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商店街が勝ち残る戦略

先日とある企業を訪問した。

今開発を進めている新商品に必要な原材料を
製造しているメーカーで、
創業50年を超える
その業界では知る人ぞ知る企業である。

これまでメール等での打ち合わせや試作品の
やりとりはしていたのだが、
いよいよスペックが固まってきたので
原材料メーカーの監査的な意味合いも含め
訪問することにした。

会社に到着するとさっそく応接室に通され
面談が開始。

試作品の評価結果をしたあと、
今後のスケジュールのすり合わせを行った。

それがひと段落したタイミングで
いよいよ工場見学の段階になったのだが、
工場に足を踏み入れた瞬間私の頭の中に
ある感情が浮かんでいた。

どのような創意工夫が見られるのかという楽しみと
設備や工場がとても古いことへの残念さが
混ざったような感情である。

実際工場見学をさせて頂いて
とても驚くことは沢山あった。

他との差別化をするために機械をカスタイマイズして
特殊な商品を製造していたり、
海外の法人とうまく人を行き来させることで
国内工場と海外工場の品質レベルを一定に保つ
アプローチが取られていたりして
さすが業界で名前を知られている会社だと
感心させられた。

しかしである。

残念なことに設備や工場はお世辞にも
新しいものではなかったのだ。

こんなことを言うと
「新しければいいというものでもないだろう」と
ご指摘を頂くことは覚悟しているが
その指摘は紛れもない事実である。

設備が古いからこそできるフレキシブルな
カスタマイズは間違いなくあるし、
古い設備でも最終商品の品質はしっかりと
作り込むことができる。

しかし、間違いなく生産性は最新の機械に比べ
低いのである。

今回訪問した企業と同じようなものを作っている
海外のメーカーに過去に訪問したことがあるが、
その工場に置かれていたのは業界の中でも
珍しいほどの最新の機械であり、
工場も非常にキレイなものであった。

そして、その機械は見た目がいいだけでなく
生産性も非常に高かったのである。

よく日本のGDPが伸びないのはなぜかという
議論がなされている。

この答えは決して一つではないと私も思っているが
間違いなくその一つの理由として
多くの企業が設備投資をしてこなかったことが
あると思うのだ。

今回訪問した企業のように日本の企業は
今ある古い設備をうまくカスタマイズしたりする
想像力と技術力は非常に高い。

その根底には「改善」というマインドが
あるのかもしれないが、
その力を使って多くの日本企業が
新しい商品を世に出し続けてきた。

ところが、海外ではその間に製造技術が
全く違う方向に進み
安定した品質で多くのモノを生産できる
優れた機械が次々に生み出されてきたのである。

これはまさにガラパゴス諸島の
生物の進化ととても似ている。

ガラパゴス諸島は他の地域の生物とは
異なる形で生物が進化したことで
独特の特徴を有した生物がいることで
有名になった地域である。

それになぞらえて旧式の二つ折り携帯は
ガラパゴス携帯などと呼ばれるのだが、
日本の製造業の多くもこれと同じように
ガラパゴス化してしている気がしてならないのだ。

もちろんガラパゴス諸島の中では
その独特の生物は何ら問題は起こさない。

むしろガラパゴス諸島の環境に
カスタマイズされて行きついた形なので
ある意味で最適解ともいえるだろう。

だが、それらの生き物が世界に出ていくと
何が起こるだろうか。

場合によっては他の生態系を乱すであろうし
逆に他の地域の生き物に駆逐されてしまうことも
あるだろう。

まさに日本の製造業はこれと同じことが
起こっていると私は思っている。

先ほど日本のGDPが低いと書いたが、
GDPというのはそもそも国際的に
国を比較する指標である。

ガラパゴス化した日本の製造業に
不利な数字が出るのは言うまでもない。

ではなぜ日本の製造業は設備投資を行わず
ガラパゴス化してしまったのか。

その理由も単純に一つだけではないだろうが、
あえて一つ理由を挙げるとするならば
中小企業があまりに多いことである。

独立行政法人中小企業基盤整備機構が
発表している数字を基にすると
日本の全企業数の中で99.7%が中小企業だそうだ。

中小企業の定義は資本金3億円以下もしくは
従業員数が900人以下ということなので、
当然ながら大企業に比べると取り扱える
金額も少なくなる。

これはイオンモールと商店街の関係に似ている。

イオンモールのような大企業は
動かすことができるお金の規模も大きいので
モール自体は最新化されて綺麗な外観・内装になるし
そこに置かれる商品も否応なく洗練されてくる。

