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【YMS】イギリスの飯と日本の味

イギリスの飯はまずい。

なんていうのはよく聞く話だが、多種多様な文化が入り乱れるこの時代に、いつまでもまずい飯を食べ続けている民族がいるわけがない。

イギリスの食べ物と言えば、フィッシュ&チップス。以上。みたいなイメージがあるが、もちろん他にも郷土料理はある。シェパーズパイやコテージパイなどポテトと肉を使った料理や、オーブンで調理するロースト料理、スコーンや紅茶を嗜むアフタヌーンティーなど、おいしいものはいろいろある。

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(日曜に食べる伝統的な料理サンデーロースト)

ただ、食文化の豊かな国ニッポンからやってきた身からすれば、どれもこれも似たような味に思えてしまう。だいたいがオーブンを使った料理で、味付けもシンプルなものが多い。やっぱりちょっと物足りない感じはする。

そもそも、現代のイギリスで一番食べられているのはインドカレーで、二番目はピザだ、なんて話もある。当たり前だが、日本人が毎日すしを食べているわけではないように、イギリス人も毎日フィッシュ&チップスを食べているわけではない。インド料理やイタリアンはもちろん、トルコやタイ、スペイン料理のお店、中華や日本食のレストランなどがそこら中にあり、いろんな国の食文化が根付いている。

というわけで、イギリスでも美味しいものはいくらでも食べられる。私の中では、「イギリスの飯がまずいんじゃなくて、日本の飯が美味しすぎるだけでは」という結論に至った。

とはいえ、私は食にあまり興味がないタイプの人間だ。正直食べられればなんでもいい。そんな私は、2年間のイギリス生活の中で隠れた名店を探して食べ歩く、みたいなことはほとんどせず、ずっと自炊をしていた。

自分でご飯を作るにあたり、渡英前には全く見当がつかなかったことがある。それは、イギリスでどれだけ日本と同じ食材が買えるか、である。

私の滞在先であるブリストルには、アジアの食料品専門のスーパーがいくつかある。おそらく中国人オーナーの店がほとんどで、中国、韓国、タイ、台湾、日本など東アジアの国の商品を中心に取り扱っている。中東や西アジアのものもあったかな。

その中で、日本の商品はそれほど多くはない。が、それでも意外といろんなものが買える。醤油、白だし、みりん、めんつゆ、昆布だし、お好みソース、料理酒、ポン酢、味噌、昆布、干し椎茸、乾燥わかめなど、日本料理に欠かせない調味料はだいたいここで買うことができる。

ただし、このあたりの日本人しか買わないような商品は品切れになることも多かった。パンデミックやブレクジットの影響もあったのだろうが、安定供給というわけにはいかないみたいだ。

びっくりしたのが、納豆やちくわ、かまぼこなどが冷凍で売られていたこと。納豆を冷凍できるなんて知らなかった。かまぼこを買ったときなんかは、レジにいたバイトの子に「これは何?どうやって食べるの?」と聞かれた。「どうやって・・・?」と、とっさに言葉に詰まってしまう。日本人にとってはあまりにもありふれた食材だが、海外の人にしてみれば謎の食べ物なんだろう。その他冷凍食品でいうと、餃子や唐揚げ、うどんやラーメンなどもあった。

アジア系スーパーにはカップ麺やインスタント食品もある。ただし、見慣れた日清のカップラーメンのパッケージなのに、商品名などが韓国語で書かれているものが多く、日本語の商品はあまりない。焼きそばや乾麺は日本語のものも置いてあった。

また、普通のスーパーやお肉屋さんでは買うことができない薄切りの肉も、アジア系スーパーには売っている。なぜだか1枚1枚丸まっているが、豚や牛などの薄切り肉が冷凍で売られてる。これもパッケージが中国語(?)なので、「猪肉」とか書かれていたりするが、豚肉だろうと勝手に信じて買っていた。正直あまり美味しくはないが、牛肉のしぐれ煮や豚肉の蒸し焼きなど、たまに日本らしいものが食べたくなった時にけっこう使える。

