見出し画像

ピアボーナス導入時の労務管理注意点まとめ

スタートアップ・ベンチャーでは、ピアボーナス制度を導入している企業が多く存在すると思います。この記事では労務管理の観点からピアボーナス制度導入時に注意すべき点をまとめています。導入検討の方はご参考になさってください。

ピアボーナスとは

ピアボーナスとは、従業員同士が成果やサポート等、賞賛したいと思った時に少額の報酬を送りあうことができる仕組みのことです。
Googleが導入していることもあり、日本企業でも導入を進めている会社が増えてきています。

ピアボーナスの主な目的

ピアボーナスの主な目的は、

・ミッション/ビジョン/バリューに紐づけることで組織文化の醸成を図る
・数値だけでは見えない頑張りを見える化する
・個人の承認欲求を満たすことでモチベーション維持を図る
・コミュニケーションの活性化

等があります。

ピアボーナスを提供する主なサービス

ピアボーナスを提供している主な企業を3つほどご紹介します。

・Unipos(ユニポス)
日本でピアボーナスを展開しているメジャー企業です。
豊富なノウハウに加え、導入初期に手厚いサポートがあるのは担当者にとって心強いです。
Slack、Teams、ChatWork等との連携が可能です。

・Bonusly

アメリカで展開しているピアボーナス企業ですが日本でも利用可能です。
貯めたポイントを現金以外のギフトカードやWWFなどへの寄付金にも変えられます。入社アニバーサリーや企業独自の記念日に特別ポイントを付与することもできます。Slack、Teams、Google Chat等と連携可能です。私の所属する企業でも導入しました。

・HeyTaco!

ポイントの代わりにタコスを送りあうユニークな企業です。シンプルな設計なのでわかりやすく、日本でも導入されています。Slackとの連携が可能です。

ピアボーナス導入時見落としがちな労務管理リスク

ピアボーナスは従業員とってメリットがある制度です。
ですが、どうやって浸透させようかと運用方法等に気を取られすぎてしまうと、大事な労務管理ポイントを見落としがちなのでどんなポイントがあるのか認識しておきましょう。

課税か非課税か

ピアボーナスの性格上、福利厚生として扱っても良いように見えますが、ピアボーナスを通して得た報酬は課税される可能性が高いです。現金であればもちろん、ギフトカードなど現金以外であっても換金性の高い物の支給は課税になる可能性が高いです。給与計算時は注意する必要があります。

残業代計算の根拠とすべきか

ではピアボーナスで得た現金等は残業代計算の根拠とすべきでしょうか。
ここで論点となるのがピアボーナスは「賃金となるかどうか」です。
賃金の定義は労基法第11条に記載があります。

この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

ピアボーナスが労働の対償となるかどうか、ですね。
以前私が厚生労働省に問い合わせをした際は、「従業員同士が褒めたい行為に対してポイントを送り、そのポイントを元に報酬をもらうのであれば、労基法上の賃金には該当しない。よって残業代根拠として計算しなくても良い」との回答をもらっています。

役員も参加すべきか

人数規模が大きくなかったり、フラットな組織であれば役員も巻き込んで全社体制で進めていきたい、と思うこともあると思います。

しかし役員の方でも報酬形態が役員報酬のみの場合は注意が必要です。
役員報酬は定期同額給与と事前確定届出給与の原則があり、報酬改定は原則年1回、賞与等の臨時報酬も事前に届け出る必要があります。

仮に役員の方にピアボーナスを支給すると、上記原則から外れた支給となり、外れた分は損金に算入することができなくなります。

まだなじみの薄い制度なので導入時は注意を

ピアボーナス制度が日本に入ってきたのは2010年代で比較的新しい概念の制度です。
なので、省庁見解も統一されているわけではありません(事例が少ないため)。実際に導入をするときは、顧問社労士に問い合わせか、労基署・年金事務所・厚生労働省等に確認してから進めていきましょう。

お問い合わせはこちらから


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?