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『まっくろ』と静かな熱中について。

先日、市内の図書館で借りてまいりました
作・高崎卓馬さん/絵・黒井健さんの
絵本『まっくろ』を読みました。

この絵本を知ったきっかけはね、昨年末、
WEBサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載されておりました
役所広司さん×糸井重里さんの対談
『忘れかけていたことを思い出すように。』にて、
映画『PERFECT DAYS』の共同脚本である
高崎卓馬さんが手がけられた絵本として、
糸井さんがお話しされていたのでした。

役所 「渋谷区にあるThe Tokyo Toilet プロジェクトの
   トイレが舞台で、役はトイレの清掃員です」、
   と言われただけでおもしろそうというか‥‥
   うつくしい物語が生まれそうな予感がしていました。
   たぶんこういう映画には、
   一生役者をやっていたとしても
   なかなか出会えないだろうなと。

糸井 そうですよね。
   僕のなかでは絵本をめくるような映画だったというか、
   顔つきや身なりはリアリズムだけど
   非常に寓話的だったじゃないですか。
   めくるたびに、意外な小さなできごとが起こる。
   なので、共同脚本が高崎卓馬さんだと知って、
   なるほどと思いました。

役所 そうですか。

糸井 以前、高崎さんが手がけられた絵本と
   構造が似ているなと思ったんです。
   『まっくろ』(講談社)といって、
   家でも学校でも休みの日も
   画用紙をまっくろに塗り続ける子の話で、
   周りは不安に思っているんだけど
   じつはちょっとずつのことが何かを作っていて。
   今回の映画の脚本も、そういう風に感じました。

ほぼ日刊イトイ新聞『忘れかけていたことを思い出すように。』第四回より

この絵本『まっくろ』を読みながら、
でも、ぼくは、糸井さんのおっしゃるような
映画『PERFECT DAYS』と構造が似ている、
というのはうまくは言えないのだけれども、
とは申しましても、なんだか、そのことも
わかるような気もするし、そしてなおかつ、
すてきな物語の絵本でした。

絵本の内容としては、糸井さんも言われているのですが、
あるこどもがひたすら画用紙をまっくろに塗りながら、
先生も、親も、クラスメイトたちも
まわりのおとなたちもみな、
彼のことを心配するけれども、それでも
男のこはずっと黒く塗りつづけている。そして、、、
というストーリーなのだけれども、たとえば、
なにかに熱中しているときには、
そのことをまわりの人たちは心配をしてしまう。
つまり、「熱中」とは、まわりに
心配や不安を想起させてしまうし、
もしくは、まわりの人たちは
その人がなにをしているかわからないため、
奇妙にも映ってしまうことなのでしょう。
でも、熱中をしなければ
なにかを成し遂げることもできない。

‥‥というふうに考えるとすれば、
映画『PERFECT DAYS』の主人公である
役所広司さんの演じる「平山さん」もまた、
ある意味では熱中をなされている人で、
それも、日々、静かに熱中している。
そんな平山さんのことを、絵本『まっくろ』で描かれる
少年を心配する大人たちのように、
理解できがたい人もいるのだろう。

でも、たとえば、平山さんのことを
中野有紗さん演じる平山の姪の「ニコ」は、
とても慕っていて、それはつまり
『PERFECT DAYS』公式サイトの「cast」では、
ニコは、平山のことを
【小さいときに平山だけが自分の理解者だと感じることがあった。】
と記されているけれども、逆を言えば
平山さんの「静かな熱中」について、
幼少期のニコはなんとなく気がついて、
私もそんなふうになりたいと感じられた、
みたいなふうにも考えられるかなあー。
なんだかうまく言えないんですが、
こんなふうなことを思っておりました。

絵本『まっくろ』、読めてよかったなあ〜。

令和6年2月18日

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