All’s fair in love and poetry.
テイラー・スウィフトに関するポストに対する海外ユーザーのコメントが脳裏に焼き付いている。いまや世界で最も稼ぐ女性歌手に成り上がった彼女の何がそんなにも人々を惹きつけるのか、しばらく考えていたら久しぶりに筆を取りたくなった。The Eras Tourの評論はたくさんネット上で見つけることができるので詳しくは割愛する。筆者は物語(あるいはナラティブ)を中心について語ってみようと思う。
多様化する生き方が広がり、社会の最小単位である家族すらももはや画一的なものではないし、私たちは自由と引き換えに伝統、宗教、慣習といった連綿と続いてきた物語を手放しつつある。こうした世界的な混沌の中で私たちは誰がか描く物語の登場人物になることを求めているように思う。平たく言えば皆、居場所を求めている。
カントリー歌手としてキャリアをスタートした素朴な少女だったテイラー・スウィフトはいまでは一躍大スターとなったが、決して気取ったセレブではない。自身に起きた出来事や感じたことを歌詞に綴るスタイルが彼女の存在をとても身近に感じさせ、共感することで孤独が紛れていくようなのだ。
歌の内容だけではない。テイラースウィフトの身の回りで実際に起きた問題の数々 ーーー カニエ・ウェストとの因縁、セクハラ訴訟、原盤権問題など、これまでに多くの困難が彼女を襲ったが、そうしたわかりやすい敵の存在がSwifties(テイラースウィフトファンの通称)の結束力を高めっていったようだ。ファンとともに成長し、戦い、手を取り合って、それは大きな集団になった。宗教そのものである。ライブ会場は信者たちが集まるキラキラの教会のようなものだ。
The Eras Tour 日本公演が終わり、まだまだ熱が冷めやらないテイラーフィーバー真っ只中に、時を同じくしてリクルート主催のオンラインイベントでFigma CPO(最高製品責任者)の山下祐樹氏が登壇し、プロダクト開発において重要なことを語っていた。
うろ覚えで申し訳ないが、山下氏は同時にナラティブの重要性についても語っていた。Figmaではその重要性が共通認識として企業文化を形成しているのかもしれない。私たちの人生のコアには常に物語があり、それを表現する手段として言葉、歌、デザイン、集まる場所がある。
どんな人にも物語があり、それを語り継ぐ重要性を感じる。現実を生き抜くノウハウはもちろん必要ではあるが、関わる人々を幸せにする筋書きを熱っぽく語ることは時と場所を選んで積極的に行っていくべきなのだろう。
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