はつみ

短編小説を書いてます。 好きなジャンルは現代・異世界ファンタジー。星新一や海外の翻訳小…

はつみ

短編小説を書いてます。 好きなジャンルは現代・異世界ファンタジー。星新一や海外の翻訳小説をよく読んでいるせいでSFっぽいなにかを書くことが多いです。

マガジン

  • 王道ショートショート集

    自作の王道ショートショート集です。過去作が気になった方はこちらを読んでくだされば

  • 邪道ショートショート集

    何でもありの新感覚ショートショート集です。普通じゃない話を読みたい方向けです

最近の記事

しかるべき処置

 ここは大企業のコールセンター。顧客からのクレーム電話が、ひっきりなしにかかってくる。  ぷるるるるるるるるる ガチャ 「はい、こちら株式会社ロイド、カスタマー担当のマキです。ご用件はなんでしょうか。  えっ、はい。うちの職員に無断で駐車された、ですって!?  ご迷惑をかけて申し訳ありません。お客さま一つ確認したいことが……。  ええ、はい。本人の許可も取らずどういうことだ、でございますか。お客さまのお怒りは最もでございますが、私どももそれが仕事でございまして。  はい。最

    • しかるべき処置

      架空のコールセンターを題材にしたショートストーリーです

      • 早朝のさえずり

         ここは大企業のコールセンター。顧客からのクレーム電話が、ひっきりなしにかかってくる。  ぷるるるるるるるるる ガチャ 「はい、こちら株式会社ロイド、カスタマー担当のマキです。ご用件はなんでしょうか。はい。お客さまが住んでいらっしゃるアパートメントは、わが社が管理を任されておりますが。  えっ、はい。隣の家から鳥の鳴き声がする、ですって!?  大変申し訳ございません。場合によっては、私どもの方で解決しなければいけない問題です。詳しいお話を聞かせてください。  なるほど。最近、

        • 早朝のさえずり

          架空のコールセンターを題材にしたショートストーリーです 本文はこちらから https://note.com/hatumi79/n/n36d124b7bfa3

        しかるべき処置

        マガジン

        • 王道ショートショート集
          14本
        • 邪道ショートショート集
          8本

        記事

          腹の虫が治まらない

           ここは大企業のコールセンター。顧客からのクレーム電話が、ひっきりなしにかかってくる。  ぷるるるるるるるるる ガチャ 「はい、こちら株式会社ロイド、カスタマー担当のマキです。ご用件はなんでしょうか。はい、『ブラシ型ロボ』はわが社の主力商品でございます。  このロボットは、昆虫などの小型生物を参考にして作られておりまして。たとえば外出先での昼食後、口の中に忍ばせれば、自動で歯を磨いてくれる優れもの。より多くのお客さまに満足していただけるよう、さまざまなバージョンをご用意してお

          腹の虫が治まらない

          腹の虫が治まらない

          架空のコールセンターを題材にしたショートストーリーです 本文はこちらから https://note.com/hatumi79/n/n25a7ecb30b75

          腹の虫が治まらない

          腹の虫が治まらない

          ミステリー小説の犯人が分からない

           とある大企業のコールセンター。ここには顧客からのクレームの電話が、ひっきりなしにかかってくる。   ぷるるるるるるるるる ガチャ 「はい、こちら株式会社ロイド、カスタマー担当のマキです。ご用件はなんでしょうか。はい、私どもの会社はフィクション、ノンフィクション問わず、多種多様なジャンルの本を出版しておりますが。  えっ、はい。ミステリー小説の犯人が分からない、ですって!?  ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません。出版部門の方に問い合わせをしたいと思いますので、タイトル

          ミステリー小説の犯人が分からない

          ミステリー小説の犯人が分からない

          架空のコールセンターを題材にしたショートストーリーです 本文はこちらから https://note.com/hatumi79/n/n97a4c9a5e6c9

          ミステリー小説の犯人が分からない

          ミステリー小説の犯人が分からない

          透視眼鏡

           ここは大企業のコールセンター。顧客からのクレーム電話が、ひっきりなしにかかってくる。   ぷるるるるるるるるる ガチャ 「はい、こちら株式会社ロイド、カスタマー担当のマキです。ご用件はなんでしょうか。はい、透視眼鏡についてですか? 流石お客さま、お目が高い。かけると他人の姿が透けて見えるこの商品。売れ行きもよく、大変ご好評でございまして。えっ、はい。透視眼鏡が透視しすぎる、ですって!? ご不便をかけて申し訳ありません。差し支えなければ、どう見えすぎるのかを教えていただけな

