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第85話「世の中はコインが決めている」

 始まりは廃墟へ行った日だった……

 廃墟へ来てから、僕たちグループは二手に分かれた。倉木先輩と神宮寺と縁日かざり。そして、僕と露子の二人。そのあと、僕と露子は身体の関係を持った。

「あのとき、部屋に入る前、物音が聞こえたのを覚えていない?」と露子が訊いてきた。

「覚えてるよ。確か、僕たちの背後で物音が聞こえた。あのときは気のせいだと思っていたけど」

「あれ、かざりが私たちを後ろからつけていたの」

「でも、彼女は先輩たちと一緒に行動してたよね」

「うん。でも、彼女はうまくいこと言って、先輩たちと別行動をしたの。神宮寺くんには現場を抑えるから。そしたら、あとでダビングしてあげるってね」露子はそう言って、顔を俯いて肩を震わせた。

「まさか、あの部屋で僕たちがした行為を!」

「うん。私たちの行為を陰から撮影してたの。暗闇でも鮮明に撮れるビデオカメラだったから……」

 なんて卑劣でゲスなことを。縁日かざりも卑劣だが、神宮寺のことも怒りで殺意さえ芽生えた。

 だが、話はまだ終わりじゃなかった。

 縁日かざりは、僕たちの撮影した行為をネタに露子を脅したという。あなた達の行為をネットで拡散されたくなかったら、僕と別れて身を引けと脅した。勿論、露子は別れを選ぶしかなかった。

 しかも、縁日かざりが脅してきたのは僕と露子が付き合って三ヶ月目のことだった。

 
 これで、僕と別れた真相がわかった。だったら何をすべきか考えなければならない。だが、縁日かざりは恐ろしい女だった。廃墟で撮影した映像だけでは不安だったのか、露子の部屋に隠しカメラを仕掛けて、日常さえも全て撮影していたのだ。

 異常な行動には変わらない。

 でも、結果的にホッとしてるところはあった。こうして露子が無事に生きていること。何故なら、殺されてもおかしくなかったからだ。

「かざり、私に向かって三ヶ月は楽しかったでしょう。あなたをワザと泳がせてあげたのよって言ったの。そのあと、私は生きた心地がしなかった。いつか、あの映像がネットに拡散されないかと……」

 この数年は辛かっただろう。露子の気持ちを考えたら、ただただ縁日かざりが許せなかった。もう躊躇してる場合じゃない。奴と直接会って、今回の件も含めて全てを話すしかない!

 それしか奴を止める術はないんだ!!

「話してくれてありがとう。あとは僕に任せてくれるか。君のことは必ず守る。僕にも責任はある。もう一人で苦しまなくて良いよ」僕がそう言うと、露子は涙を流しながら僕の胸に飛び込んできた。

 震える肩を力強く抱きしめて、僕は泣きじゃくる露子を慰めた。だが、このあと真の恐怖が待ち受けていたのだった。

第86話につづく

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