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#海外文学のススメ

おすすめの作品や作家、注目している国や地域を教えてください!

急上昇の記事一覧

「なんにもしない」をする

 このゴールデンウィーク、わたしは「なんにもしない」を心がけてすごしいています。  目的は、とにかくゆっくり休んで自分を癒やすこと。  といっても、実際は「なんにもしない」は不可能で、ごはんをつくって食べたり、庭の手入れをしたり、読書をしたりと何かしらやってはいるのです。  わたしが心がけている「なんにもしない」は、「何かしなくては」とか「〇〇をしなくちゃ」と考えないようにすること。 「しなくては」じゃなくて、そのときしたいことをする。  ごはんは食べたいものをつくりたいから

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素直な心のうた -小説『車輪の下』の美しさ

【水曜日は文学の日】 以前『三四郎』について、ある種の途上で移行期だからこそ小説として美しいということを書きました。それとは別に、不定形な素の姿だからこそ、美しい青春小説もあります。 ヘルマン・ヘッセの高名な『車輪の下』は、そんな魅力的な小説の一つです。 田舎の秀才少年、ハンス・ギーベンラートは、神学校に優秀な成績で合格します。 しかし、厳しい学校での勉強や、反抗的な少年ハイルナー等、周囲の影響を受け、徐々に学校についていけなくなります。ドロップアウトして、何と

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ソクラテス~プラトンの入口「ソクラテスの弁明」他(改訂)

①「西洋哲学の祖」ソクラテス 時は紀元前400年頃の古代ギリシャに遡ります。 この時代の哲学は、プロタゴラスに代表される「相対主義」が主流でした。 「世の中に絶対的なことなどないのだ」「価値観は人それぞれであり、状況次第で変わるものなのだ」という考え方です。 それはある面において柔軟な考え方であると言えます。 しかし一方で、何でも「時と場合による」で済ませてしまっては「高い理想(イデア→後述)や真理を求める」という姿勢が欠落してしまうという一面があります。 民主主義

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ポール・オースターが死んだ日【夢の話、または短編小説の種 #5】

「ねえ、ダニエル、ポール・オースターが亡くなったって」 うとうとと眠りかけてニューヨークの街を徘徊する夢を見ていた僕は、ヴァージニアの声で目を覚ます。薄暗い部屋でヴァージニアはスマートフォンを覗き込んだまま「肺がんの合併症だって。あなた、若いころ、彼の本をよく読んでいたわよね」と続けた。以前、彼ががんで闘病中だと発表されたことを知っていたけれど、思わず狼狽した。スマートフォンの明かりに照らされるヴァージニアの顔をちらりと見て、毛布を手繰り寄せて背中を向ける。オースターの妻で

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イチ書店員が9年ぶりに読みたい「青春小説の傑作」

なんと。 昨年6月にコーマック・マッカーシーが亡くなった際も思いましたが、なぜこの方にノーベル文学賞が与えられなかったのか。。。 私がオースターの本を初めて読んだのは2015年。↓です。 ひとりの若者が人生に絶望して街を彷徨い、やがて師となる存在に出会う。住み込みで働き、奇妙な暮らしを続けるなかで、彼は少しずつ成熟を遂げていく。青春小説の傑作です。 当時、まさに人生に絶望しかかっていました。長年勤めていた書店がなくなると決まっていたからです。 いい機会だし、失業手当

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今この時期にアンカラにいたかった件

こちらは今から7年ほど前のツイートになりますが… トルコに滞在していたころの自分にとっての最大のメリットとは、まさに現地で出版されている書籍や資料が入手しやすかったということでした。出版社の多くがアンカラかイスタンブルのどちらかにありましたから、アンカラで出版された本はあの手この手を使って入手したものでしたし、イスタンブルにも国内からの注文ということで何かと便宜を図ってもらったものです。 で、年に1度のペースで、アンカラでは大規模なブックフェアが開催されていました。正式に

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5冊目。Under Rose-Tainted Skies、勝手に邦題「あなたと空を見上げたら」

原題:Under Rose-Tainted Skies 原作者:Louise Gornall 勝手に邦題:あなたと空を見上げたら 概要と感想 ノラは17歳。13歳のときに発症した広場恐怖症と強迫性障害のために、この4年間、自宅を出ることもままならない。今日もそう。ドクター・リーヴィスのカウンセリングを受けるために、母に励まされ、引きずられるようにしてやっとのことで車に乗ったけれど、結局、診察室まで行くことはできなかった。 ある日、ノラの面倒を見ながら生活を支える母が、

