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農業におけるVRやARの技術調査



1. 調査の趣旨

農業のハッカソンに参加し,「VRとAIを用いて素人でも木の剪定を行える」ということを聞いた.なお,農業関係者の友人曰く「枝の剪定によって農作物の出来も変化する」らしい.

私は,農業業界の人材不足や技術の未継承を課題だと感じていたため,そんな技術があるならば応用してほかのことにも応用できるのではないかと考えた.(農業以外の分野でも同様に応用可能ではないかとも考えた)

そこで,本当に実在するのか,実在する場合どのような技術が使われているのかを調査する.


2. 調査方法

2.1. 調査ツール

デスクリサーチ

2.2. 調査対象

  • VRによる伐採対象を決定する技術

  • AIによる農業の技術継承

2.3. 調査時間

30分


3. 調査概要

農業では人手不足や高齢化が進んでおり,技術継承の悩みがあることが様々な記事に散見された.その中で,山梨県で行われている日本電気株式会社が代表となっている取り組みで,ブドウの収穫に関してスマートグラスで撮影した画像を用いて様々な判定をAIにより行い,スマートグラスに表示するというものがあった.しかし,このような業務をリアルタイムで補助するような取り組みはまだ多くはなく,技術継承のために一人称視点の熟練者の作業風景を撮影してそれをVRで見るというような取り組みが多いように見られた.また,スマートグラスを使用した方法では,遠隔にいる人が指示を送るという手法も見られた.


4. 調査詳細

4.1. 農業界の現状

農業界では以下のような現状がある.

  • 生産者の高齢化

  • 人材不足

参考文献[4] から青森県にはおいては,平成12年から平成27年の間に農業者数は約4割減少し,平均年齢は5.8歳増加しているとされているから,上記のことは嘘ではないであろう.

剪定の認識については,

  • 身に着けるのに5年程度かかる

  • 日の当たり方などに影響を与える

  • 品質や収穫量に影響を与える

  • 農閑期の冬に時間をかけて行える[5]

というような意見が見られ,農業に関する技術の難しさが伺える.(剪定による農作物への影響については詳細に調べるのは別の機会に譲る)

4.2. VRおよびARを用いた取り組み

大きく分けて三つ程度の取り組みがあった.

  1. 広報活動

  2. 研修・教育

  3. 業務補助

まず,広報活動については,VRによる農産物直売所ツアーやAR技術を用いた農機具の販売などがあるようだった[6],[7].今回知りたい内容とは異なるため割愛する.

次に,研修・教育を目的とした活用として,「佐渡・おけさ柿の枝を剪定を指南する」というようなものがあった[8],[9].これはスマートグラス(視覚情報を遠隔地と共有したり,文字や映像を見ることが出来る眼鏡)を用いて,遠隔地にいる剪定する枝を判断できる人からの指示を貰うような使用法がある.また,熟練者が作業する動画を熟練者目線から撮影し,その動画をVRによって閲覧可能にすることで素人が熟練者の動きを知ることが出来るような使われ方をしている.

最後に業務補助を目的とした使用法(実用化に向けて取り組み中)として,「ブドウの粒数を数えるなどの滴粒作業のバックアップ」[10]などがある.

摘粒作業は店頭に並べられるブドウの房形を決める重要な作業です。ただし、例えば、藤稔(ふじみのり)なら28~30粒、巨峰なら35~40粒と、品種ごとに粒数の目安があり

マイナビ農業,”スマートグラスでブドウの粒数を数える! 人工知能(AI)が摘粒作業を強力バックアップ!”,https://agri.mynavi.jp/2020_09_11_131278/

というように粒数の制限あり,かつこの作業を2週間程度で3000粒程度の滴粒を行わないといけないようです.これに対して,スマートグラスを用いてブドウを撮影し,その映像からブドウの粒数を予測し,ARによって粒の推定値をスマートグラスに表示するという取り組みに取り組んでいるようでした.

参考文献[11]から検知速度も2.11秒と早く,また熟練農業従業者と同様の作業時間になったようです.なお,スマートグラスで撮影した画像をAIサーバと呼ばれるサーバに送り,深層学習を用いてブドウの粒数を予測し,そのデータをスマートグラスに表示するという流れのようです.

他にも山梨県の取り組みとして,「房づくり軸長指示」,「適期収穫色判断」があるようだ[11].いずれの取り組みも2秒程度の処理時間で精度は目標に達しなかった(目標は95%以上)ようだが,従事者の方からのコメントでは明るい意見が多いようであった.(ネガティブな意見の記載は見られなかったが,紙面の都合上なのかもしれない)


所感

枝の剪定を自動判定するようなものは見つけらませんでした.時間的に見つけられなかったのか,色んな情報が混ざってしまったのか分かりませんが,少し残念でした.

しかし,農業に対する取り組みとしては,スマートグラスを使った取り組みのほかにも,農家を自動追尾吸うロボット(荷物を運ぶ)や定点カメラや衛星写真から深層学習を用いて収穫時期や農地の状況を把握する技術などがありました.

そこまで革新的な技術が使われているわけではなさそうでしたが,画像から判定・推測を行うコトをリアルタイムで行う必要があるという点で非常に難しいのではないかと思いました.

少し思っていた調査結果とは異なりましたが,農業に対しての色々な取り組みを知れてよい機会でした.

次回調査をするときは,暗黙知となっている技術をAIによって技術継承できるようにする取り組みをまとめてみたい.


参考文献

[1] 剪定の仕方について(VR関係なし)

[2] VRを用いたりんごの剪定学習支援システム(YouTube)

[3]

[4] 長谷川将士,丹波澄雄,”リンゴ剪定技術習得支援システム”,

https://www.topic.ad.jp/sice/htdocs/papers/316/316-4.pdf

[5] 

[6]

[7]

[8]

[9]

[10]

[11] 日本電気株式会社 (山梨県農業分野の課題解決に向けた ローカル5G実証コンソーシアム),農業分野の課題解決(スマートグラスを活用した熟練 農業者技術の「見える化」の実現)に向けたローカル5G等 の技術的条件及び利活用に関する調査検討の請負 報告書,https://go5g.go.jp/sitemanager/wp-content/uploads/2021/05/%E4%BB%A4%E5%92%8C%EF%BC%92%E5%B9%B4%E5%BA%A6L5G%E9%96%8B%E7%99%BA%E5%AE%9F%E8%A8%BC%E6%88%90%E6%9E%9C%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%EF%BC%88%E6%A6%82%E8%A6%81%E7%89%88%EF%BC%89_No3_%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%82%92%E6%B4%BB%E7%94%A8%E3%81%97%E3%81%9F%E7%86%9F%E7%B7%B4%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E8%80%85%E6%8A%80%E8%A1%93%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%82%8B%E5%8C%96%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%AE%9F%E7%8F%BE.pdf

[12] 農林水産省,”スマート農業技術カタログ”,

https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/smart_agri_technology/attach/pdf/smartagri_catalog_kaju-14.pdf

[13] ㈲ヤマニ果樹農園(千葉県市川市),"千葉県ナシ栽培におけるスマート農業技術の体系化に向けた技術開発及び実証",

https://www.naro.go.jp/smart-nogyo/r3/files/ka3_C02.pdf

[14] LEE J aehwan ,吉田剛,野波和好, 松村一善,谷野章,森本英嗣,”ICTを活用したナシ栽培管理における継承技術の開発(第 1報)”,農業食料工学会誌 83(4):274~281, 2021,https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010938409.pdfhttps://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010938409.pdf

[15]



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