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琥珀集18.

飲み終えられたワインのボトルがぶっころがっている荒地
我らの故郷にはもはや友垣はなくちりぢりばらばらに吹き飛ばされてしまった
皆中身をぶちまけられ時という空虚に満たされて青黒い土瓶のように宙を向いて口を開けて転がっているかもしれない
確かにこの土地の豊穣なる時間と物なりを仕込まれて我らは父母の蔵にて貯蔵され十分なる夏と秋を経たが
瑞々しく芳醇なる我らの命は時という黄金の海に注がれた
我らの生は神々に奉献される楽曲を奏し終わり
我らの澱滓は地下の昏い川めがけて迷宮を流れ落ち始める
荒地よりの一吹き一吹きの風に
雲間よりの一柱一柱の日の光に
我らはコレスポンデンスする
見よ
廃墟の裏の打ち捨てられたバラ株が咲き誇り
人智を超えた精霊が舞い降りる
どことも知れずいつともなくかき集められた命がこの世に現れいでる
吹き渡る風に乗りて霊なる雲が押し寄せわだかまり我らを見下ろしている


■画像はヤフー、琥珀画像より。

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