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【今日の山田】うぉぉおおお!!!!!!!!!!砂の女!!!!!!!!!!!!


ごきげんよう人間たち、山田だ。

安部公房の砂の女を読んだ。


とんでもなかった。


思ったことを箇条書きにしてみた。

・例えが独特

その中でも特に、なぜあれを「指」と称したのだろう。
短かったん?(絶対違う)


・男が屈服するほかなかった、あの屈辱的な瞬間。それとは対照的な、気持ち悪いほどに優しい村人

終盤、穴から見事に逃げおおせた男は、何の因果か、むなしくも村人に見つかってしまう。
そしてついに巨大な蟻地獄のような場所で身動きが取れなくなり、惨めにも助けを乞うしかなくなる。
直前の逃亡劇の躍動感と「やっと村から逃げられる!あと少しで……」という男の高潮から見れば、雲泥の差に風邪をひきそうだ。

普通なら、砂をかき出すために外部の人間を不当に閉じ込めていた連中だ、やれ「なぜ逃げだしたこのクズが」だの、やれ「てこずらせやがって殺してやる」だの言って集団で襲い掛かっても不思議ではない。

なのに、村人はすこぶる優しい。穴にはまった男を助けるために手を貸す、しまいには世間話までするときたもんだ。

気持ちが悪い。

優しさで男の心を制御しようとしたのだろうか。
たしかに、何か失敗したとき、怒られもせずただただ慰みを受けるだけだと妙に居心地が悪くなることがある。せめて一喝してくれた方がスッキリもするというのに。
居心地を悪くさせて、勢いを削いで、しおらしく、従順な生贄をこさえる準備をしていたのかもしれない。


・なぜ最後、男は逃げなかったのか

最後、梯子が運よく外されず、周りに誰もいない奇跡のような瞬間がめぐってくる。
しかし男はまた穴の中に戻っていく。自作の留水装置が壊れたのを見て戻ったのだ。

周囲の狂気じみた愛郷精神に染められてしまったから。
属した集団がどんな異形をはらんでいようとも、退路を断たれ、洗脳されれば、人はだれしもただのパーツのような存在になってしまう。
そんな注意喚起にも見えよう。

外の世界に救いはないから。
むしろ外の世界も穴の底も似たようなもので、双方一種の苦しみを内包している。そして、今いる場所の、絶望の種ともいうべき穴の底で水を貯めるすべを発見する。
人間の、苦しい日常の中にこそ目を凝らせという示唆にも見える。

ここは読み返すたびに解釈が自分の中で流動していく。


・なぜ砂の「女」なのだろう。

基本的に男を中心として書かれているし、最後は地上への逃亡をやめて自ら砂の底へ消えていくのだから「砂の男」としてもいいとは思うのだが。
どうして「女」なのだろうか。

家主の女に翻弄される話だから?
男をゆっくりと飲み込むどろどろとした狂気や砂、そうした得体のしれないものを「女」のモチーフと重ねたから?

明確な理由は分からないが、フィーリングとして砂の男よりも砂の女の方がしっくりくる。音の響きが、じわじわねっとりしているから。
謎の感覚である。


・冒頭の一文「罰がなければ、逃げる愉しみもない」

男は面倒な社会から逃れ、昆虫という自らが自由になれる世界へと繰り出す。そうして砂の穴の底へと落ちた。

不自由から逃れたとしても、何処へだって不自由は根を張っているということなのだろうか。

高校までは制服を強制され、私服で日常生活を送ることを夢見る。
そうして大学に進学し晴れて自由の身になったと思えば、さて何を着たらよいのか、アレを着たらダサいだの、コレを着たら年相応にしなさいだの、文句を言われる。そこで出来上がる、世相をふんだんにパッチワークした無難な恰好。
自由の先には理不尽な不自由が満載、そんなよく聞く話に似ている気がする。

不自由から逃れるすべがないのであれば、今いる不自由の足元に目を凝らして小さなやりがいを愛でてやれ、それが男の最後からくるメッセージなのかもしれない。


また、「不自由から逃れるすべはない」と、一種の処刑宣告のような言葉だが、逆に考えてみる。

もし、不自由がなかったとする。

不自由がなければ、自由を期待する一種の目標のようなものはなくなる。
だいぶ極論だが、不自由がなければ自由を求める楽しみも湧き起らない。

旅行に行く自由と労働に縛られた自分との間には、明らかに「旅行のためにがんばろう」「旅行には何を着ていこう」「なんのお土産を買おう」そんな高揚があるのだ。
憂鬱な月曜でさえ、「今週やり切れば土曜は旅行だ!」なんて布石になりうる。

灯を求めてもがく、一匹の蛾のように。
不自由があるからこそ、自由というきらきらした何かを求める楽しみがある。


罰がなければ、逃げる愉しみもない、そういうことなのかもしれない。


ーーー

考察とか性に合わないので、もうやめた。
読書はフィーリングで読んだ方がおもろい。

風呂上がりのコーヒー牛乳みたいに、ガッと飲んでプハァ~ッ!ってやるだけでいい。

そもそも砂の女、非常に節操のない例えをするなら、山田と上田のいない因習村。

救いのないメリバ。

そんな感じであった。


山田と上田のいない因習村、終わりじゃねーか。

上田!頼む!通信教育で鍛えた空手で村の老人どもを蹴散らしてくれ!

……上田、普通に家主の女に欲情して「まぁ、スコップを既に持っていらしたんですね、助かります」って言われそうだな。


久しぶりに脳みそを使って疲れた。

寝よ。




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