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【続編】「美術」と「呪術」を交差する【ゲームというメディアアート】【ゲーム紹介】

【本文3000字程度、画像4枚、動画引用あり】

前回の振り返りと呪術の前提

前回の投稿の続きから少し延ばした記事になります。

前回の振り返り

 前回、呪術というのが対象者にとって不可視のものであるが故に効力を持つのではといった内容だったのでした。

 そして今回は、現代の「呪術」の視覚化からお話しようかなと思います。
 というのもイメージの可視化を共有する手段は限られており、呪術はこれまで音声や身体動作や道具(呪具やお札)のような媒体を経由して理解できる存在でした。

 つまり「呪術」そのものの本質は、(現代科学的に解釈すると)人間の頭の中にしか存在しないはずなのですが、「呪術」という存在を認識させるため、あらゆる方法で説得力を持たせようと呪術師がモノを経由してその「不可視の存在」を伝えようとしたのではないかと思います。
 そうした方法や媒体の多様化が、後世の人間にとって魅力的な世界観を形成する一助になったんだろうなぁ、と想像しております。

呪術の前提

 今回扱う「呪術」の概念について、厳格な意味で言われる呪術とはかなり異なるのかなと思います。
 というのも実際の呪術はかなり細かなプロセスによって成り立っており、正しい順序で儀式を進めることで目的を達成しています。

 また、呪術は他者に害を為すだけでなく、病気の発見や死者の弔いにも用いられます。近年の呪術への一般的イメージには呪術=他者の不幸を願う行為として語られることが多いかもしれないですが本来はそうした行為を「邪術」や「幻術」、「妖術」などと呼びます。

 ハッキング(コンピューターなどの解析)とクラッキング(他者のコンピューターからデータなどを盗む行為)の関係のようにそうした力を扱う行為とそれを悪意を持って利用することとは異なる言葉で表現されるべきとは思いますが、今回「呪術」は術を対象に為す行為全般を指し、特に術によって対象を調伏する行為について取り扱います。

 それでは、昨今の呪術や呪文を扱ったとした作品、特にゲームなどはどう捉えられているのか詳しくみていこうと思います。

 今回紹介したいと思うのは『Ghostwire: Tokyo』という作品です。
 最近のゲームは一人称視点で没入感がすさまじいのが特徴だと思います。
 実際グラフィックも、一見では現実と区別のつかないほどのものまで出てきました。

 ゲームには開発するツール一式がパッケージされたゲームエンジンというのが用いられており、最近ですとUnreal Engineというのが非常に繊細な描画も可能とする優秀なツールだなと思います。
 今回紹介する作品もこのアンリアルエンジンを用いたゲームとなります。


 こうしたゲームが視覚的に新たな世界を表現している部分からもメディアアートとしての機能を充分発揮しているのではとも考えています。

 それと今回紹介するこのゲームは#私のイチオシでもあるので春の連続投稿企画のタグもつけさせていただこうかなと思います。応援よろしくお願いします!!

超常能力で世界を救う『Ghostwire: Tokyo』

 『Ghostwire: Tokyo』では、突如起こされた超常現象によって消えた人々を救うべく東京を舞台に戦いながらその真実を探る、といったゲームになっています。
 Bethesda Softworks(ベゼスタ ソフトワークス)から2022年3月25日発売されたタイトルになります。(執筆している時点でちょうど二年が経ちましたね)

 そして今回紹介したい「呪術」の表現という点について、スクリーンショットやゲームプレイの公開トレーラーを用いながら、主にアクションなどについて見ていこうかなと思います。(ストーリーのネタバレなどはございません)

ホラーゲームではありませんが、敵キャラなどにホラーテイストが盛り込まれたアドベンチャーにはなるので苦手な方は動画を飛ばしても良いかも。


術の動作

 主人公は手から放つ術を三種類用い、それぞれ緑が風、赤が炎、青が水の属性になっています。
 動画40秒辺りに実際にどう動いているのか様子がわかるかと思いますが、手で印を結ぶ動作によって呪文を呼び出し、手のひらや指先から呪文を放つというイメージです。

主人公は突如超常能力を与えられた一般人

 ゲーム上で呪術を放つ時、対象に向けて撃つイメージが用いられます。

 つまり呪術を現代で用いるイメージは、術者が指向性を制御し対象に放つことが当たり前のようになっています。
 (ここにはゲーム性を担保するため当然、向けたほうに術が飛ばなくては困るのですが)

