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『大造じいさんとガン』の椋鳩十はなぜ動物を題材にしたか

「共産党の志位委員長が静岡のグランシップで講演しようとしたとき、警察が会場を封鎖して入れないようにしたの」

先日そんな話を聞いた。

「日本でそんなことがあるんですね」

「表向きは街宣車が集まってしまうから、なんだけど」

「本当の理由があるってことか」

この話がフェイクかどうかは分からない。ドラッカーは「戦時、すべての国は全体主義となる」と語った。日本も戦禍の中にいると意識しておくべきだ。

数日前、noteにNY times誌の記事の要約をアップした。シンガポールの巨大タンカーがキーブリッジに突っ込んだ過程を追ったもの。

「テロを匂わすこうした情報の詳細が日本のメディアで流されることはない」

詳細どころか、衝突のニュースそのものが無かったことのように報道されなくなった。

「アメリカの情報操作も酷いけれど、日本はどうしようもないわね」

「18歳未満禁止」のゲームのように、衝撃的なニュースは国民から隠されているようだ。保護者である上級国民と、子供としての下級国民。

ジョージ・オーウェルの小説『1984』は、ビック・ブラザーによる情報操作と、言語を用いた思考のコントロールを描いたディストピア小説である。

オーウェルが生きていたら、日本はどう描かれただろう。なにも知らない子供を守るヒーローとして日本を守る者。上級国民のそんな様子が描かれたかもしれない。

『大造じいさんとガン』を、小学校5年生の国語の授業で扱った。椋鳩十先生の奥さんは地元掛川の方で、お孫さんの久保田里花さんにもお会いしたことがある。

「残雪」というガンと、大造じいさんの物語。

頭の良い残雪は大造じいさんのワナをいつも見破ってしまう。いまいましく思っていたが、あるときハヤブサから命懸けで仲間を守る残雪を見て、尊敬の念を抱くようになる。

瀕死の残雪を治療し、春になり完全に回復すると檻を開け自然に返した。ハヤブサと戦っている最中なら仕留められたが、大造じいさんは尊敬する残雪と堂々と戦いたかった。

久保田さんは椋先生が81歳で亡くなる高校1年生まで一緒に過ごした。文学少女のような雰囲気だが、言葉の端々から放たれる迫力が残雪のようだ。

子供は良い本を嗅ぎ分ける力を持っている。久保田さんの書籍『椋鳩十』を見せると、食い入るように読んでくれた。

椋先生は戦時中の人間である。ほとんどの物書きが権力に屈し、戦争を讃える文章を書いた時代。

「小説が書けなくて泣きたくなるよ」

まともな言論には検閲が入る。

「人間を題材にできないなら、動物を題材に書けばいい」

椋先生が動物を主題にしたのは、動物を使って日本を映し出すためだ。

真珠湾攻撃の直前、鹿児島の山の中にポツンとある温泉宿で元狩人の大造じいさんと出会う。椋先生は大造じいさんをすぐに好きになった。大造じいさんは実在の人物である。

残雪は実在しないが、実はいないわけではない。大造じいさんの最後の言葉に、椋先生の気持ちが込められている。

おうい、ガンの英雄よ。おまえみたいなえらぶつを、おれは、ひきょうなやりかたでやっつけたかあないぞ。

なお、おい。今年の冬も、仲間を連れてぬま地にやって来いよ。そうして、おれたちは、また堂々と戦おうじゃあないか。

残雪とは椋先生や統制に屈しない小説家、大造じいさんとは椋先生が望んだ日本である。卑怯なやり方で国民を陥れず、正々堂々と議論する社会。『大造じいさんとガン』にはこれだけの批判が込められていた。

今の日本を椋先生が見たらどう書くだろう。
僕らが続きを書ければ一興だ。

お読みくださいまして、誠にありがとうございます!
めっちゃ嬉しいです😃

起業家研究所・学習塾omiiko 代表 松井勇人(まつい はやと)

下のリンクで拙著『人は幽霊を信じられるか、信じられないかで決まる』の前書きを全文公開させていただきました。

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