見出し画像

掌編小説【悪戯】


ねえ、知ってる?
私、生まれ変わる前は人間だったのよ。
人間だったってことしか覚えていないくらいに、今の猫生が気に入っているのだけれど。
どうしても傍にいたい人がいてね。
その人のことも、猫になったら忘れてしまったのだけれど。
なんでかしら。
あなたの傍にいなきゃって、拾われたとき、体にびりびりっときたのよね。
もしかしたら勘違いで、静電気とやらだったのかもしれないけれど。
今の猫生はあなたの傍で終えたいと思うくらいには、あなたのことが大好きよ。
「今日は随分とおしゃべりさんだね」
たまにはちゃんと伝えなきゃと思ってね。
「何か気になることでもあるの?」
ただ大好きって伝えたかっただけよ。
「おしゃべりな君も可愛いな」
あなたも可愛いわよ。
「おやつを持ってこよう」
ああ!今そっちに行っちゃダメ!
「ん? どうしたの?……まさか」
……あーあ。逃げるが勝ちね。
でも大好きなのは本当だから、許してね。


100円からサポート出来ます。文章を書き続ける為の生活費にしますので、ぜひサポートよろしくお願いします!