葉月Lエンデ

本気で小説書いてます。連載小説「死ンダ君モ愛オシイ」は毎週日曜に投稿します。 どうしよ…

葉月Lエンデ

本気で小説書いてます。連載小説「死ンダ君モ愛オシイ」は毎週日曜に投稿します。 どうしようもなくなって詩を吐き出すこともありますが、書きたいものは小説。小説を読んでくださる方々に心から感謝しています。ありがとう

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  • 【詩など】苦しみの産物

    人を喰う詩らしいので、閲覧注意です

  • 極秘任務の裏側

    軽快でドタバタな一ノ瀬たちの活躍をぜひ!【全18話】

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【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第26話

Prev……前回のお話  それは間違いなく、金魚だった。  ある日、金欠の男は、トレカを売るために女とカードショップに出向いた。「高額買取」で検索して見つけた店で、そのために電車賃410円もかかったのに、カードは大した額にならなかった。クソが。まあ、それはいい。駅までの帰り道、歩道橋の階段を上り切った瞬間、男は激写を狙っているカメラに気づいた。おいおい、プライベートなんだけど? 彼女は写さないでやってくれ、と女を背に隠したが、そのカメラは自分を狙っていたのではなく、夕日を撮

    • 【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第25話

      Prev……前回のお話  亜季の父親、今野を何かしらの方法でアズサが救ったのは、恐らく間違いない。亜季の写真を眺めていたと言っていたから、アズサは亜季のことを覚えていたのだ。だからといって、他人を救うアズサは一矢の中でどうも想像できない。それも自分の知っているアズサではなく、知らない「柚希」なのか? でも、反社風の人間とアズサの繋がりなんて、あるだろうか。あってほしくないけれど。ホワイトメールの社員を思い出しても、特にガラが悪かった訳でもないと思う。じゃあ、それ以外の繋がり

      • 【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第24話

        Prev……前回のお話  金魚は何も言わない。この金魚を、アズサは「栞さん」と呼んでいた。そして今日、俺は「栞さん」という女性に出会った。無神経で品がない、横暴な女性だった。俺の知っているアズサが、あの女性を慕って、金魚に名前を付けるなんて思えない。思いたくない。  ――私が、間違いかもしれない、とは考えませんか?  この言葉の意味を考える。考えるんだ。どうにか、都合のいいように。納得できる、上手い「間違い」はないだろうか。金魚が喋ることが間違い? それは今更だ。「栞さ

        • 連載中の死ンダ君モ愛オシイ(略して死ン君)は全28話となります。 今週から最終話まで日曜と水曜、週2の投稿に切り替えますので、お見逃しのないようご注意ください。 引き続き最後までおつき合い頂けると幸いです🌟🌟 いつもありがとう!!

        【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第26話

        • 【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第25話

        • 【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第24話

        • 連載中の死ンダ君モ愛オシイ(略して死ン君)は全28話となります。 今週から最終話まで日曜と水曜、週2の投稿に切り替えますので、お見逃しのないようご注意ください。 引き続き最後までおつき合い頂けると幸いです🌟🌟 いつもありがとう!!

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        • 【詩など】苦しみの産物
          6本
        • 極秘任務の裏側
          19本

        記事

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第23話

          Prev……前回のお話  雑に散らかった、埃っぽく狭い応接室に似つかわしくないような、いや、逆に似つかわしいような、その派手な女性は、名刺を片手で差し出してきた。社長のくせにマナーも知らないのか。悔しいから自分も片手で受け取り、こちらの名刺も片手で押し付けてやろうかと思いながら、一矢は丁寧に両手で受け取り、両手で差し出した。同じレベルに成り下がって品位を失うわけにはいかない。  しかし……この人がアズサを拾った人間なのか。ソファに腰かけるとベコッという謎の音がした。硬くて

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第23話

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第22話

          Prev……前回のお話 「じゃあ、俺帰るけど……ほんとに大丈夫?」 「大丈夫だから」 「うーん……」  玄関まで来て、静流はまだ躊躇っていた。 「ねえ、ほんとに食べ物あるの? 俺買ってくるよ?」 「あるって。大丈夫。ありがとな」 「うーん……」  半ば追い出すように、さりげなく、強引に、ドアまで促した。  わざわざここまで来てくれたのは、とてもありがたかった。佐倉に頼まれたからとはいえ、親身になって話を聞いてくれたし、ケアは十分過ぎる程だった。でも、少しだけ、時間がほしい

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第22話

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第21話

          Prev……前回のお話 「俺が昔、知宏の家にお世話になってたことは知ってるんだよね?」 「ん……聞いた」 「柚希が来たのは、俺が出てった後だった。思えば、こないだ一矢から聞いた『アズサさん』の間違い探し、あれは柚希が知宏の家に来る前の話だったんだね……。勘当されたって話。俺たちは『なにか事情があって行き場のない子』ってことしか知らなかったけど」  名状しがたい気持ち。なにも知らずにアズサの話を聞かせていた。まさかこんな形で繋がるとは。 「もういい……。全て知りたいなんて思っ

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第21話

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第20話

          Prev……前回のお話  はっ、はぁ、はあ、はあ、はぁぁ、はあぁ……。畜生、この階段はどこまで続いているんだ。赤いペンキで足が滑り、大きくバランスを崩した。もう力が入らない足が、今にも縺れて転がり落ちそうなのに、立ち止まることもできず、只管階段を上り続ける。  どうやって帰ってきたのか覚えていないが、この階段は自宅マンションのものだと思う。だから早く、一刻も早く、い、家……おうちに帰りたいのに! もういつからこの階段を上り続けているのかわからない。上層部から赤いペンキがドロ

