服部孝洋(東京大学)

服部孝洋(東京大学)

最近の記事

5月2日の朝に3.5兆円程度の為替介入か

今回も介入関係に関する簡単なメモです(これも私の備忘録です)。下記に記載してあるとおり、5月2日の朝に大きく円高になり一時、153円台になるということがありました。 今回の介入は、日本時間の5月2日の早朝(未明)に実施したようですが、5月1日の介入取引の決済日にあたり、この影響は、この2営業日後である5月7日の資金需給(財政要因)に反映されます。今回の経験でわかったのですが、日本時間の深夜から朝方にかけて介入がなされると、その日の夕方にはその規模の試算ができるわけですね。

    • 2024年4月29日における為替介入:5兆円規模か(ラフな推定)

      昨日、介入の規模について簡単にメモを記載しましたが、今日結果が発表されたので、簡単にメモをしておきます。 (2024年4月29日)為替介入規模の推定に関するメモ|服部孝洋(東京大学) (note.com) 下記の通り、昨日(4月29日)、為替が大きく円高に動き、為替介入がなされたという議論がなされていました。 まず、2024年5月1日(介入が疑われる4月29日の2営業日後)について、資金需給予測(財政等要因)に係る民間の予測はおおよそ-2.15兆円です。この値は短資会社

      • (2024年4月29日)為替介入規模の推定に関するメモ

        本日、為替が160円にタッチしてから大きく円高へ動き、為替介入があったのでは、と指摘されています。神田財務官は「ノーコメント」としており、介入があったとすれば、いわゆる覆面介入だとおもいます。 以前、下記にも記載しましたが、介入の有無や金額については財務省が事後的にアナウンスします。そのため、いずれは、今日介入があったかどうかは明らかになります。それが明らかにされるタイミングもすでに財務省のウェブサイトにより公表されており、下記に記載されている通り、2024年5月31日の1

        • 本日(2024/4/26)の決定会合のメモ:公表物のシンプル化(アップデイト)

          今回も注目された決定会合であったため、メモを記載しておきます。必要に応じて、加筆修正しますが、今回のポイントは、日銀による公表物が圧倒的にシンプル化したという点だとおもいます。主な公表内容は下記の通りです。 時事通信によるQTの記事があったため、脚注などの記載が変わったり、あるいは、オペ紙が変わるのだと勝手に想像(妄想?)していました。 今回の公表分をみて、あまりにシンプル化し、驚いたのは私だけではないはずです。私は、それまでの公表分をベースに、今回、ある特定の政策を実施

        5月2日の朝に3.5兆円程度の為替介入か

          「オルカン」という表現が流行した時期や理由に関するメモ

          今回は自分自身への簡単なメモです。今、「インデックス・ファンド革命」という書籍の書評を書いていて、いわゆる「オルカン」という表現がいつから普及しはじめたのかな、と感じました(気づいたら一気に流行していたという印象です)。 「オルカン」については、「MSCI オール・カントリー・ワールド・インデックス」というインデックスをトラックするインデックス・ファンドを想像されるかもしれません。もっとも、「オルカン」というと、三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim 全世

          「オルカン」という表現が流行した時期や理由に関するメモ

          財務省ファイナンス「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(前編)」

          本日、「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(前編)」というタイトルで、財務省「ファイナンス」に文章を掲載しています。下記のリンクより読むことができいます。 202404g.pdf (mof.go.jp) 我が国における国債制度を理解しようとするにあたり、特別会計についての理解が必要になることが少なくありません。もっとも、特別会計は複雑であり、独力での理解が困難だと指摘されることも少なくなく、さらに、初学者に向けた文献がないのが実態です。本稿は、国債を専門

          財務省ファイナンス「齋藤通雄氏に聞く、国債を巡る資金の流れと特別会計の基礎(前編)」

          カバーなし金利平価で今の円安を説明できるか

          昨日、カバー付き金利平価とカバーなし金利平価について説明しましたが、その簡単な続きです。 フォワードによる理論価格とカバーなし金利平価のメモ|服部孝洋(東京大学) (note.com) たまに、今の円安をカバーなし金利平価で説明する人がいますが、個人的には困難であると思っています。まず、多くの国際金融のテキストでは、カバーなし金利平価は成立していないと説明されます。例えば、手元にある教科書だと、橋本・小川・熊本(2019)は、「カバーなし金利平価式が成立していない」(p.1

          カバーなし金利平価で今の円安を説明できるか

          フォワードによる理論価格とカバーなし金利平価のメモ

          昨日、下記のツイートについて、私の周りで少し話題になりました。 私は上記を一読した時には、「理論値とも解釈できるのかも」と思いました。というのも、「カバーなし金利平価」(Uncovered Interest Parity, UIP)という「理論」によれば、一年後の為替レートは、フォワード価格になると期待されると解釈することもできます。どの国際金融のテキストをみてもらってもよいですが、例えば、永易先生らの国際金融のテキストみると(p.79)、為替の動き(期待値ベース)は内外金