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ホラーは人間の本質を描く「寝煙草の危険」マリアーナ・エンリケス著、宮崎真紀訳

文学ラジオ第153回の紹介本 ホラーは人間の本質を描く 「寝煙草の危険」 マリアーナ・エンリケス 著 宮崎真紀 訳 国書刊行会 パーソナリティ二人で作品の魅力やあらすじ、印象に残った点など、読後の感想を話し合っています。ぜひお聴きください! 今年の第十回日本翻訳大賞の最終候補/ラジオで初めて紹介するホラー小説/海外のホラー作品だけど身近に感じる/耽美的で狂気的/著者&作品紹介/スパニッシュ・ホラー文芸とは/外箱付きで手触りのいい表紙/様々な形のホラーがあるが、人間が怖い

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【対米国の貿易🌎】アメリカとの貿易規模をデータを用いて定量的に理解していきましょう🔥:日本貿易の現状 2024 No.8🌟

日本貿易の現状(Foreign Trade 2024)私は貿易について、とても関心を抱いており 今後のキャリアにおいても知識を深め、実務経験 を積んでいきたいと強く思っています✨ そこで、以下のサイトを参考文献とし 日本貿易の現状(2024)について、理解を 深めていけるような投稿を作成していきます💚 なお、この投稿も含め適切な引用を徹底し 一切の収益化は実施しませんので、その点は ご了承いただけますと幸いです! 何よりこの投稿の目的は、日本貿易の現状を しっかりと認

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心の中を辿る旅 -小説『失われた足跡』の魅力

【水曜日は文学の日】 旅をすることは、自分の内面を探検すること。それは、ロードムービーや、旅を巡る小説における魅力でしょう。 私が好きな「旅をする小説」の一つに、キューバの小説家カルペンティエルの『失われた足跡』があります。探究としての旅が個人の内面にダイナミックに結びついた名作です。 アレホ・カルペンティエルは、1904年、スイスのローザンヌ生まれ。国籍はキューバでありながら、父親はキューバで有名な建築家のフランス人です。異国の地で生まれたことは、彼の作

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永遠の今~「シッダールタ」ヘルマン・ヘッセ(改訂)

ヘッセは、詩と小説によって知られる20世紀前半のドイツ文学を代表する作家です。 「シッダールタ」(1922)は、あるインドの求道者が悟りの境地に達するまでの体験を描いた作品です。 ヘルマン・ヘッセ(1877- 1962 ドイツ・小説家、詩人) 様々な職に就きながら著述活動を行い、穏やかな人間の生き方を描いた作品を数多く残した。代表作は他に「車輪の下」(1906)「デミアン」(1919) 「シッダールタ」(1922)「荒野のおおかみ」(1927)など。1946年にノーベル

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アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ 「エセー」入門』

アントワーヌ・コンパニョン『寝るまえ5分のモンテーニュ 「エセー」入門』を読み終える。もちろん、昨晩に。 本書のもととなったのは、2012年7月2日から8月24日まで、月曜日から金曜日までの12:55〜13:00に、フランスで放送された「モンテーニュと過ごす夏」というラジオ番組。放送台本がそのまま書籍として刊行されると、フランスでは約1年で17万部も売れたという。 わが国で翻訳するにあたり、エセーの入門書にふさわしい題名にしたとある。「誠実さ」「他者」「羞恥と芸術」という

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ピザをFAXする【ジョーク】sending pizzas by fax(ジャスパー・フォード『文学刑事サ-ズデイ・ネクスト』)

本の世界に入って事件を解決する文学刑事シリーズ。発明家の伯父について語られる箇所だ。 FAXでピザを送信するってすごくおもしろいアイデアだ。この本を読んだのはたぶん20年近く前で、筋はほとんど忘れていたけど、一度だけ言及されたこのアイデアだけはずっと覚えていた。 野暮を承知でなにが面白いのか説明してみると、その昔、世の中にFAXというものが登場した時に、「紙を送信できる」と勘違いする人もいて、平たくて薄いものだったら送信できそうな感じがあって、宅配ピザの普及もあり、『ザ・

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本に呼ばれるということ②(シェルビー・ヴァン・ペルトの「親愛なる八本脚の友だち」)