          透視眼鏡

          透視眼鏡が透視しすぎる

          架空のコールセンターを題材にしたショートストーリーです 本文はこちら https://note.com/hatumi79/n/n9f6935d314a8

          透視眼鏡が透視しすぎる

          透視眼鏡が透視しすぎる

          進まない時計

           ここは大企業のコールセンター。顧客からのクレーム電話がひっきりなしにかかってくる。  ぷるるるるるるるるる ガチャ 「はい、こちら株式会社ロイド、カスタマー担当のマキです。ご用件はなんでしょうか。えっ、はい。おたくで買ったアナログ時計が壊れている、ですって!大変申し訳ありません。お客さま、サービス改善のためにも、どのように故障しているのかを教えていただければ。はい、なるほど。 ・いつまで経っても12時にならない。 ・時計の針が進んだり、戻ったりしている。 ・最初のうちは、調

          進まない時計

          時計がなかなか進まない

          こちらの話の読み上げです https://note.com/hatumi79/n/ncb160b5eeedc 「このコールセンターには、おかしなクレームばかり届く」というゆるい感じのフォーマットを思いついたのですが、時事ネタが目に入ってしまい、少し堅苦しくなってしまいました

          時計がなかなか進まない

          時計がなかなか進まない

          持続可能な

          「おい、お前に聞きたいことがある」  タイムマシンから降りた俺は、目的の男に声をかけた。しかしそいつは、何もない場所から他人が現れたことに、ひどく驚いたのだろう。慌てふためき、喚き散らし、そして椅子から転げ落ちた。  俺はかまわず本題に入る。こちらにも時間制限があるのだ。 「俺は未来からきた者だ。しかし未来においても、貧困に気候変動や性差別。この時代で取り組まれるべきはずの課題が、一向に解決していない。まったく、この時代の政治家は何をやっているんだ」  突拍子もない質問であ

          持続可能な

           そもそも「ひとりっこ」という生き物は、親の愛情を(時には憎悪を)文字通り一身に引き受け、独善的に育つのである。対して、お互いを思いやることのできる「きょうだい」愛のなんと素晴らしきことか。  ゆえに「ひとりっこ」と「きょうだい」は精神性の面において、全く別の種族であると、俺は「我が妹」と出会ったあの日から真剣に考え始めている。ことの顛末は次のようなものだ。    あてどもなく午後の道端をぶらぶらしていると、俺のすぐ隣をあどけない表情をした女の子が歩いていることに気が付いた。

          No.

           目が覚めて、朝の占いを確認する。  今日のラッキーナンバーは1だった。たしか昨日は5だったはずだ。ここ最近、自分が何をしているのか、記憶があいまいになることが多い。俺は俺自身の存在を信じるために、朝の占いを見るのが日課になっていた。だが、俺という存在にどれほど価値があるのだろうとも思う。自分が何をしているのか。たとえ記憶がなくなったとしても、それは分かり切っていることだ。会社に行って、仕事をして、家に帰って寝る。占いを見ることが日課なら、この面白みもなく繰り返す毎日も、ただ

          煩悩

           二日酔いが悪夢を見せつけるよりも早く、青年はすでに夢から醒めきっていた。携帯のアラームが、部屋の中をせわしなく駆け巡るが、厚手のカーテンが邪魔をして、彼を光から遠ざけていた。 「他に好きな人ができたの」  昨晩の彼女の言葉を思い出して、頭がズキズキしはじめる。彼女の告白は唐突だった。半年前に青年からした告白は、すっかり上書き保存されてしまったようで、もはや彼女の心には欠片も残っていなかった。  青年は起き上がる気力もわかず、もう一度酒の力を借りようと、枕元に腕を伸ばしたが、