野菜もヨーロッパとアジアでは採れるものがかなり違うらしい。なすやきゅうりは日本のものよりかなり大きめだし、ほうれん草は束ではなく葉の部分だけで売られていた。キャベツにも種類がいろいろあり、やたらと固いものが多い。

大根やれんこん、ニラ、白菜などは普通のスーパーにはあまり置いていない。ただ白菜はChinese Cabbage という名前でTESCOにあった。大根やれんこんはアジア系スーパーでしか買えない。私はれんこんが大好きなので、見つけた時は小躍りするくらい嬉しかった。

逆に、イギリスには日本にない野菜がけっこうある。parsnip(白いにんじんみたいなやつ)やswede(謎のごつい根っこ)sprout(小さいキャベツの芽みたいなの)などなど。初めの頃は、ヘンテコな謎野菜を見つけては「これはなんだ?」と調べてみるのが楽しかった。一度だけ、parsnipやswedeを買ってシチューを作ってみたが、あんまり美味しくなかった(笑)

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(右下がswede、上の白いのがparsnip)

アジア系スーパーではお米も買えるが、日本産のお米はなかなかない。私は5kgで£9のイタリア産のsushi riceを買っていた。基本的にsushi riceが一番日本の米に近い。

とまあ、ブリストルで買えるものはこんな感じである。ロンドンなら日本食専門店もあるし、もっといろんな日本の食品が買えるのだろう。しかし一地方都市でもこんなにいろんなものが買えるとは正直思ってなかったので、初めてアジア系スーパーに行ったときなどは嬉しくてつい、ぽいぽいと商品をカゴに入れていた。それをレジへもっていくと、請求される金額に愕然とする。おいおい間違っていやしないかい、とレシートをよく見るが、どうやらあっている。日本で買うより2倍、いや2.5倍はする。お財布にはやさしくないが、背に腹は代えられない。

慣れてくると、普通のスーパーでも買えるものがわかってくる。日本食はイギリスでも人気があるので、TESCOやSainsbury's といったイギリスのスーパーでも買えるものがけっこうある。醤油や豆腐は小さい店でも置いてあるし、生うどんや袋麺を売っているところも多い。

アジア系スーパーでも見つけられなかったものもある。それはコンソメと鶏がらスープの素。私は基本的に日本のレシピサイトをみて料理をしていたので、この2つがないとけっこう詰む。コンソメはチキンストックで代用していたが、やはり味が変わってしまう。

こういう実店舗で買えないものは通販で買えるのが今の時代。イギリスには日本の食料品を取り扱うサイトがいくつかある。配送料を考えると割高の水増しになるので、私はほとんど利用しなかったが、「~円以上購入で配送料無料」という常套サービスのために友達が声を掛けてくれて、一緒に買ってもらったことがある。明太子なんかもあって心躍ったが、お値段がその興奮を鎮める。確かこの時は鶏がらスープの素だけ買った。

日本の味が食べたくなった時、私はたまに唐揚げを作っていた。主な材料は普通のスーパーで買えるが、意外とないのが片栗粉だ。片栗粉は英語でpoteto starch もしくは poteto flour という。これもよく探すとアジア系スーパーにある。私は健康食品などを売っているHolland&Barret というお店で見つけた。

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以上が、イギリスで買える食材たちである。予想よりもいろんなものが手に入ったので、結局イギリスでも日本の味をずっと食べていた気がする。

ただし、お米だけは日本で食べるものに勝るものはない。語学学校に通っていた時、「一番恋しい日本の食べ物はなに?」と聞かれて「ライス」と答えたら冗談だと思われて笑われた。イギリスで米と言えば、だいたい細長くて粘り気のないタイ米を想像するので、米は無味で別においしくもなんともない食べ物なんだろう。私自身、お米をこんなに恋しく思う日が来るとは思わなかった。ふっくら甘くておいしいごはんが、替えの利かない故郷の味なのだと知った。


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