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砂時計

夢をみていた  
みるのは何時もおなじ夢
何処かの夜の街 眩い光の中
誰だか 解らない若い女性
何か二人で話しをしている。

もう同じ夢を何度みた事だろう
場所も 登場する人物も 同じ
ただ、内容は 違っていたりと
何処か見覚えのある街
でも 見覚えの無い人物。

今朝も 同じ夢をみて起きた
ベッド横の窓 カーテンの隙間から
朝陽が線になり 差し込み
車道の白線みたいに伸びて
その後 置いてある砂時計の
横でスマホのアラームが鳴った。

変わらぬ毎日の始まり
顔を洗い 歯磨きして
トースターにパンを放り込み
珈琲を淹れる 
皿にはレタスを敷き
作ったスクランブルエッグを
適当に ばら撒く。

少し、くたびれたシャツに
グレーのシワだらけのスーツ 
履き疲れたウィングチップの靴
使い古したGUCCIの鞄に書類
玄関脇の 何時もの場所に鍵
扉を開けて 誰も居ない部屋に
響く 行ってきます。

エレベーターで地下の駐車場へ
鍵の束からリモコンキーで
車のドアの施錠を解き
助手席に鞄を投げ込み
滑り込む様にシートに座る
センターコンソール下に在る
スタートボタンを押すと
背中の後ろからエンジン音と
喧しい排気音で 目を覚ます車。


地下の通路から 緩やかなカーブの
スロープを昇り 陽に照らされた
ブルー アルピーヌ メタリックが輝く
1963年から1977年まで生産されていた
車が生産終了から40年となる
2017年12月に開催された
ジュネーブモーターショーで
初めて公開され26年ぶりの新型車となる。
アルピーヌa110 。

自宅を出てR16から 代官山まで
仕事場は 小さな広告代理店だ
まぁ小さいながらには社長が敏腕で
仕事は忙しい程には 固定客以外からも
依頼は尽きる事は無いのだが 
何分 忙し過ぎて 自分の自由が無い。

職場の社員は 20名程で やりくり
たまに代官山や 職場から近いので
渋谷などで 社員と夕食を済ます
勿論 独身者ばかりだが
既婚者は早く帰って家族と過ごす
会社の唯一の決まり事のように
まぁ半数は独身者だが 。

その日も、仕事が一段落した所で
幾人かで 食事に誰かとなく声が掛かる
恋人や他の約束が有る人以外は
大抵 仕事の愚痴の為に 食事へ行く
皆、思う事は ほぼ同じで 自由時間の事
人を増やすか!給料が減るか そんな所だ
近場では無く渋谷へ繰り出した。

タクシーで行き 電車で帰宅する人
帰りも タクシーで帰る人
車で行き 近場のパーキングに停め
アルコール抜きで車で帰る人
ま、それも人それぞれ毎度の事
渋谷横丁で 散々 愚痴って食べて
飲みたい人は 潰れない程度に
僕は休みの日に宅飲み位かな。



騒ぎが終わればMIYASHITA PARKへ
皆、好き勝手に分かれ 飲みに行くか
軽く 何かスイーツなど食べるグループ
または、屋上で 愚痴の続きをベンチで
ま、僕は屋上で風に当たりながら
誰かの愚痴を聞くタイプなのかな
中堅だから、若手の愚痴をきいては
改善策を考えるのも仕事の1つ。

疲れたな この数日は忙しくて
少しベンチでウトウトし始めた時
ぼんやり見える位置に砂時計が1つ
中の砂が落ちきったら自動て回転し
また上から砂が落ち始める 
何か 見ていると癒されるな
普通の砂時計だけど ウチのベット脇
チェストの上にも砂時計が置いてあるし
あの砂が落ちる度に時間がながれる。



さて、帰るか 仕事仲間と分かれ ふと
店先に置かれた砂時計を見たら
ちょうど回転して新たに砂が落ち始めた
MIYASHITA PARKを神宮通り側へ 
疲れた重い身体で歩きはじめた時に
正面から白い金魚のようなヒラヒラした
余り見掛けない服装の 女性が一人歩いて来た
すれ違いざまに女性が少し笑みを浮かべた。

