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精霊にもどる

高校生の頃まで生まれ育った土地に、東京で人生の酒を盛大に撒き散らしてから帰ってきて暮らしていると、なんだか過去の世界に一人だけ吹き飛ばされたような気がする。もちろん知人も友も影も形もない。先祖の代表としてミイラというか結晶というか、老母が実家と一体化しているだけだ。
あの生まれて20年に私がこの人生で約束された神秘的な喜ばしいものがすべてがまるで琥珀の首飾りのようにかけられていたが、度重なる嵐に引きちぎられ飛び散ってしまったようだ。深緑のボトルに封じ込められた金色の液体が、空漠たる荒れ地に注がれ終わり、口を開いたままぶっ転がっている空きボトルが私とすると、ならばもう一度あの液体黄金を注がれれば、またあの疾風怒濤の季節に戻れるのだろうか。運命に恋する運命を再び満たしてくれるのは暗い死の河へ向かう薄暮の旅。私たちはもう一度死を旅しなければならない。精霊に私たちは戻らなければならない。そこでは火を熾すことを学ばねばならない。焚き火は欠かせないからだ。

体内に霊的な火を熾そう

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