          フォワードによる理論価格とカバーなし金利平価のメモ

          基本ポートフォリオにおける為替リスクの取り扱い:GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ⑤

          今回もGPIFの基本ポートフォリオについての簡単なメモです。今回は、GPIFにおける為替リスクの取り扱いですが、GPIFは(私の理解では)基本的に為替リスクをとる、というスタンスで運用を行っています。このことはGPIFの説明でも明言しており、例えば、youtubeで植田CIOが下記のスライドを用いており、「基本的には為替ヘッジなし」と説明しています。 基本ポートフォリオの計算ロジックは下記にも記載しましたが、基本ポートフォリオは、政策ベンチマークを用いて、「国内債券:外国債

          基本ポートフォリオにおける為替リスクの取り扱い:GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ⑤

          財政検証と実際の基本ポートフォリオの計算のイメージ:GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ④

          前回と同様、GPIFの基本ポートフォリオの決定方法について説明します。 これまで説明してきた通り(例えばここ)、基本ポートフォリオは、「運用目標(実質的な運用利回り:1.7%)を満たしつつ、最もリスクの小さいポートフォリオを選定」することで構築します。これを図示したのが下記のとおりです。 ここからわかるとおり、一定の計算により効率的フロンティアを描いたうえで、目標となる実質利回りが実現するよう、基本ポートフォリオを定めているといえます。したがって、この実質運用利回りを決める

          財政検証と実際の基本ポートフォリオの計算のイメージ:GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ④

          GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ③:オルタナ投資について

          引き続き、GPIFの基本ポートフォリオについてです。前回下記の通り、アベノミクスにより基本ポートフォリオを大幅に見直し、株式のウェイトが大幅に上昇しました。現在は、下記の通り、伝統的な4つのアセットクラスをそれぞれ25%の同じウェイト(一定のレンジあり)で保有している状況です。 GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ②:アベノミクス時の変更|服部孝洋(東京大学) (note.com) 前回説明したことでもあるのですが、アベノミクス以降の改革による重要な特徴はG

          GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ③:オルタナ投資について

          GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ②:アベノミクス時の変更

          伊藤先生の「証券アナリストジャーナル」「月刊資本市場」の論文に、アベノミクス時における基本ポートフォリオの考え方についてコンパクトかつ分かりやすく記載されていたので、それをメモとして記載しておきます。下記に関心を持った方は是非、論文そのものをご覧ください。 tokusyu_150201_1.pdf (saa.or.jp) 201703271710147683.pdf (camri.or.jp) 「日本国債入門」にも記載しましたが、GPIFの運用は、アベノミクスで大幅に修正さ

          GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ②:アベノミクス時の変更

          GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ

          先日、下記の通り、現在のCIOが再任されるということが話題になりました。この記事にもありますが、下記の通り、24年度は基本ポートフォリオについての議論が話題になります。 基本ポートフォリオについては5年に一回見直すとされています。これは財政検証が5年に一度なされ、それをうけてGPIFのポートフォリオをみなすためです(財政検証は今なされているところです)。5年に1回見直すというのは年金の世界では普及しているようですが(例えばこの記事を参照)、人口動態等を考慮するため、1年だと

          GPIFの基本ポートフォリオの決定方法についてのメモ

          日銀によるオペの発表時間とレンジについてのメモ

          本日、日銀のオペの発表時間に注目されるという興味深いことがありました。例えば、日経新聞では、 としています。日銀のオペの基礎については、日本国債入門の9章に記載しているので、全体像を把握したい方は、是非9章をご覧ください。以下では、これを前提に記載していきます。 日本銀行は定期的にいわゆる「オペ紙」をリリースしており、日銀の購入のスケジュールを公表しています。直近であれば下記のような感じです。 mpr240319b.pdf (boj.or.jp) 上記から明らかのように

          日銀によるオペの発表時間とレンジについてのメモ

          今年(2024年)の金融論の講義について

          来週から講義が始まり、東大で金融論の講義をスタートさせます。私の講義では、私の実務経験と学者としての経験をベースに、両者のバランスが取れた講義を行っています。本学の学生で金融に興味がある方は受講してもらえればとおもいます。 昨年も記載しましたが、最初に金融システム全体の話をした後、アセットプライシングの話をします(CAPM、バリュエーションなどの話をします)。その後、国債を中心に債券の基礎を説明し、企業金融や銀行論などをカバーします。基本的に昨年の内容をベースにするので、下

          今年(2024年)の金融論の講義について

          日銀オペにおいて強い結果(流れる)とはどういうことか

          簡単なメモを記載しておきます。日銀が国債を買う場合、オークションを実施しています。私の「日本国債入門」では、入札の評価についても説明があるのですが、「予測価格より高い価格(低い金利)で日銀が買った場合、入札結果は強い結果であり」(p.222)と記載しています。これがタイポでは、との指摘がありましたが、これは結論的に正しいです。 「予測価格より高い価格(低い金利)で日銀が買う」とは、オークションに参加する投資家の売り需要は弱いということを意味するから、「入札結果は弱い結果」と

          日銀オペにおいて強い結果(流れる)とはどういうことか