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【開催報告】みんなで考える「倫理の時間」vol.1

本日,第1回を開催しました。

参加者は5名。

はじめましての方も2名来てくださり,静かに自分と向き合って,穏やかに互いの考えに触れる時間。昨今あまりないアナログな時間になったのではないかなと思います。

ホントは,きちんと事前説明のnoteを書いてから第1回を迎えたかったのですが,ここはまず形にすべきと,かなり見切り発車してなんとか形にしました。

あえてアンケートも取らず,サクッと終えたので,参加者のみなさまの満足度がどれくらいだったか僕にはわかりませんが…

主催者としては,価値的な時間を提供できたのではないかと思っています。

(自己満足はなはだしかったら,参加者のみなさん叱ってください。)
(第一回に参加してくださった御恩は死ぬまで忘れません。ほんとに)

改めて,内容とその意図をお伝えしておきたいと思います。

1)概要

参加者の作文は音読するだけでデータの共有はなし。

写真撮影も,正解発表もありません。
(そもそも正解のないテーマです)

当日提出された作文がすべてで,コメントはあくまでも考えを深めるための視点の提供程度のもの。

型のある知識やスキルの付与でもなく,
また僕の価値観の押し付けでもありません。

誰の作文かは伏せたまま,
ただ黙々と…書いて聴く。

僕の声を介してみんなの価値観が交差する時間です。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

2)第1回のテーマとまとめ

今回のテーマは「家族」

事前予告やアドバイス・指導のたぐいは一切なし。

一応,共通認識としたのは以下の3点。

①まったく書けなくても,未提出でも問題なし。
②反対にかなりの長文になってもよし。
③すべてを読むとは限らない。

それぞれが,それぞれの経験を掘り下げながら,ちょっと軽々しくは読めない作文がたくさんありました。

途中,読んでて泣きそうになったな…2回くらい。

一番得るものが多かったのは僕かもしれません。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

3)講座の背景

この作文のワークは,法務教官時代に実際に非行少年たちと行っていたものです。

日記記入の時間を活用して15分くらいで書いてもらい,就寝前に読んでコメントしたのが元。

少年院では,お互いのことは顔と名前以外知らない。

だから作文も当然,名前は伏せて音読し,誰のものかはわからない。

それでも不思議なもので…

同じ境遇−同時期に同じ少年院の同じ寮にいる−の誰かが書いた,自分とはまったく異なる作文に触れると…

彼らの心には,僕たち法務教官の言葉よりも多くのものが沈殿されていったように思います。

多様性は,場ではなく各々の内面に宿るもの。
空間ではなく,心の中に内包されるもの。

僕はそう思っている。

親の社会性の低さゆえか…
経済的貧困のゆえか…
本人の選択ゆえか…

なんらかの事情により,多様な人間関係や健全な意味での適切な刺激を受けることなく育った彼らにとって…

「隣の人が自分と同じように
 意志と思考を持った別の人格である」

という気づきは非常に重要で,
その気づきなくして再犯防止はありえない。

自身と向き合い,
他者の価値観に触れる…

他者とは…

彼らから見て全く異なる人種である僕ら法務教官ではなく,同じ境遇なのに別の人格を持った”隣人”たちのことだ。

彼らの多くは,このワークを通して自己理解を深め,徳性を育んできた。

…少なくとも僕の目からはそう見えた。

知識と知恵のデジタル化が進み,AIによって無自覚なまま同質性の高い情報に踊らされるインスタントな現代社会において…

そういう時間はむしろ…

我々社会人にこそ必要なのかもしれない。

そう思って開催を決めた。

平日の昼間にしたのは,教員やフルタイムで働いている人とは違う人たちに届けたいと思ったからだ。

この時間に参加できる人たちにこそ,提供したいと思ったから。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

4)ちょっとした裏話

実は,この倫理の時間…

少年院で初めてやったときも同じ「家族」というテーマだった。

当時参加した子の中に,30分以上原稿用紙と向き合いながら,最後にようやく数行…

僕には家族がわかりません。

「家庭」というなら「みんなで住む家のこと」だとは言えるけど,でも家族ってなんだろうと考えても,僕にはわかりませんでした。

とだけ書いてきた子がいた。

その一方で…

自分の家族には触れず,他人事のように辞書的な家族の説明を書いてきた人もいた。

どんなテーマでも…

あえてか無意識にか,自分の内面に触れるようなことを避けて他人事のように書いてしまう人や…

読んでいてこっちがハッとするような斬新な切り口で書いてくる人がいた。

今日の第1回…

果たしてどんな展開になるかと思っていたけれど…2つの意味で驚いた。

①全員が自身の内面に触れる作文を書いてきたこと
②その後,多くの参加者が自身の作文をSNSで公開したこと

たぶん…

普段は親しい人にすら明かさないことを書いていたと思う。当然,それは書かなくてもよかったし,公開は想定していない。

それでも…

それをじっくりと言葉にし,それぞれが公開しているのを見て…僕はなんとなく…

やってよかったな

と思いました。

素敵な時間でした。
ありがとうございました。

どの作文も,体温の感じられる素敵なものでした。

次回のテーマは,何にしようかな。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

5)次回予告

次回は…

【5月25日(火)10時〜11時】

難しいことはな〜んにもありません。
ほんの少し心が”深く”なるワークショップ。
画面OFFでも一言も話さなくても受講できます。
一回完結です。お気軽に覗いてみてください。
定員は10名。



放デイのスタッフをしながら、わが子の非行に悩む保護者からの相談に応じたり、教員等への研修などを行っています。記事をご覧いただき、誠にありがとうございます。