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【詩】有無

よく見るとその目玉には無数のヒビがあり
表面の厚い鱗の様なものが剥がれかかっている
瞬きなんてものは恐らく
一時も逃さず凝視し続けるという
そいつのレゾンデートルの中で
永いこと封印されていた無駄な術なのだろう

しかしその目は衰えてなどいない
彼女が決して幸福などという
虚ろな道に迷い込まぬよう
片時も目を離さない
彼女が己の罪を忘れ
人になれると思い違いをした時には
如何なる倫理も内臓から少しずつ食い荒らし
脳の中に無数の虫を注ぎ込む

決して許されることはない
因果は遠く見果てぬ水底
恐らく実在理由が罪なのだ

かわいそうに
誰かの何かを背負って生まれ
生からも死からも逃れられない
目玉はどこまでも果てしなく
笑うことも怒ることもなく
一番傍に寄り添う存在
ずっとあなたを見ている

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