女性と言っても二十代半ばか十代後半 ま、少女と言った所か
まぁ見た目で年齢は判断出来ないけれど
何となく笑みと 服装が気になり 
振り返った と同時に あの砂時計が
止まった。

疲れた頭で どう考えても 何も理解など
出来る訳もなく 1つだけ言えるのは
今この現状は あれだけ人が居た場所に
僕と白い金魚の少女だけ!
物理的にも 論理的にも 何に当て嵌めても
この現実は 砂時計が止まっている のと
同じ様に 有り得ないし まったく理解など
出来るはずもなく。

PM21時頃 MIYASHITA PARKの屋上から
皆が前もって打ち合わせした様な消えるなど
ある筈が無い 三十年生きて来て 初めての
夢の様な体験アトラクションみたいだ!
白い金魚の少女が 今度は不思議そうな
表情で こちらに歩いてくる 良く見たら
裸足のままで 。
僕の真向かいで立ち止まり 足元から
見上げる様に 僕の顔を 覗き込んで
少し 頭を横に傾げ また笑みを浮かべた。
               
僕の身長は178だから、その少女は多分
150位だろうか? もう少し低いのかも
無言のまま 左手を僕の前に差し出し
頭を逆の方へ傾げながら また微笑んだ
あぁ、僕は疲れて きっとベンチで寝たんだ
今は夢を みているんだ それ以外考え付かない
あれ?そう言えば この子の顔は 夢に出て来る
あの女性じゃないか! 服装も 覚えがあるぞ
やっぱり 夢なんだ ベンチで寝落ちしたな。


だが、周りの車道からは車が走る音と
下の店からは 客の雑談や笑い声が 
人が居ないのは屋上だけ 不思議な事だ!
良く周りを見渡していた時 また あの砂時計が
今度は、落ちるハズの砂が昇っている
思わず ファンタジーかよ!と 呟いてしまった
その様子に 少女は 笑い出した クスクス
ときおりアハハハハっと 。

また左手を差し出して来た そして名前を
口に出した「 蒼芭(あおば)私の名前は 蒼芭!」
「君の名前は? ねっ名前! 教えてよ夢の人」
僕は驚いた  夢の人?  もしかして
[ねぇ 君は夢で僕の事を 知ってたのかい?]
少女は 笑みのまま 頷いた
何が、どう言う事なのか さっぱり解らない
[あ、僕の名前は弘幸(ひろゆき)田辺 弘幸]と口から出た
「ふぅーん 弘幸さん そっか!イメージに
合ってるね」 またクスっと笑い ずっと僕の
目を見ている 。

[なぁ、君は 今この現状を 変だとは思わない
のか?] そう 尋ねたら またクスっと笑いながら
「弘幸は どう思うの? 夢の中での人と出逢えて
不思議?  周りの人は居ないし」
[正直に言うと 不思議だし、また夢なのだろう
そう思っているよ! 余りにも 不自然で まして
夢の中での人が、目の前に居る 僕には 理解が
出来ないし 訳が 解らないよ]!!!
微笑みながら「私は 嬉しいよ!貴方に逢えて
だって いつも夢の中で 優しいし 何時も 笑わせてくれるし、逢いたかったよ」。


夢なのか、現実なのか? 困惑している
だいたい!あの砂時計は 落ちるハズが
昇っている 夢じゃ無いなら 物理的に 有り得ない
普通に考えても 砂時計ってのは 重力で落ちるのだから!
悩む顔の 僕を 下から覗き込んで またクスっと
笑う蒼芭と名乗る少女。


「ね、手を出して 」 また左手を差し出して来た
僕は 悩みながら 少女の手に触れた!
その瞬間 辺りは 光りに 包まれ 真っ白な世界に
そして 気付くと 周りには 沢山人 
でも 蒼芭は 目の前に居る  何が起きたのか?
あの砂時計は?   砂が落下していた
「やっと 逢えたね 弘幸  私 ずっと逢いたかったんだよ  初めて夢で 会ってから ずっと」。

