怖過ぎた母の実家①

私の母は鹿児島県出身の三姉妹の長女で、埼玉県在住。
次女は、母と一緒に住んでいて、三女は嫁いで鹿児島県内に住んでいる。
祖母は二十年前、祖父も十二年ほど前に亡くなっており、母の実家は今、空き家になっている。

その空き家の名義がまだ祖父のままである。
法改正により今年の春から、適切な名義変更がなされていない場合、罰金が課される場合があるということで、「いい加減手を付けねばならん」と去年の春、母を伴い、実家に行って来た。

私の祖父は祖母が亡くなってボケてしまい、祖母の葬式で自分の次女に対し「前からお前のことが好きだった」ととんでも告白をしたので施設に入った。
そしてその葬式で親戚が
「お前ら先祖の財産をどうするつもりじゃ。どうせ悪用するんだろ」
と言いがかりをつけ、私の母と弟が
「こんな田舎の土地、売りたくても売れんわ」
と応戦し、穏健派の叔母二人と私が
「ばあちゃんの葬式でやめなよ」
と仲裁するという、まるでドラマのような展開を経て、二十年近く放置された築60年ほどの木造平屋。

そんなこんなで母と親戚の仲もこじれ、そもそも母は帰省自体十五年以上ぶり。

離婚した父が同じ市内に住んでいるため、私は毎年帰省の際に外観だけは見ていた。
まるでトトロが出てきそうな庭。
自分の背丈ほどの草が堂々と生い茂り、勝手に生えた名前の分からない木が台風被害を防ぎ、軒先にとんでもない大きさの蜘蛛がいらっしゃる、迫力満点のお化け屋敷だ。

草をかき分け、久々に使われた鍵で中に入る。
当然の如く錆びていた。

電気もガスも水道も止まっているから、昼日中でも懐中電灯が必須。
懐中電灯の光に照らされた室内でまず目に付いたのが、剣。
もちろんおもちゃなんだけど、銀色の刃物、完全に入り口向いててすごい怖かった。
もうこの時点で嫌だったよ。
帰りたいと思ったよ。

しかし勇気を振り絞り、土足で家に上がる。
畳のねえ、駄目になった感触も嫌だったねえ。
結構沈むんだよ。
ぐにゃって。
心の中ではもう泣いてたよ。
「ひー!!!」だよ。

入ってすぐ応接間、右に仏間。
仏壇もそのままだったから、そっちなるべく見ないようにしたよ。
罰当たりだよね。
並んでる遺影ももし万が一顔が動いたりしたら嫌だから、絶対に直視出来ないよ。

応接間の奥に居間があり、その横に三女が実家を出るまで使ってた部屋がある。
とりあえず居間まで進んで、何かを踏んだのよ。
暗いからよく見えなかったんだけど、スマホのライトで照らして、よーく見た。

黒髪のウイッグだったよ。
もう声出たよ。
「ひー!!!!」だよ。

こたつの手前に、前髪ぱっつんの、ザ・和風な髪型のウイッグ落ちてるのって、普通じゃないでしょ。
怖すぎて心臓ばくばくだったよ。
母と抱き合ったの久しぶりだったけど、なにもこんなタイミングじゃなくてもいいよねって思ったよ。
感動もへったくれもなくて、ただ怖かったよ。

と、ここまで書いてみたら意外と長くなったので、続きは明日、更新します。
よければどうぞそちらも読んでいってください。
よろしくお願いします。
それではー。

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