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見知らぬ外国のご老人にいきなり「アーティチョークの種を分けて下さい」と頼まれた話

畑で杭打ちをしていたら、見知らぬ男性がやってきて、主人に話し掛けてきた。
作業が中断したので草抜きをしていて、程なくして主人に呼ばれた。
なんだろ。

その男性は、白髪で青い目の外国の人で、80代くらいの上品な感じのおじいさんだった。
「種があれば分けて下さい。2~3粒で結構です」
た、種?たった2~3粒?えっと何のこと?最初は訳が分からなかった。
「アーティチョークを育てたい」と伺って、わおっ!と納得。

アーティチョークは、地中海沿岸部やアメリカではポピュラー。野菜のようなハーブのような食べ物。
可食部分はつぼみの根元。食味はユリ根や栗や筍に似ている。初夏の食べ物。また、葉もティーになる。
などといった説明が必要なほど、日本ではてんで馴染みがない。
うちのアーティチョークに、「この辺りでは見たことがない」と、おじいさんが驚かれたのもムリもない。


そのおじいさん、Rさんは、すぐご近所にお住まいだった。
故国では、毎年初夏になると、アーティチョークをお召し上がりだったのだろうか。
日本に移り住んでから、アーティチョークをご自分で育てようとされながらも、ずっと種が手に入らなかった。
一度、種を南米から取り寄せたものの、何故か1粒きり。残念ながら発芽しなかった。さぞかしがっかりされたことだろう。

うちに種は残っているものの、購入は4年前。おそらくかなり発芽率が落ちている。
それより、つぼみを収穫できる時期にまたお越し下さい、お召し上がり下さいとお話しした。いくらでもお持ち頂こう。

後から、畑のまとめ役Hさんが、いろいろ教えてくれた。
Rさんは、京都大学の教授をなさっていたそうな。なんとまあ。
そして、我が家がそこの畑の一角を借りているように、Rさんも数年前まで一角で畑をなさっていた。
たまたま数日前に、お散歩されていて、うちのアーティチョークをご覧になって、Hさんに「これはアーティチョークじゃないか?!」とお尋ねになったんだそうだ。
「すごーく頭のいい人だよ~」とHさんがニコニコ仰っていて、それは"京都大学の教授"なんてニュアンスではないようだった。

主人は、最初、
「あそこに生えているのは『チョウセンアザミ』ですか」
と話し掛けられたんだとか。
今はまだ、つぼみ部分のない、単なる大きな草の状態。それでもお分かりになったなんてすごい。
あと、わざわざ和名で仰ったんだ。私は和名も承知しているけど、種袋の記載はアーティチョーク。主人もよく和名でピンと来たもんだ。

それにしても楽しいご縁ができた。またアーティチョークで世界が広がった。
今は亡き恩人Tさんが、京都大学の卒業生だった。ちょうど世代的に重なる。もしまだお元気なら、R先生をご存知ですかとお電話できた。Tさん懐かしいな。

なお、種はサカタのタネでの購入。25粒で約300円。

今日のアーティチョーク。

草幅は約150cm。冬の間は地面に貼りついていた。暖かくなってきて、縦方向にむくむく成長を始めて、今の草丈は約30cm。

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