく。
いよいよ自分達のターンになった。
体育館から教室前の廊下を渡り、階段で3階へ。
特別教室をめぐり、中央階段を降りて2階に向かう。
中央階段を降りようとした時だった。
渡された懐中電灯が突然消えた。
電池が切れたかと思い、電源ボタンを何回か押していたその瞬間、

ガタン‼︎

割と大きな物音が聞こえた。
その物音にびびってしまったのか、班のメンバーほとんどが階段を一斉に降りてしまった。
唖然として取り残された。
仕方ないから明かりが切れた懐中電灯を持ったまま2階を回った。
2階には例の保健室がある。
…⁇
空いていないはずの保健室に明かりが付いている。
誰かいるのか⁇
明かりに導かれるように保健室に近づいた。
怖いもの見たさと、クラスが仕組んだベタな罠かもしれないという半信半疑な気持ちで恐る恐る保健室のドアを握った。
…開かない⁈どういう事だ⁈
ノックをして再度開けようとしたが、ドアはびくともしない。
なんで⁇誰かイタズラしてるのか⁇
なんだよ、ただのイタズラじゃないか。
学校に霊が出るなんてただのホラだったんだ。
半ばがっかりしながら階段を降りようとしたその時、

「誰だよ、まだ受付始まってないんだけど」

…えっ⁈受付⁈

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