第86話「世の中はコインが決めている」
真実がわかった以上、縁日かざりと直接会って止めなければいけない。そう決意したとき、僕の胸で泣きじゃくる露子が顔を上げた。
「はじめくん、もう一つ話があるの。私、逆らうことができないから従うしかなかった」
「何か命令されたのか?」
「実は数日前、突然かざりから連絡があったの。あの日の恐怖があったから言われるままに従った。深夜のファミレスに呼ばれて、ある事をやって欲しいと頼まれたの。それを成功させたらビデオテープも返すと言われた。だから私、彼女の言う通りにしたの」
「何を頼まれた?僕に関係してることなのか!?」
「それはわからないけど、今日こうして会ったのは、はじめくんに迷惑をかけたかもしれないと思って……」露子はそう言って、涙を拭きながら話してくれた。
「あの子、最近誰かにつけまわされてる。だから、ソイツのことをお前が観察しろって言うの。私、仕方なくかざりを見張りながら、かざりをつけまわってる人物を見張ってたの。そしたらかざりの言う通り、一人の男が毎日遠くから、かざりのことを見張っていたの」
「それって、正論くんのことだ。ちょっと待って、君は縁日かざりを見張っていた正論くんを陰ながら見張っていたのか!」
「う、うん。誰かは知らないけど。確かにその男性は、かざりのことをずっと見張っていたわ。それで何日か経ったとき、新たにもう一人、かざりを見張るようになったの。女性でパッと目の年齢は三十代に見えたけど……」
露子の話から全貌が明らかになった。この数日間、正論くんは縁日かざりを見張っていた。そして、二日前からハナちゃんも協力してくれていた。
正論くんが見張れないとき、ハナちゃんが交代で見張っていた。つまり、縁日かざりは僕たちから見張られていることを知って、逆に見張っている人物を特定しようと露子に見張らせていたのだ。
ヤバイ、正論くんに知らせなきゃ。奴は、縁日かざりは全てを知っている。
「はじめくん。私、昨日の夜、かざりを見張っていた女性のあとをつけて行ったの。かざりから女性の住んでる場所を見つけて欲しいと言われたから」
「えっ、なんだって!!」
「それで心配になって。もしかして、はじめくんに迷惑かけたかもしれないと思って、だから今回連絡を入れたの」
「もしかして、君はその女性の住んでる場所を教えたの?」
「うん……」と露子が頷いた。
最悪だ。縁日かざりに居場所がバレてしまった。奴の方が一枚上手だった。狛さんの居場所がわからなかったから、奴は露子を利用して、見張られながら逆に僕たちを見張っていたんだ。
そして奴は、ハナちゃんの居場所を知ってしまった。だったら今頃、スナックに向かっている可能性がある。
僕は慌てて立ち上がると、玄関へ向かって走った。露子が声を出していたが構わずに外へ飛び出した。向かうべき場所はスナック。間に合うのか。
縁日かざりは必ず行動するはずだ。狛さんのことを殺しに!!
第87話につづく
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