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積読(つみどく)な日々:土肥経平「現代語訳 備前軍記」(山陽新聞社)

 買ったはいいが読むにはいたらない。本を批評する資格のない怠惰な筆者が、自宅に積んでいる本に関してあれこれ書いた記事です。
 今回は、最近の戦国創作物でも登場し始めた、岡山城の戦国武将・宇喜多直家の”元ネタ本”です。


買えるときに買え。”積み徳”な軍記物界隈

 この記事に書いているうちに、私は現代語訳‐備中兵乱記も購入してしまいました。本の最後には美作太平記も刊行予定とのことですが、今のところ音沙汰ありません。発刊の方、山陽新聞社さんはよろしくお願いいたします。
 

 信長の野望から大河ドラマまで、戦国時代に関わる創作物で登場するエピソードやストーリーは、この本のような”軍記物語”がベースです。
 軍記物語は平家物語や太平記、信長などメジャー武将が主人公であれば大体発行されています。ですが地方のマイナー武将が主人公となると、途端に刊行物がありません。あっても高価格の中古本や、大学図書館や地方図書館の禁帯出本であり、文章も原文(漢文)を読まされる場合も少なくないです。最悪、所有する機関に申請して原本そのものに当たる必要があります。
 そんな状況の中、わかりやすく現代語訳で発行してくれる山陽新聞社さんには頭が下がりません。 

どこまで本当か。宇喜多の歴史

 筆者の戦国時代好きは、小学生で見た大河ドラマ「元就」から始まっています。そして宇喜多氏への興味は、高校生でやったゲーム「信長の野望」からです。毛利家や織田家と組み合うのに、丁度よく歯ごたえのある難易度の大名家が宇喜多家で、そこからエピソードを調べて好きになりました。
 裸一貫から旗揚げする元プリンス。身内まで巻き込む暗殺と調略を重ね、戦いもほどほどにこなして備前を統一する、という物語性の高いエピソードが備前軍記の大きな流れです。最近は直家から発展して、次代の秀家も主人公になる小説がでてきました。漫画でも暗殺エピソードが際立ちます。
 この軍記物語の物語性に惑わされず、実際の宇喜多家はどうだったかと研究で進められていますが、どこまで明らかになるか楽しみです。


200年後の君へ。筆者からの問いかけ

 ”いま自分が記すところは、稗官・野史の類に依拠しながらも、疑わしい部分はこれを削除し…(中略)…恐らく間違った個所もあるだろうが、読者によって間違いは訂正して欲しい”
                         (備前軍記 序)

 宇喜多直家はエピソードとゲーム上の能力から、10年前のネット上では「ギリサン」「腹黒」等と揶揄されていました。ですが、軍記物語を鵜呑みにして茶化す態度は、誠実ではないですね。しかし、そんな茶化しも擦り続けたからこそ、そのアンチテーゼや研究を育む環境が生まれたのでしょう。
 最近は軍記の物語性に惑わされない、小説や研究書籍が発刊されるようになりました。それを履修するためにも、まずは原点を味わっていただきたいですね。


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