金曜日の夜は楽団のパートレッスンで、音楽監督のN先生のご指導を受けた。音楽監督といっても、先生のご専門がクラリネット以外だと無理無体な要求をされることがあって困ってしまうが、N先生は正真正銘のプロのクラリネット奏者なので全くそんなことはなく、正に『痒い所に手が届く』ご指導だった。遅い時間までのレッスンだったが、充実した気分で帰宅した。
翌土曜日も前日同様、三時近くまで仕事。終わって帰宅し、一休みして着替えて家事を済ませて再び家を出た。楽団の個人練習日になっていたからだ。
フルートのSさんが合わせて下さり、自由曲のハイトーンの吹き方が随分分かった。物凄く為になった。三時間ほど練習し、疲れたがこの日も良い気分で帰宅した。

が、身体は正直だ。
連日の暑さも手伝って、このところ疲れが溜まっていた。日曜日の朝は仕事も休みでゆっくりできる。九時近くまで寝ていたが、暑さで目が開いた。寝覚めは良くなかった。頭が痛いし、肩がこれ以上無理なくらいこっている。
主な原因が楽器練習のし過ぎ、であるのは明白だった。
身体を動かすのが大儀だ。が、何か水分を取らないと、多分軽い脱水症状を起こしている。爆発した頭のまま台所へ降りて行き、水をガブガブ飲んで少しホッとした。

食事を済ませたが、皿を洗うのもだるくて億劫である。洗濯物だけは干して、ゴロゴロする。辛うじて歯を磨き、顔を洗った。
なーんか、今日はもう家事は最低限でいいや。
そんな気分になり、夫に
「今日は掃除やーめた」
と宣言した。
「おー、そうしろそうしろ。ルーティンに縛られんでもええ。掃除せんでも死なへん」
夫は私が家事をさぼると、何故か上機嫌になる。
「暑いし、買い物も行きたくない」
「やめとけやめとけ、行かんでええ。何かあるやろ」
夫に言われて冷凍庫を開けると、特売日に買って冷凍しておいた豚バラがあった。キャベツもある。ナスもある。なーんだ、夕飯出来そうだぞ。
珍しく、午前中から外出を見合わせることに決めた。

昼食も残り物で焼きめし作成。いつもより何故か上手く出来、夫が喜ぶ。夕飯は豚バラとキャベツを炒め、蒸したナスを胡麻和えにした。一日ゴロゴロしていたのに、色々出来て万万歳である。
朝晩やっている花の水やりもめんどくさくなった。でもきっとこの暑さでは地面がカラカラだ。すぐに枯れることはないだろうけど、ちょっと気になる。
「なー、お花の水やりしてくれへん？」
ダメもとで夫に頼むと、
「おーやったるやったる。お前は寝とけ」
と珍しく二つ返事で腰を浮かす夫。やったー。お言葉に甘えてしまおう。

洗濯と風呂掃除、炊事と皿洗いはやったが、後は色々手抜きしまくった。この暑さでは外出は控えた方が身のためだ。疲れていることだし、ぐうたらするに限る。
「お前は大体、いつも頑張り過ぎや」
水やりから戻った夫に説教される。
「やりたいことやってるんやし、ええやん」
「それはええけど、身体のこと考えろ。気持ちだけで突っ走ると倒れるぞ。調子よくなっても完全に回復するまではサボれ。サボるのは良くない事じゃなくて、身体を労わる大事なことなんやぞ。お前の場合、サボって普通や。いつもは『やり過ぎ』や。オレを見ろ。ケセラセラで、やりたいことしかせんから、いつも元気や」
ええ、知ってますよ。あなたの場合『遊びすぎ』で体調崩すんですけどねえ。それは良いんですかねえ。

結婚以来、こんなにぐうたらした日は初めてというくらい、ぐうたらさせてもらった。罪悪感ゼロ。サボれサボれと言われると、以前は夫に敵意すら覚えたものだが、今や嬉しい。それでもなかなか実行は出来なかったのだが、異常な暑さと自分の疲れのお陰で「そういうのもアリか」と素直に思えた。
お陰で体調も八割ぐらい回復した。しかも今日はなーんにも支出がない。素晴らしい日ではないか！

”『お前はサボって普通』と君が言ったから七月十六日はぐうたら記念日”

どこかで聞いたような歌が一句詠めてしまった。
今日は早く寝よう。