 本屋のいい所は、意外な本との出会いがあるとこです。  以前にも書いたことがあるのですが、本屋とかに行くと、時々、「本に呼ばれる」ことがあるんですよね。  基本、自分なりのリストを作って読書してる自分なんですが、時々、普段は手に取らないタイプの本が気になって仕方ない時があるのです。  今回、手に取ったのは、シェルビー・ヴァン・ペルトという見知らぬ作家さんの「親愛なる八本脚の友だち」という変わったタイトルをもった本なのです。 「親愛なる八本脚の友だち」シェルビー・ヴァン・ペ

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地球で見つけた好きな物の話ー本の章7頁ー

 地球を旅する冒険者の皆様、人口の多い王国では馬車や商人、通行人の量が増えている為、王宮の兵士達が手旗信号なる物で誘導を行なっているそうで御座いますよ。元本読師の文者部屋美です。  御無沙汰の「本の章」で御座いますが、前頁「本の章」6頁は何と 見事!note公式様! 「みんなのおすすめの本記事まとめ」に ピックアップして頂きました~!!!!! note旅団の皆様! 本当に本当に、有り難う御座いました!!!!  御陰様で、あっと言う間に文者の本ビューランキング「第3位」

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スペインのミステリー(ハビエル・セルカスの「テラ・アルタの憎悪」)

 自分のささやか読書趣向のひとつに、「読書を通じていろんな国を訪れる」というものがあります。(個人的に「読書的世界旅行」と呼んでます。)  まあ、常にというわけではないんですが、本との出会いの一視点といった感じで、海外のミステリーを読みながら、いろんな地域を訪れるのは、とても楽しいことなのです。  そんな自分が訪れていなかった国の一つがスペインだったのですが、今回、無事に訪れることができたので、今回はその報告なのです。 +  +  +  +  +  +  さて、今回、手

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イシュマエル ヒトに、まだ希望はあるか(著:ダニエル・クイン) 読書感想文

イシュマエル ヒトに、まだ希望はあるか(著:ダニエル・クイン、訳:小林加奈子、ヴォイス、1994) ライターの主人公が、イシュマエルという名のゴリラと、人類が世界を救うにはというテーマで対話するという小説である。 人類というものについて考えるヒントになる学術的な小説でもある。 人間は「取る者」(いわゆる文明人)と「残す者」(いわゆる未開人)に分かれるという。さらに私たちの文化の人間たちは、人と世界と神々について同じ一つの物語を演じているのだと。そして残す者と取る者は二つの異

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4冊目。The Ocean at the End of the Lane、勝手に邦題「オーシャン」

原題:The Ocean at the End of the Lane 原作者:Neil Gaiman 勝手に邦題:オーシャン 概要と感想 父の葬儀のために故郷の町へ戻った私は、式の後、あてもなく車を走らせるうち、引き寄せられるようにヘムストック農場にたどり着く。そこにはかつて、レティという名の少女が、母親や祖母と暮らしていた。私は、母屋の裏手にある池のほとりで、忘れていた記憶を取り戻す。レティは、その池を「大きな海(オーシャン)」と呼んでいた。 記憶は7歳の誕生

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『白鯨』を読む

『白鯨 上 』ハーマン・メルヴィル(岩波文庫) ペリーの来航より前に書かれたのだった。ペリーの来航が1853年、『白鯨』は1851年。すでにアメリカの「捕鯨船が日本の閂を開くであろう」と書いている。イシュメールの見解は(メルヴィルの見解ではない)鯨は魚類だった。哺乳類だとするリンネの科学的根拠も論じながらそれでも魚とするのは聖書「ヨナ書」でヨナが飲み込まれたのは巨大な魚とすることから。イシュメールは(鯨)聖書の書き手である。イシュメールの記述は鯨学から捕鯨の説明とか一つのバ

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ノートの勧め(その4)——未来について。

 今回は、「備忘録」(メモ)としてのノートではないというところに焦点を当ててみましょう。 「備忘録としてのノート」の典型的な例は、学校の先生のする、いわゆる板書を書き写すためのノートでしょう。早い話が、試験対策の一つですね。端的に言って、「創造的なノート」の対極にあるものです。  ここで勧めているノートは記憶を補佐するためのものではありません。むしろ、何かを探すための補助手段と言うべきものでしょう。その探すべき何かは、すでにどこかにあった何かではなく、あなたがこれから生み出す

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