止まった時間は、どれ位だっただろう?
屋上から人が消え 少女と言葉を交わして
光りと共に 日常の中へ 戻ったが 少女は
僕の手を握り 目の前に 立っている!
あの 砂時計も 普通に砂は落下していて
どちらが夢なのだろう! いや夢の続きか
普通に考えりゃ、まだ夢の中なのだろう。

突然、上着のポケットからスマホが鳴った
一瞬 ビクッと なったが とりあえず
電話には出てみた  さっき分かれた社員が
すみません ベンチの辺りに 書類の封書
置きっぱなしに なって ませんか?
下まで降りて 気付いたんです 無いですか?
夢の中まで仕事かよ! まぁ探すか リアルだな
あっ 在った! おい さっきのベンチ横に
在ったから大丈夫だぞ! そう伝えると
明日の会議で使う資料なので 取りに 戻ります!。

少し待って 社員が書類を取りに戻って来た
僕をみるなり、 (先輩も隅におけませんね〜
まさか、こんな所で彼女と待ち合わせ だったん
ですか 明日の話題が 出来ましたよ)そう言いながら お辞儀をして 慌ただしく帰路に向かう 社員
つまり、彼にも 少女は見えている   まぁ夢って
何でも有りだものな! 不思議では無いか
またスマホが鳴った 今度は違う社員からだ!
(聞きましたよ! 今 女性と一緒だと  今まで隠してたんですかぁ〜! 間違いなく 明日は 会社中が
この話題で 持ち切りですよー! ) なんなんだ
夢であろうと、わざわざ連絡して来て 会社で話題に 曝されるって 。

「ね! 何か食べようよ 私ね 甘い物好きなんだよね〜」 そう言うと 屋上から続くsequenceの
VALLEY PARK STANDへ 

sequence MIYASHITA PARK
VALLEY PARK STAND

甘い物って  下のフロアで言いんじゃね?
なんで、わざわざ ホテルのカフェ ラウンジ
なんだ? 僕の手を掴みながら 歩き出した
彼女の金魚の様な 袖口と 裾 正面には 幾つかの
ヒラヒラした フリル ミニワンピースだが
背中は 腰の辺りまで 大きく開いていて
クロスした 細い紐で  その見えている背中には
少し大きな翼のタトゥーが 見えていた
カフェで 色々な話しを 楽しんで やっぱり毎日 
みている夢と同じで  これは夢の続きなんだ!
夜の街 眩しい光の中 この彼女と二人。

何もかもが、普通に 彼女との会話 店員さんとの
やりとり 他の客の会話も 不自然さは無く
いや、不自然と言うより 今日あったニュースの話題など  ごく日常的に 話しが聞こえてくる
夢か現実か曖昧な この現状に ハッキリと
解る事に 気付いた !
次から次へと 社員や 社長までがMailを して来る
その内容は 勿論 彼女の話題だが、社長からの
Mailだけは、彼女の事以外に 明日の打ち合わせ内容と 細かな手直し 何よりも その後ろから
聞こえて来る ニュース!!! 。

下を走り抜ける救急車と、社長の家のTVからの
事故のニュース  一致していた! 

あの不思議な出来事から 二年 が経ち
僕の部屋には 砂時計が もう1つ増えて
蒼芭が傍に居る  
あの日の事は 今でも良く解らないが
蒼芭との出逢い 夢の続き コレが現実なのか
そうでは無いのか 答えは出ない!
蒼芭が言った言葉「私ね、前世の記憶が残ったまま 今を生きてるのよ  貴方に逢うのは 前世以来なんだから ね」と 笑っていた。



そんな不思議な出逢い方  そんな不思議な恋
在って良いんじゃないかな。
二人は 仕事終わりに MIYASHITA PARKの屋上で 
今日も 眩しい光の中 夜の街を眺めながら
仕事仲間も一緒に 食事を楽しみ その後は
二人だけで 夜風に 笑い声が 流されている
お互いの左手 薬指には ペアリングが。

映画 マネキンより、STARSHIP 愛は止まらない

    

                  フィクションです
                  皆様🤗こんばんは🌟

       少しファンタジーなラブストーリー
       在りそうな、無さそうな不思議な事

では良き夜を😌 お過ごし下さいませ✨
何事にも感謝を忘れず
出来るだけ 笑顔で🍀

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