人生を変えたバイト_面接・研修編

18歳の夏、私は行く意味が持てなかった大学を退学して、大学に通う為のお金を稼ぐ為のハーゲンダッツのバイトと事務の仕事の掛け持ちをシフトを増やしていた。目標があったわけではなかったけど、とにかく働いてお金を貯めようと思っていた。


ある日、何気なくバイト募集サイトを見ていると、

「OZON リニューアル店舗オープニングスタッフ募集」の記事。


あのOZON。初めて年齢をごまかした、あのOZON。私が高校生の時に通いあげたシーモネーターのイベントをやっていた、あのOZON。高校生でバイトできないか一度電話で聞いて、高校生はダメと言われた、あのOZON。

夢の国、OZON。


何の迷いもなく、速攻応募した。

前の記事に書いたように、コミュニケーションが苦手で、男性嫌いなら普通はクラブのバイトに応募しないと思う。けど、そんなの凌駕できるのでは?何なら克服できたら一石二鳥でしょ!というくらいの勢いで、シーモネーターがイベントをしていた聖地でバイトできるかもしれない、という事が嬉しくて仕方なかった。

ここで先に伝えておくが、私はOZONについて、シーモネーターのイベントをやっていた時の印象しか知らず、他のイベントについてはさっぱり知らなかった。それも調べずに勢いだけで飛び込めたという事が、若さの強みである。

憧れのOZONだから、書類で落とされるかもしれない・・・私そんなにギャルでもないし・・・と、神に祈る気持ちで連絡を待つ日々が続いた。

特に時間もかからずあっさりと連絡が来た時には、飛び上がって喜んだ。

面接に行く日が来た。面接の日程については、結構日時のパターンを出してもらえて、天下のOZONなのに融通をきかせてくれて、なんて優しいんだ、と思っていた。

後から分かるのだが、オープニングスタッフの募集なのでとにかく大量の人材を募集していて、書類は通り放題・面接はし放題だったのだ。

緊張しながら、新しい店舗の場所につくと、まだ内装が完成していない新しい匂いがした。5Fと6Fに店舗があり、6Fのバックヤードにあった事務所で面接となった。

面接の時の思い出は明確には覚えていないが、聞かれた事については絶対に入りたい!という意思は持ちつつ普通に答えた。一番聞かれたのは、どのくらいシフト入れる?金土日は入れる?みたいな事だった気がする。私は今しているバイトの事もあったが、土日は事務のバイトもなかったので、金土日は大丈夫です!と強く主張した。

すると、その場で(・・・もしかしたら、その日中の電話だったかもしれないけど)

「合格です。じゃあ来週以降で研修をやるから、来れるとこに来て」とその場で言われた。とてもあっさりと。私は飛び上がりそうに嬉しかったけど、静かな事務所で飛び上がる事はせず、嬉しさを噛み締めつつ冷静に研修の日程について聞いた。

もう一度言うが、書類通り放題・面接受け放題だったので、おそらく金土日に入れれば、合格し放題だったのだ。それを知らない私は嬉しくて嬉しくて、帰り道はニヤニヤしながら帰った。OZONでバイトできる事に、身体が熱くなった。


バイトの合間をぬって研修に行くと、想像していた5倍くらいの人数の新規スタッフがいた。恐らく40名くらいいる。

そこで初めて、あれ?これは、ほぼほぼみんな合格かな?とその時気づいた。それでも、そのタイミングにOZONに滑り込めたキセキ!と、研修を受けられる嬉しさで、特に気にもしなかった。

こんなに新規バイトを取るという事は、リニューアル前のOZONメンバーもそこそこ辞めていて、そこそこキツイ仕事である、という事に気づかなかったのである。

研修は、ホールの回り方(灰皿の処理、トイレチェック、ドリンクの下げ方、ダスターの取り扱い方、ステージ横や楽屋口も含めた2フロア分回る導線、営業時の掃除について)、バーでの業務(ドリンクの作り方、グラスの洗い方、補充やビール樽交換ついて)、キャッシャーでの業務(身分証チェック、ボディチェック、チケット販売、カウントなど)、キッチンでの業務(フード調理、まかない調理について)などを教えてもらった。

VIPルームでの業務や、照明の操作についても後に覚えていくことになるが、この時点ではなかった。

一緒に研修を受けている新規スタッフがとにかく多くて、全く顔と名前を覚えられなかった。働く以前に、研修の段階で人見知りが発生してしまっていた。そして、研修については元々前の店舗からいた先輩が教えてくれていたのだが、

全員めっちゃギャル男。めっちゃギャル男だ。女の人は1人もいない。

めっちゃギャル男!

名古屋はギャルもギャル男も多い土地ではあり、自分もBガールっぽくはあったものの、これまで私はギャル男と接した事はなかった。異世界の存在だ。

上記に書いた研修内容からも分かるように、結構丁寧で濃密に研修してもらっていたので、先輩の皆さんも鍛えられてきて見た目より真面目な感じで優しいのには安心していたのだが、なんせギャル男なのだ。

新規スタッフにもギャルもギャル男もいたが、レベルが違った。恐らく酸いも甘いも前店舗でくぐり抜けてきたであろう、何というか肝が座ったギャル男なのだ。雰囲気が違う。

新規スタッフ同士ですら既に人見知り発動していたのに、先輩が全員ギャル男という事には面食らった。

あれ?私シーモネーターの事が好き!という勢いだけで、OZONの細かい部分全然知らないぞ、と。ステージやイベントに夢中で、バーカウンターに寄りもしてなかったし、キャッシャーにいた人の印象なども覚えていない。

渡されたタイムテーブルもよく見たら、6Fの系列店のSPIRALはずっとHIP HOPやHOUSEやRAGGAEのイベントだけど、5FのOZONは月〜土までトランスとパラパラとサイケだった。パラパラは少しは分かるものの、トランスもサイケも良く知らない。

あらららら?毎日シーモのイベントと思っていたわけじゃないけど、何にも調べずにまさかのギャル・ギャル男が大挙するクラブに入ってしまったー!と、ご期待通り入社後に気づいた。

気づいたら、コミュニケーションが苦手とか、男性が嫌いとかっていう概念とか何だそれ?うるせえっていうような場所に来ていた(言い過ぎ)。荒療治にも程がある。

でも、憧れのOZONに入れたんだ!だから絶対諦めないぞ!という、大学中退の時には一切持たなかった信念があった。


そして、遂に招待客に向けた仮オープン日と、リニューアルオープン日が着々と近づいていた。



ハタノ











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