 対象を確認し、弾道が存在するということが、現代における呪術表現の特徴の一つとして見ることができます。

 術に対する今昔共通の認識としては詠唱などにあたる予備動作を含むことかなと思います。具体的には発動条件が手の動き印を結ぶことによって術を呼び出すようになっており、本作では攻撃の予備動作になるほかに人々の霊体を救う時に必要な動作の一部にも用いられています。

人々の霊体には杭のようなものが刺さっていることがあり、表示される動作通りに印を結ぶことで救うことができる


特殊な力を扱う、身体への表現

 呪術を使うことができる人間ということを示すため、力が通っていることを身体に何かしらの線状の回路のように表現することが多くみられるのかなと思います。
 本作では術が使えることを示す表現として手や腕に血管を強調し巡らせるような表現がなされています。

術を発動する際などに、主人公の手全体に血管のような紫の光が浮かび上がる

 
 これは尋常でない力を宿したことを視覚的に理解できるよう身体の内部から変質していることなどを指すのかなと思います。

 現実の世界でも特殊な力を宿すために、まじないの表現として入れ墨などがあったのではないかなと思います。ただし入れ墨は自身を対象としているような、魔除けなどを目的にしていると考えられるので、シャーマンと一般人で異なる意味の図像を用いたりしていたのだろうか、など考えられますね。

その他このゲーム内における呪術的要素

 その他に御札によって対象に属性の攻撃や一時拘束などを可能としたり、周辺のオブジェクトや敵を捜索する「霊視」というアクションや、空中を浮遊できるアクションがあります。

東京のビル街を空中浮遊で降りる様子。
ビルとビルの間を飛び回ることもできる。その姿はさながらニンジャのようだ!!


 この辺りはゲーム性をより強めるための道具の一部と考えてもよさそうですが、例えばアイテムに頼ることで本来主人公が出せる力以上のものを引き出したりする点においては実際の御札と遜色ないものなのかもしれないです。

まとめ


・印を結び術の準備を行い、指先や手のひらから指向性のある弾を放出するイメージ
・身体機能として術が発動できることを線状のイメージで可視化できるようにしている
・その他に道具や索敵用の術を用いてゲーム性と世界観の強化を同時に行っている

 それまでの呪術などに用いられる道具や動作をゲーム内に巧みに組み込み、テーマを利用してストーリーを進めるゲーム性では特別新しいわけではないかもしれません。
 ですが、日本を舞台に西洋で言うところの魔法使いのような存在をテーマにした作品は多くないので、それが現代に現れるとどういうイメージを生み出すのかなど、ただのゲームとしての面白さ以上にこれまで描けなかった世界の雰囲気を存分に味わえる体験として非常によく作りこまれていたと感じます。

 ゲームの中で特に感じるのは、エフェクトの力によって呪術が可視化され、一人称視点がさらにゲームの中に引き込んでくることで、さながら呪術使いになった気分を体験できたように思います。

 本来呪術は不可視のものであるため、漠然としたイメージでしか表現できないため、決まったイメージが存在しないのが現状なのかなと思いました。

あとがき

 こうしたゲームを分析してみるとやはり、ビジュアルだけでなくマップやゲーム性なども含め、プレイヤーに未知の体験を提供でき総合芸術のような良さを抱えているように思います。
 個人で利用できるメディアアートとしての可能性などもあり、今後もVRなど技術の発展が、それまで味わったことのない経験を生み出し、新たな発想の種になるのかなと思いました。

 加えて、あまり今回は内容として思っていた以上には仕上がらなかったと反省しています。個人的には言いたいことうまくまとまらなかった、そんな印象です。

 呪術という存在が目に見える形として表そうにも、元々漠然としすぎているからか、表現したもの自体が本質を掴むことは絶対ないのかもしれないですね。

 例えば空間芸術で表現すると鑑賞者に体感として呪術を味わえるかもしれないな、と考えており、このシリーズの次回は「インスタレーションと呪術」みたいな内容でもいいかもしれないですね。

 漠然とした恐怖と、それを絶つ異常に清浄な空間を作って、区切ってどちらも味わえるみたいな。インスタレーションに対する知識は全くといっていいほどないのでそれを勉強するところからになりますが。

 そもそもそういうものを作り出せる空間もありませんし、設計図を公開するような内容になるのかな。設計図作ってみてからとりあえず考えよう。

更新頻度も元々月イチを考えていたので、もう少し時間を掛けようと思います。ご了承ください。まずは就活などを終わらなければ。

いつもスキをいただきありがとうございます。励みになります!!

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