しかし、商店街は1店1店の小さな事業者の
集まりなので、このような投資はできず
店で取り扱う商品の品質を上げたり
購入しやすい仕組みを作ったりすることが
精一杯となる。

いまだに元気な商店街はあるにはあるが、
日本の商店街の多くがシャッター通りに
なっているのは
まさに商店街の店ができる設備投資が
イオンモールのような大型店舗に負けてしまい
差別化ができなくなったからに他ならない。

まさに、私達日本の製造業はこの商店街のような
状況に陥っているのである。

ではいま私たちにできる事は一体何なのだろうか。

一つは最新の設備で大量に作るモノづくりでは
取りきれないニッチな市場を取ることである。

私が新商品として開発している商品の多くは
この発想に基づいたもので
決して大ヒットとなるような爆発的なものは
想定していない。

少量多品種の販売なので決して多くの金額は
儲けることができないが、
ニッチな市場故にある程度高くても購入してもらえる。

だが、当然そのニーズは多くないので
限られた椅子を数多くの中小企業で取り合わなくては
ならない。

結局のところ、競争に負けてしまう企業が増え、
大企業とほんの少しの中小企業しか
世の中に残らないような形になってしまう。

ではどうすればいいのか。

それは個人商店としてではなく
商店街として大企業と勝負をすることでは
ないかと思うのだ。

正直一つの企業で何かをすることは
限界がある。

新しい設備を入れることもできないし、
生産性や価格で勝負にはならない。

ならば、商店街でそれぞれの強みを活かしながら
チームプレーで勝負するしかないのだ。

もちろん、これがそんなに簡単な事ではないのは
百も承知であるが
今後日本の製造業のガラパゴス化は
強くなっていくのは明らかである。

GDPが世界4位になったことが
最近ニュースで話題になったが、
アメリカと中国を除けば
3位以降は正直ドングリの背比べと言っても
問題ないレベルの競争である。

これらのドングリたちのなかで
日本は特に高齢化が進んでいるし、
これから労働人口がさらに減ってくることが
確定している。

今後順位がどんどん落ちていくのは
どうにもならない事実であろう。

ならば、今から商店街としてできる事を
していかなくてはならないと思う。

もはや近くの競合店同士がいがみ合っている
時代ではなくなったのだ。

皆が一つの同じ商店街という気持ちで
これからの時代を乗り切っていかなくては
ならない。

今回私が行った工場見学は新しい商品の開発が
目的ではあったが、
実は広い目で見ると商店街のなかで
お互いに自己紹介をしあっただけなのかもしれない。

一致団結していくには商店街の中で
お互いに何ができるかを知り合わなくては
ならない。

まず私達が最初のステップとしてすべきことは
それからであろう。

偶然1社を訪問したことがキッカケであったが
何だかとても大きな話に着地してしまった。

だが、これは私のような一会社員がこのようなことを
本気で考えるぐらい、
日本の会社は瀬戸際に立っているという
証拠なのかもしれない。

ちなみに最近このような少し硬めの
内容を書くことが増えた気がしている。

以前はこのような内容をKindleに
書いていたのだが、
最近Kindle執筆をサボりすぎて
noteで書きたい内容に侵食してきたらしい。

水筒のパッキンから肛門を連想するような
私らしいヘンテコな記事を楽しみにしてくださる
読者の方にウンザリされないように、
少し別の場所でのアウトプットを増やさなくては
ならないなと思った今日この頃である。



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