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第78話「潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く」

あれからもうすぐ一年が過ぎようとしていた。僕の暮らしもずいぶん変化した。穏やかな日々を求めようとはしていない。そんなことを思ったら神様に怒られるだろう。

何故なら、そんな日々を求めている人に、穏やかな日々が訪れないという皮肉まじりの思いだった。


図書館の仕事も順調だったし、好きな人も幸せそうにしていた。それはどんなに幸せなことなんだろう。僕も彼女も僕たちも、宛てのない道を歩くだけ。先の見えない残像を追いかけても、僕たちは少しも悪くないと、どこかで思い続けていた。

あの頃の僕たちは戻らないかもしれないけど、いつかは出逢う運命をメモ書きに残している。


大人時代は大変で、息苦しい連続ドラマを見ているようだ。もしかしたら再放送されて、無理やりに冷めたブラウン管へ繋がってる。それでも生きたり死んだりの繰り返しなんだ

ーーーー実際に死ぬわけじゃないけど、心がちょっとしたことで死ぬかもしれないだろう。どんな生き物も水や空気を必要としている。僕たちは地球に生かされて育んでいた。


だけど、たまには息抜きも必要だからさ、窓を開けては空気の入れ替えに動いている。その一つ一つに意味があったり、なかったりと思うかもしれない。それでも僕たちは、大人時代を生きようと必死にもがいてる。空気を吸うように……


僕たちの一年は、もうすぐ終わりに近づいている。月日という時間は心の中に育まれた未来への歩み。誰かと一緒に過ごしたり、誰かと哀しい別れをしても、誰かと幸せになるべく道を歩むことになるだろう。潮彩の僕たちは宛てのない道を歩く。

空気を空気と感じて、これからも僕たちは生きて行く。それが真実に辿り着けなくても、いつかは出逢う運命を求める心が、道に路を示して足跡となるんだ。


数年後、僕たちは空気を空気と感じて呼吸しているだろう。


~完~

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