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Bon Pain/素晴らしいパン

この一年、バゲットについて、本当にいろいろ考えてきた気がします

ご存知の方もいらっしゃるかもですが、うちのお店にバゲットが並ぶようになったのは、この一年の事です

いろんな理由からずっと避けてきてたんですよね

主な理由は、こんなこと言うと反感を買うかもですが笑笑

正直コスパの悪さです

もう何年も前になりますが、それくらい徹底してコストを見直さなきゃお店を続けていけないほど

働けど働けど我が暮らし楽にならざり

そんな状況だったんですよね

材料は、小麦、酵母、お塩、それとお水だけで極めてシンプルなのですが、手間が凄く掛かる

その手間を他のものと天秤にかけていた訳です

だけど何年も、正直ずっと心に引っかかってました

ところが、それを解禁してまでバゲットを焼きたいと思わせる出来事が1年ちょい前にあって

そこからリハビリが始まりました

考え方も、自分の体の感覚も、素材も環境も、何もかも切り替えが必要でした

その間、かつての上司が書いた一冊の本を取り出して、隅から隅まで何度も読み返しました

そこには私がバゲットに求めている答えが沢山書かれていました

私は22歳でドンクに就職しました   

ドンクは日本においてフランスパンの礎となった会社です

だけど、恥ずかしながらパン屋になるまでバゲットを食べた事がありませんでした

正確には、パン屋になってからも2〜3年、バゲットを食べる事はなかったんです

それくらいパンに興味がなかった笑笑

だけど生まれて初めて食べたバゲットが、ドンクのバゲットでよかったと、今だに思います

もちろん、最初から美味しいと思いました

だけどその本当の価値を理解するには、結構時間がかかりました

スタンダードってそういう事だと思うんです

基本のキ、なんですよね

今はいろんなパン屋さんがそれぞれの考えでバゲットを焼かれていて、どれも拘りを感じる素晴らしいものばかりです  

だけど、僕にとってのバゲットはドンクのバゲットなんです

そしてドンクのバゲットは、パリのスタンダードなバゲットをイメージして作られています

形も焼き色も、香りも味も食感も、後味も、どれもが程が良い

決して特別ではない

ちょうど良い美味しさなんです

今の自分が焼くべきバゲットの整理ができるまで、かなり時間がかかりました

そこにはバゲットそのものの美味しさ以外にも、哲学やその理解が腑に落ちるまで時間がかかったこともあります

それがやっと出来たのが、今年の頭くらい

再開から一年と少しかけて、リハビリと整理が叶った気がしてます

それまでいろんなパンを焼いてきました

ギューンと振り切って、また反対方向までグイーンと来て、今の自分は本当にフラットな状態

ほんと何年もいろんなことを通ってきたお陰で、バゲットの魅力をより感じられるようになったように思うんです

だけど正直、来年の移転以降は、このバゲットは焼けないかなと思ってます

バゲットは焼くつもりですが、電気オーブンから薪窯に変わるので、やはりかなり違うものになると思います

それでもずっと、僕の追い求めるバゲットは、あの本の中にあるバゲット

すなわちBon Pain、だと思います

#bonpainへの道
#仁瓶利夫
#ドンク
#バゲット
#和歌山パン屋

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