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第20話

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第19話

          Prev……前回のお話 「あいつが死んだのは、お前のせいなのか……?」 「そんなわけ……! お前、俺のことなんだと思ってんだよ!」 「どの口が言うんだ。お前は俺の知ってる佐倉じゃない。そんな膨大な情報を、よく隠していられたな。どんな思いで俺の隣にいたんだ?」 「それは……」  ああ、親友を詰めるって、こういうことなのか。佐倉だって傷ついているのは十分理解しているのに、そしてそれに同情していたはずなのに、アズサが絡んでいたら許すことができない。 「苦しかったよ。お前は大事な

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第19話

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第18話

          Prev……前回のお話  右手にだらしなく青い傘をぶら下げたまま、一矢は狭い玄関の壁に寄りかかって虚空を見つめていた。ショックを受けているわけではない。何のショックなのかわからないからだ。ああ、でも何かしらの衝撃は食らっているわけだから、ショックは受けていないというのは語弊があるか。ただ、それよりも理解が追い付かずに、謎の虚無感、それと喪失感。何を失ったのかも、わからずに。  アズサにプレゼントした傘を、佐倉が持っていた。しかも、本人はそれに気づいていない。ここから、どんな

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第18話

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第17話

          Prev……前回のお話 「前言撤回、間に合うかな」  一矢は着替えもせず、水槽の中の金魚に向かって躊躇いがちに語りかけた。 「佐倉がなにかを隠してる気がするって言ったけど……、あれ、聞かなかったことにしてもらえるか?」  ゆらゆらと微かに揺れるだけの金魚は、一矢の話を聞いているのか、いないのか。それでも続ける。恐らく、自分のために。 「実際、隠してはいたんだ。あいつの傷を。まあ、それは知っていた。知った上で、後ろ暗い部分を怪しんだりなんかした俺は最低だと思う」  金魚は長い

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第17話

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第16話

          Prev……前回のお話  昼間は蕎麦を食ったし、奈津美はどうせ飲む気満々だろうから、安めの居酒屋にした。こいつが相手なら特別いい店を選ぶ必要もない。オフィスから少しだけ離れたビルの二階にある、大衆居酒屋「ちょ、呑めよ」。ここは全席半個室で、店内は適度に賑やかだから、あまり改まった空気になることもなく話しやすいのでは、と考えたのだった。奈津美は初めて来た店だったようだが、カジュアルな雰囲気がお気に召したらしい。まあ、こいつはどこでも気に入るのだ。  角の半個室に案内され、細い

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第16話

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第15話

          Prev……前回のお話  なぜ佐倉への不信感が募ってしまうのだろう。ほんの些細なことだったはずだ。アズサがホワイトメールに拾われたのが二十歳だと、佐倉が勘違いしただけのことだった。なのにそれがきっかけで、アズサを紹介した時の佐倉を思い出してしまったり、その後のアズサへの執着が今更気になってしまったり、そう、今更だ。なぜこんなに不安に陥るのだろう。気にしても自分を苦しめるだけなのに。これでは誰も幸せになれない。不快な思考を止めたいのに、暴走したトロッコが火を噴きながら頭の中を

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第15話

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第14話

          Prev……前回のお話 「本当に大丈夫ですか?」 「大丈夫です、お世話になりました」  心配そうな駅員に一矢はぺこりと頭を下げて、駅の救護室を出た。まだどこか覚束ない足取りで出口を横切り、屋根の向こうに黒く湿った道路を見て、雨が降っていたことをぼんやり思い出した。救護室で寝ている間に、止んでいたようだ。濡れずに済んだのは不幸中の幸いか。一矢はじっと手のひらを見つめた。倒れた時に擦りむいたらしく、側面の皮が剥けて血が滲んでいる。頭を打ったかもしれないから、念のため病院に行くよ

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第14話

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第13話

          Prev……前回のお話  大原静流イチオシの焼き鳥屋「鳥連荘」は、会社のひとつ隣の駅にある、大きな提灯が目印の綺麗な店だった。ダークブラウンを基調とした和モダンな内装で、カウンター席もゆったりしている。 「元気だった?」 「先週会ったばっかだろ。元気じゃなかったら、こんなとこに来ない」 「そうかなぁ」  静流が首を傾げてこちらを見ている。実際、自分でも「元気じゃなかったくせに」と内心思った。しかし、そんなことはこいつにわかるまい。誤魔化せる自信もある。今日は気分転換さえ、で

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第13話

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第12話

          Prev……前回のお話  井田と会社に戻ると、ちょうど打ち合わせから戻った佐倉と廊下で出会した。井田はとんでもないことをしでかしたくせに、社長の佐倉に「っす」と頭を下げただけで、さっさと自分の席へ戻っていく。まあ、こんなことを許してしまっている佐倉が悪い。これは優しさではなく、職務怠慢だ。上司はしっかり部下を指導するべきである。そこまで思ってから、いや、それは自分もか、と一矢は反省した。佐倉も一矢も中学からスポーツをやってきて、大学では一緒にバスケをやっていた。ふたりとも体

          【小説】死ンダ君モ愛オシイ 第12話