見出し画像

「土を喰らう十二ヵ月」をハワイで観る

著:御手洗ケール

気がつけば、なんと来週はサンクスギビング・デー。「いや、それは悪い冗談」、「なにかの間違いで、来月でしょ?」と我らのLINEでも現実逃避の会話がなされましたが、このまま行くと、あっという間に今年も終わってしまいそうです。

そんな慌ただしさが漂い始めた11月、毎年楽しみにしているハワイ国際映画祭で「土を喰らう十二ヵ月」(英題「The Zen Diary」)を観ました。

普段なかなか見ることのできない国や地域の映画がまとめて上映される映画祭は、映画好きには見逃せないイベント。特に日本映画は毎年20本以上ラインナップされ、ハワイ在住日本人も楽しみにしています。昨年は通常の半分ほどの作品が劇場で上映されたものの、まだ映画館で映画を観る、というのは若干敷居が高かった時期で、客足はいまいち。その分充実の内容だったオンラインで楽しんだ人が多かったように思います。

毎年ボランティアをしていることもあり、思ったほどの数は見られないのですが、「土を喰らう十二ヵ月」はまっ先にチケットを確保した作品。水上勉氏のエッセイを映画化したこの映画は、食にスポットを当てた「Eat. Drink.
Film.」にもラインナップされており、お腹をすかせて上映に望みました。

映画が始まり、四季を丁寧に追い、山の中の簡素な生活ぶりが映し出されるや、なぜか胸を締め付けられるような感覚が。私たちが目にしたのは、季節ごとに畑で芽吹く旬をいただくという、理想の食生活。最短距離のファームtoテーブルに肉はなくても、何にも代えがたい食卓の充実感がひしひしと伝わってきました。映画に登場する料理は、この中にもファンがいる土井善晴先生監修とのことで、シンプルだけど奥が深い料理の数々にため息。一品ごとに味を想像するのも楽しみで、映画鑑賞中はゆったりとした時間の中で、自分も料理を一緒にいただくような感覚を味わうことができました。

そして食べ物に感謝するのは、まさにサンクスギビング・デーの本質。目の前にあるものを感謝の念を持っていただく。それは昭和に育った私たちがずっと教えられてきたこと。そしてそれが人間の原点だったと思います。料理をするにも、雪解け水はさぞ冷たかろうと思いつつ、実はそれがどれだけ豊かさを含んでいるか、絶対に忘れてはいけない大事なことの一つですよね。来週はトラディショナルな感謝祭料理を楽しみながら、少しだけ自分を振り返りたいと思います。

最低限のもので暮らすのは、かなり勇気がいりますが、やはりモノの溢れた今の生活はなんとかしなければ。と、またまたそこに戻るのですが、リタイアしたら絶対断舎離するぞ!



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?