たくあん食べてる?
私は以前歯医者に通っていたとき「歯ぎしり」の癖を指摘された。
「治療が終わったらマウスピース作りましょうね」と言われていた。
寝ている間の歯ぎしりは無意識だし、力を制御することもやめることも出来ない。
だから、「マウスピースで歯が削れるのを防ぎましょう」という対策をとるわけだ。
私は当時、寝ている間だけではなく、起きている間も歯を削っていた。
ストレスに耐えているとき、ふと気づくと歯を食いしばってる。
自分でも気付くくらいだから、しょっちゅう歯をいじめていたに違いない。
まあ、虫歯の治療が終わって以来行ってないんですけど歯医者さん。
だって、ストレスが原因だっておっしゃるなら、寝てるときくらい自由にさせてよと思うじゃない。
付加をかけるというか、寝ているときまで拘束されたくないと思ったのよ。
お陰で私の歯、明らかに削れてるんだけどね。
そのうちもう一回歯医者さん通うよ……。
気は進まないけど。
私の母も、歯ぎしりがすごい。
これは昔からそうで、「ぎりぎりぎりぎり」って歯ぎしりじゃなくて「ぼりっ、ぼりっ」て音がする。
断続的に噛んでるんじゃなく、きちんとリズム感を保って的確に歯を砕きにいってる。
まるでたくあんを食べているかのような音がする。
誇張じゃなくて、本当に。
もう実家を出ているので、しばらく聞いていなかったんだけど、昨年旅先のホテルで聞いた。
たくあん歯ぎしり健在だなあとほっこりしたものだ。
そして意外と歯って保つんだなと心強くなった。
三十年以上続く伝統の歯ぎしり。
他人事だと思うとなかなか感慨深いという勝手な感情を抱けるものだ。
先日、弟が遊びにきたとき、彼は疲れていたらしく気付いたら昼寝していた。
人の家で勝手に惰眠を貪る男。
残念な我が弟である。
で、急に「はっ」って起きて、「俺、歯ぎしりしてたよね」って言い出した。
私の中で歯ぎしりはたくあん食べる音だから「してないよ」と返した。
事実、それらしき音は全然聞こえてこなかったから。
すると弟「俺、最近いつもこうなんだよ。自分の下手な歯ぎしりの音で起きる」とうなだれた。
どうも最近ストレスが溜まり、歯ぎしりが発症したらしい。
その音で起きるのだが、あまりにも未熟なその音に少し落ち込むのだと言う。
母の見事な歯ぎしりの音を聞いているから。
いやいやいや。
しない方がいいでしょ歯ぎしりの音なんて。
たくあん食べる音はたくあん食べてるときに聞けばいいんだから。
なんか知らないけどうなだれた弟に「歯医者さんでマウスピース作ってもらった方がいいよ」とアドバイスした。
私が言えることなんてこれしかない。
どの口が言うんだという思いもないではないが、必要性を理解しているのは私だからね。
行った方がいいよ歯医者さん。
この一連のエピソードで私が感じたのは「歯ぎしりって遺伝だ」ということ。
なにせ寝ているときのことなんで、私自身は現在寝ているときに歯ぎしりしてるかどうかわからない。
だからもしかしたら母譲りの技術承継してるかもしれないし、弟のような出来損ない歯ぎしりしているかもしれない。
歯ぎしり人口ってどれくらいなんだろうね?
無意識民を含めたらきっとかなりいると思うんだけど、確認のしようがないのが残念なところ。
歯ぎしりという負の遺産を抱え、私は今日も強く生きてゆきます。
そのうち歯医者さんに行かねばならぬという事実だけを重く受け止め、ひとまずこの話はここでおしまい。
予約もとってないし予定もいれてないけどそのうち行きます。
という無責任な宣言だけをここに残します。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
次回以降もお付き合いいただけると嬉しいです。
それではー。
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