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子どもの感性を失ったおとな/『飛ぶ教室』より

2023年1月25日(水)

中学受験が近いからであろうか。
某大手塾の鞄を背負った少年が駅のホームで声をあげて泣いているのを見かけた。

私も中学受験を経験した身なので
「今は辛いかもしれないけど大人になって振り返るとそんな大変なもんじゃないよ。挫けないで!」と声をかけたくなった。

だが『飛ぶ教室』の前書きを思い出し
「少年に声をかける権利はあるのか?」と思いとどまってしまった。

どうしておとなは、自分の子どものころをすっかり忘れてしまい、子どもたちにはときには悲しいことやみじめなことだってあることを、ある日とつぜん、まったく理解できなくなってしまうのだろう。(この際、みんなに心からお願いする。どうか、子どものころのことを、けっして忘れないでほしい。約束してくれる?ほんとうに?)
『飛ぶ教室』 
エーリッヒ・ケストナー 著 池田香代 訳

児童文学を嗜んでいる身であるにも関わらず「子どもの感性」を忘れていたのだ。

「学校と家が世界の全て」
「学区外へ出るのは冒険」
「20分の休み時間でも全力で外遊び」

これらの感覚を生で味わうには、世界が広くなり過ぎてしまった。
けれど確かに「在った」ということは忘れないようにしたい。

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