Doctoral Consortium のススメ

筆者: 矢倉 (筑波大学大学院)

この記事は、HCI Advent Calendar 2023 の 19日目の記事として書いているものです。前日枠の渡邉さんが、ACM UbiComp の Doctorial Consortium (DC) についてとてもいい記事を書いていらっしゃったのを見て、私もせっかくの経験をシェアできればと書いてみます。


ACM CHI の DC で仲良くなった参加者が取って送ってくれた発表の様子の写真

概要

今年、私は AAAI 2023 と ACM CHI 2023 の2つの国際会議で DC に参加しました。どちらもほぼ同じ構成なので、具体的な説明は加藤さんの過去の ACM CHI DC の参加記を見てもらうとよいかなと思いますが、ざっくりというと以下の通りです。

  1. 自分のこれまでの研究と博士取得に向けての展望をまとめた原稿を作成する(AAAI の場合は2ページ、CHI の場合は6ページ)

  2. エッセー(なぜ参加したいか・何を得たいかなど)や指導教員からの推薦状(AAAIは不要)とともに投稿する

  3. 2-3名のレビュアーからの簡単なコメントと共に採択通知を受領する

  4. 当日までにプレゼン資料とポスターを用意して、メンターとやり取りする

  5. 前日にメンターの研究者と DC の参加学生での懇親会に参加する

  6. 当日はそれぞれがプレゼンを行い、フィードバックをもらう

  7. 会議期間中に研究内容についてポスタープレゼンを行う

よかったこと #1: 研究を俯瞰して捉えられるいい機会になる

なによりよかったのは、自分の過去研究をどうまとめるかを考える機会を得られるという点です。特に私は、デザイン支援や VR、セキュリティまで興味の向くままに研究を行ってきたので、1つのストーリーとしてまとめるということはあまり意識していませんでした。でも、DC においては1つのプレゼンやストーリーとしてまとめて発表することが求められます。そして、その観点で話すからこそ貰えるコメントもたくさんあります。また、自分の過去研究をどう切り取るとポスターセッションで興味を持っていられるのかをテストすることもできます。私の場合は、博士論文の時点でもどうストーリーをまとめるか悩むことになったのですが、DC の機会がなければもっと大変なことになっていた気がします。

よかったこと #2: 普段得られないフィードバックを得られる

DC の場は博士課程の学生を育てるという点に主眼が置かれており、受ける質問やフィードバックもそれを反映したものになっています。例えば、スライドのフォントサイズやスライドの順番へのフィードバックから「そもそもあなたは HCI という学問にどう貢献しようとしているのか?」というシビアな質問もありました。いずれも、プロの研究者になっていく上では欠かせないものですが、普段の研究ディスカッションの中ではなかなか意識しにくいものです。

プレゼン以外にも、学生を育てるための企画がたくさん用意されていました。例えば、AAAI では数年前に DC に参加して現在は PI となった研究者の招待発表があり、どのように研究者として自立していったかという話も聞かせてくれました。CHI ではメンターらによる Ask Me Anything セッションがあり、国ごとの研究者としてのキャリアの差やアカデミアの toxicity にどう向き合うかというようなトピックも飛び交っていました。普段の研究室以外でこういった話を聞く機会は限られているかと思いますが、非常に参考になりました。

よかったこと #3: 同じ参加者やメンターと仲良くなれる

そして、もう1つ大きいのが DC のメンターや他の参加者と仲良くなれるという点です。懇親会の場があるというのはもちろん、同じ博士課程の環境で頑張っている仲間とまるまる1−2日過ごすという体験も大きく貢献している気がします。WhatsApp グループが作られて(事前にアカウントを作っておくとよいかと思います)その後の学会期間中も、すれ違うたびに互いに Hi! と声を掛け合ったり、いっしょにランチに行ったりという機会がありました。また、AAAI では懇親会に AAAI President も参加しに来ており、学会運営のあり方などの話も聞けたのもよかったです。

AAAI のお偉い先生方と一緒に撮った自撮り

せっかくなので、それぞれの DC でよくできていたポイントも紹介したいと思います。

よくできていたポイント #1: ピアメンター制度

CHI の DC では、ピアメンターという制度が導入されていました。これは、参加者間でそれぞれ1人の博士学生がメンター役としてアサインされ、逆に自分が別の博士学生のメンター役になるというものでした。事前に Zoom でプレゼン練習をして、フィードバックをもらえるというのもよかったのですが、いざ懇親会に行ってみて知っている人がいるというのが、人見知りな自分としてはとてもありがたかったです。そこから互いに紹介しあうなどして、1人ずつ知り合いになっていくことができました。

よくできていたポイント #2: ランチ補助制度

AAAI の DC では、メンターの研究者とランチに行き、その代金を立て替えればあとから事務局が精算してくれるという制度がありました。なかなか学生の方から誘いにくい部分もありますが、これを口実に気軽に誘えるというのがとてもありがたかったです。単にケータリングにするのではなく、メンターと店を選んでざっくばらんに話せるというのも配慮を感じました。

おわりに

なかなか日本から参加している人は多くないような気がするのですが、とてもいい機会であることは間違いないと思いますので、少しでも興味のある人は応募してみてください!相談に乗ったり、応募資料を共有したりすることも可能なので、なにかあればぜひ 𝕏 等までご連絡ください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?