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旅と酸っぱい葡萄

酸っぱい葡萄の話をご存じだろうか。

イソップ童話の話の一つで
葡萄を食べたいと狙っている狐が
その高さゆえに葡萄が取れず、
「きっとこの葡萄は酸っぱいに違いない」
と自分を納得させるという話である。

昨日この酸っぱい葡萄の話を
実感するエピソードがあった。

一昨日より家族で隣の県に
小旅行に出かけており、
昨日は帰るまでの間に
近くにある城に行ってみることにした。

私が住んでいる近くにも
城はあるのだが、
今回行った城は規模が全く違うので
内心私は楽しみにしていた。

朝に妻とその日の予定を立てて
城に行った後、他の有名な観光地に行こうと
決めていたので、
コインロッカーに荷物を預けずに
着替えなどを持ったまま行くことにした。

少々重い荷物を持ちながらも
城の近くに近づいてくると、
その石垣や門の立派さに
子供たちとテンションアップし始めた。

門をくぐり、約10分ほど歩いたところで
天守閣に近づいてくると人の列が見えた。

昨日は行楽日和だったこともあり
城に入ろうと思う人も多かったのだろう。

私はチケット売り場に向かおうとすると、
妻がふとこんなことを言った。

「荷物もあるし小さい子供もいるから
中に入るのはきっと大変やで。
中は人がたくさんいて狭いやろうから
今日はやめておこう」

実を言うと私は過去にこの城に
2度ほど入ったことがある。

外観こそ城であるが、
中はミュージアムのような感じになっており
スペースは十分広いことは知っていた。

そのことを妻に反論しようと思ったのだが、
ふと妻がなぜそんなことを言うのか
気になった。

私は日ごろ仕事で歩くことが多いので
ホテルからその城まで歩く30分ほどの
道のりは荷物を持っていても大して
苦にならなかったのだが、
妻は日ごろからデスクワークなので
辛かったようなのだ。

しかも、妻は昨日ライブに参加していたので
私たちよりも疲れが残っているのは
間違いなさそうである。

実際天守閣についた時にも
妻はテンションが上がっている様子はなく
疲れていたのであろう。

それゆえにこのようなことを
言ったのだろうと考えた。

内心すごく城に入りたかったが
疲れている妻を無理やり
連れて行くわけにもいかないので
諦めて外から眺めるだけにした。

その後、城の最寄り駅まで行き
次の目的地に向かうことにした。

その場所には有名な名物料理があるので
景色を見つつそれを食べることが
目的であった。

最寄り駅を降りてスマホのナビに
その場所を入れると駅から15分ほどの
距離を表示していた。

それを見ながら家族で進むと
何やら妻が再び言い出した。

その場所には昔妻と二人で
来たことがあったのだが、
その時に通った道と印象が違うので
大丈夫かと聞いていたのだ。

当時は車で来ていたので
そもそものスタート地点が違うことを
説明すると、
「ごちゃごちゃした道を歩くのが
心細いから引き返そう。
きっとこの道を行ったらもっと
ごちゃごちゃしたところを
通ることになるよ」
と言い出した。

この道は別に私が決めたわけではない。
自信がないからナビに従っているだけである。

しかもその道は大通り沿いなので
別に変な道でもなんでもない。

内心ムッとしながらも、
子供たちも疲れが見えてきていたので
仕方なく私たちは引き返し、
駅の近くで食事をすることにした。

私自身疲れていなかったかと言われれば
間違いなく疲れてはいたが、
私はそれよりも体験を重視したかった。

子供たちに色んな景色を見せてやりたいと
思ってルートも考えたのだが、
結局大してどれもできずに
帰路につくことになった。

この話はまさに酸っぱい葡萄と
同じであろう。

では私はどうすればよかったのであろうか。

強行して葡萄の甘さを教えてやれば
良かったのかとも考えてみたが、
それもやや強引な気がする。

私がすべきことは葡萄が取りやすいように
台を用意することだったのでは
ないだろうか。

そもそも狐が葡萄をあきらめたのは
葡萄が取れない高さだったからである。

葡萄が取れていれば狐はその甘さを
たたえていたに違いないのだ。

今回は歩いて目的地を回るというルートが
妻にとっては高すぎる葡萄となったのだ。

次回このような機会があれば
葡萄をもっと取りやすいように
ルートを組んでいこうと思う。

人と一緒に行動するときには
自分の基準だけで葡萄の高さを設定しては
ならない。

そんなことに気づかされる一日であった。





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