エキスパートシステム

人間が知的な情報処理を行うときは知識と推論を用いる。
知識とは整理、あるいは構造化、抽象化された情報のことである。
推論とは知識を組み合わせて新しい情報を生み出す情報処理である。
人工知能は「推論」に焦点を当ててきたが、Feigenbumは現実の多くの問題を解くための鍵は「推論」ではなく「知識」であると主張している。

エキスパートシステムの概要

1970年頃、専門家の知識やノウハウを大量にデータベースに格納し、単純な推論によって専門家と同等の判断を行うエキスパートシステム(知識ベースシステム)が登場した。

 ・NYCIN:血液感染症の診断と治療アドバイスを行うシステム
 ・PROSPECTOR:航空写真から鉱脈を探索するシステム
 ・XCON:コンピュータの構成を決定するシステム

エキスパートシステムの構成

「知識ベース」と「推論エンジン」によって最小限のエキスパートシステムを構成することができる。その他、「説明システム」「知識獲得システム」「UI」から構築する。

スライド2

知識ベース
システムが対象とする問題を解くための断片的な知識やノウハウを格納したデータベース。対象問題により異なる知識ベースが必要となる。

推論エンジン
知識ベース内の知識やノウハウを組み合わせて推論を行い問題を解く。異なる問題にも同一の推論エンジンが使える。

説明システム
推論システムの結果や根拠をエンドユーザにわかりやすく説明するためのシステム。

知識獲得システム
専門家と知識ベースとのインタフェース。矛盾する知識や不足する知識をチェックして、修正を促す。

知識の分類

表現による分類
(1)宣言的知識
人が見てわかりやすく、保守性に優れているが、知識利用時に探索が必要になるため処理効率が悪い。(例:〜は〜である。)

(2)手続き的知識
人には理解しにくいが、コンピュータにとっては処理効率が良い。
(例:もし〜なら〜を実行せよ)
(3)体系的知識
教科書にあるような整理された知識。ほぼ完璧な知識であるが、実際の複雑な問題解決に直接的に利用できないものが多い。

(4)経験的知識
対象とする問題に特化した知識で、問題解決には効率的であるが、体系的ではないため、例外や見落とし、最適解が保証されない場合がある。
知識ベースには経験的知識を用いる。
(5)浅い知識と深い知識
例外を許すような知識を「浅い知識」、原理原則や物理構造などを記述した知識を「深い知識」と呼ぶ。
利用方法による分類
(6)事実知識
事実に関する知識。(例:犬は哺乳類である)

(7)判断知識
判断のための知識。「犬は哺乳類である」という事実知識は「猫は哺乳類である」という判断知識にもなる。



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