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親子の電荷

昨日は子供たちにとって連休最終日。

朝食後に食卓でくつろいでいたとき
翌日から学校が始まるので
何か不足しているものがないかを
息子に確認すると
「特に何もないよ」と言う。

正直親にできるのはこれぐらいだと
私は思っているので、
「一回早めに荷物を詰めて再確認しとけよ」
と彼に伝えて食器を洗い始めた。

そこからしばらくして
妻が部屋から降りてきた。

降りてきてしばらくはスマホを見ていたのだが
いきなり息子に「宿題は全部終わったん?」と
問いかけたのである。

実は私は息子の宿題が全て終わっていないことを
知っていた。

だが、あえてそれを息子に聞くことはしなかった。

それをいつどのタイミングでするかは
息子のタスクだと思っているからである。

妻からすれば先に終わらせてスッキリしてから
遊んだりくつろいだりすればいいと
思うようであるが、
それはあくまでも妻の価値観である。

息子が少し宿題を残していると聞いた妻は
「早くやってしまいなさい。」と息子に
強い口調で指示をした。

内心私は「アチャー」と思ったのだが
こればかりはどうしようもない。

苦虫を嚙み潰したような顔で
机に向かう息子。

そこから30分ほどしてから
息子は机から離れ、リビングにやってきた。

宿題は終わり、お茶を飲もうと
キッチンの片付けをしている私の横に
やってきたときふとこんなことを言った。

「ママだって直前までやってないことが
しょっちゅうあるのに、なんで言われなあかんねや」

私に向けて言った言葉なのかわからないほど
小さな声でボソボソと言ったので
一瞬独り言なのかとも思ったが、
私としては反応せざるを得ない。

家の前でボールを蹴ろうと息子を誘い
サッカーの練習をしながら彼の話を聞くことにした。

彼的には先ほど妻に言われた言葉が
モヤモヤしていたらしい。

確かに妻も直前になって慌てるタイプである。

先日の海外旅行の準備も
年末でバタバタすることもあり
私はクリスマスイブの日にはスーツケースを詰め終わり
諸々の書類もプリントアウトして
いつでも出発できるようにしていたのだが、
妻がスーツケースを詰めだしたのは実質前日であった。

私は別にこれが悪いとは思っていない。

どちらかというと私がせっかちなのは
百も承知だからである。

自分の価値観を相手に押し付けるつもりもないし、
相手の価値観を否定するつもりもない。

そればかりは夫婦だろうが親子だろうが
するべきではないと思っている。

実際息子はそんな妻に似たところがあり、
物事に対して比較的ゆっくりとしているなと
思うことが多いのだが、
妻からしてみればそんな息子の動きの遅さが
気に入らないらしく、つい指導してしまう。

だが、息子はその指摘に対して
「あなたも同じでしょ」と思ってしまう。

これまでは息子は「わかった」と素直に
妻の指摘を聞き入れてきたが、
(少なくともそのように私には見えてきたが)
息子も成長してきて、そろそろそれも
難しくなってきたらしい。

いい意味でこれは親離れ、子離れしていくための
第一ステップなのかもしれない。

良くも悪くも私達は親の性質を一定レベルで
受け継いでしまう仕組みを持っている。

こればかりは遺伝という抗えないものなので
どうしようもないが、
ここで似た性質を持つからこそ
いい意味で癒着しすぎずに程よく反発し合うことが
できるのかもしれない。

本来水に溶けないものを水に分散させるには
乳化剤というものを使うが、
その乳化剤は溶けないものの周りを取り囲み
(この状態をコロイドという)
一定の電荷を帯びるようになっている。

この電荷が皆同じだからこそ、お互いに反発し合って
綺麗に分散することができるのだが、
まさに親子とは電荷が同じコロイド同士のような
関係なのではないだろうか。

私自身自分の母と似ている部分があると
あまり思ったことはないが、
今も良好な関係を築けているのは
お互いに似た部分があり、それが適度に
反発をしているからなのかもしれない。

そんなことを考えながら
息子とボールを蹴りあっていると
だんだん息子の表情も明るくなってきて
いつの間にかサッカーの話題になっていた。

父親そして親にできることは
決して多くないが、
こうして子供の話をできるだけニュートラルな姿勢で
聞いてやる機会を作ることは
私にできる数少ないことの一つなのだろう。

これからさらに成長して
親に反発することも出てくるだろうが
そんなときも私はこの姿勢を守るように
したいと思う。

ちなみに息子は娘のことを
「顔はパパ似やけど、性格は完全にママ似」
と言う。

娘の奔放でワガママなところが
妻に似ていると思っているらしいが、
そう言われてみると
娘の性質は妻に似ている気がする。

なかなか鋭い指摘だなと思いながら
息子の言葉を思い返していたが
妻曰く、娘の性格は私に似てせっかちらしい。

確かにその傾向も否めない。

結局夫婦どちらもの性質が
ミックスされているということで
いいような気もするのだが、
ついついどちらに似ているかを
議論してしまうのは
一体なぜなのか不思議で仕方がない。

こうして疑問を掘り下げようとする性質は
息子と娘、どちらに受け渡されたのだろうか。
うっすら気になる今日この頃である。


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