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幸せハーモニー 最終回

#3 幸せ実体験

 大根を植える


 畑に到着すると、幸太が出迎えてくれた。

 幸太「突然ですいませんね。写真や電話よりも、実際に畑を見てもらった方が良いと思って。」

幸太の畑

 幸太「ここのスペースで良ければ、自由に使ってください。」

 オヤジ「こんな広い範囲を使っていいんですか?お金はいくらですか?」

 幸太「お金はいりませんよ。無料で。」

 オヤジ「以前、家庭菜園やっていた時は、年間3千円で、複数人で借りていたんですよ。」

 ……
 オヤジと幸太は、この後も畑の話で盛り上がっていた。

 幸太「もし良ければ、大根のタネがあるから、蒔く?」

 この時、すでに3時を過ぎたところだった。

 ボク「今から?すぐ出来るものなの?」

 幸太「みんなでやれば、すぐできるよ。あと、道具とか、自由に使ってもらっていいからさ。なんでも言ってよ。」

 幸太の親切な対応で、ボクはヤル気スイッチが一気に入った。

 ボク「じゃあ、お言葉に甘えて、みんなで大根のタネを蒔いちゃおう。」

大根のタネ

 こうしてボクたちは、畑を見学に行ったその日に、大根のタネを蒔くになった。

 それから帰宅して、優香と畑のことを話した。

 優香「道具も何もなくて、結局、全部借りちゃったね。」

 ボク「幸太、優しすぎるね。野菜もいっぱい貰ってしまったし、幸太にお礼しないとね。」

 それとボクは、オヤジが今日のことをどのように思ったのか、知りたかった。

 カラダは大丈夫だったか。無理やり畑に参加させてしまい、オヤジは迷惑じゃなかったか・・・

 非通知の電話

 翌日は台風だった。

 幸太から電話があった。

 幸太「大根のタネ、流されちゃってるかもしれないね。」

 ボクは、なんだか残念な気持ちになった。

 そして、その日の夜、ボクのスマホに、非通知で電話がかかってきた。いつもは出ないのだが、2回かかってきたので、電話にでると、相手はオヤジだった。

 オヤジ「昨日はありがとう。久しぶりに動いたから、筋肉痛になっちゃってよぉー。畑も近いし、歩いて行こうかなと思ってさ。」

 ボク「まぁ、あまり無理せず、のんびりと気長にやればいいんじゃない?」

 ……
 その後もいろいろ話した。ボクは、オヤジがニコニコしている顔や、嬉しそうな声を聞いて、安心した。

 考えてみると、オヤジから電話がかかってきたのは、初めてではないだろうか?ボクは、あまりオヤジとは会話をしなかったし、なんだか不思議な感覚だった。

 1週間後

 大根のタネ蒔いてから、1週間が過ぎた。その週は天気が悪かった。大根は大丈夫だろうかと、不安な気持ちで畑に向かった。

 すると・・・

台風後の畑


 大根は発芽している。大根さん、よく頑張った。

発芽

 母は来なかったが、オヤジも来て、幸太も後からやってきた。

 この後、コーヒーを飲みながら、みんなでたわい無い話をして、のんびりとした時間が過ぎていった。

 さらに1週間

 それから、天気は回復した。オヤジは、毎日畑に行っているみたいだ。

 母からLINEが毎日のようにくる。

 母「お父さん、毎日畑に行って頑張ってるよ。お母さんも自由な時間ができたし、お父さんも趣味を持てた。それに、なによりも、お父さんは畑に行って、話し相手がいるし、ホントに良かった。ユーキのお陰だね。」

 洋一が学校から帰ると、ゲームの前に、優香と畑の様子を見に行くそうだ。

 そして、ボクにLINEで写真を送ってくれるのだ。

 優香は、朝のランニングが終わると、1人で畑に行って、オヤジや幸太と話をして帰ってくるそうだ。

 大根は成長している。

葉っぱが大きくなった

 ネットを張り、間引きをしたり、ボクは、オヤジのやり方に従った。

 ボクと優香、洋一は、幸太の道具だけに頼れないと、自分たちで最低限の道具を揃えた。

クワ
長靴と手袋

 幸せの結末

 ある日の日曜日、ボクはいつものように畑に行った。その日は、良い天気だった。

畑の景色

 ボクは、目を閉じた。

 心地良い風が吹く。ゆったりとした時間が流れている。そして、思い返した…

 洋一も畑に来て、オヤジや幸太と会話をしている。家でゲームをしているよりも、有意義な時間だ。

 オヤジは、再びやる気を取り戻してくれた。熱気が伝わってくる。

 優香は、ボクがいなくても、積極的に畑に行って、みんなとのんびり会話を楽しんでいる。

 母は、オヤジの過ごし方に満足している。それに、母は自分の時間も作れて、喜んでいる。

 人にはいろいろな問題がある。

 幸太に畑を借りてから、みんなが良い方向に向かっている。

 みんなの喜んでいる姿、笑い声や楽しそうな笑顔が、まるでオーケストラのように、ニコニコとハーモニーを奏でている…

 そして、ボクは目を開けて、空を見上げてみた。

 …なんとも言えない、時が止まったような時間。このまま眠れるんじゃないかと思うぐらいの平穏な心。

 あ、これって、もしかして「幸せ」っていうのかな?

 ボクは、幸せを実感した。

 そうだ。これが幸せなんだ。

 空気や電気のように、目には見えないが、幸せは感じるものなんだ。

 今この瞬間を、大切にしよう。

 もしかすると、幸太は、ボクたちに「幸せのタネ」を蒔いてくれたのかもしれない…


 最後までお読みいただき、本当に感謝しています。

 長くなってしまいましたが、これからも表現していきますので、よろしくお願いします。

 おわり


最後までお読みくださり、ありがとうございます。 自分の中にある考えを表現する難しさ、そして楽しさを実感しています。今後も、読者様に共感していただけるように、文章に磨きをかけて、自分を表現したいと思います。よろしければサポートをよろしくお願いします。