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筑波大学×早稲田大学 関東大学サッカーリーグ1部 第2節 2021.4.10

こんにちは!へーこです。

今回は新しい試みで大学サッカーについての記事。関東大学サッカーリーグ1部、筑波大学×早稲田大学の試合模様についてマッチレビューをしていきたいと思います。どちらのチームもプロに劣らないレベルの高い戦術が仕込まれており、観ていてとても楽しいサッカーでした。そして、なんといっても試合中に出てきたビルドアップの形が豊富でした。どれも最近のトレンド戦術が多く戦術の勉強をしている身としてはとてもためになりました。

それでは早速、レビューに移っていきます。

スタメン

✳︎視聴できる映像の都合上、各選手の名前、背番号は割愛させてもらいます。

早稲田は4-2-3-1のシステムを採用。一方で筑波は4-4-2の形。基本的には同じシステムと捉えていい対決。同じ噛み合わせからいかに数的優位を作って相手を剥がすのか、あるいはいかに相手をプレスにはめていくのか。この辺りがこの試合の見どころの一つだった。

早稲田のボール保持時① 早稲田のビルドアッププラン

この試合、早稲田は基本的に下から丁寧にボールをつなぐビルドアップを見せた。その過程の中で早稲田が見せたビルドアップの形は主に3つ。細かく分けるともっとたくさん数えることもできる。プロのチームでもここまでビルドアップの種類が豊富なのは稀である。

そして、基本的な方針はどれも同じ。筑波の2トップのプレスに対して、どのように数的優位を作っていけるのかということである。

◆CHがCBの脇に降りる

まず、SBが高い位置をとる。SHは中に入ってハーフスペースにポジショニングをする。そして、空いたCBのわきのスペースにCHが降りて数的優位を作る王道の形である。レアル・マドリードトニクロースがすることで有名なこの形だが、ポイントが2つある。

一つはSBの立ち位置。図にあるようにSBはSHを引っ張る役割を果たしている。このため、立ち位置が高すぎず低すぎないようにする必要がある。

そして、もう一つはOMFの役割。ここに選手がいることによって、筑波のCHが中盤のスペースを開けずらくなり、降りていった早稲田のCHについていことができなくなる。

◆CHが2CBの間に降りる

こちらも王道のパターンだ。左右のSBが高い位置をとって、CBが開く。空いた間のスペースにCHが降りてきて数的優位を作っていく。そして、全体としては3-1-5-1の形に可変していく。ちなみにこの形はシメオネアトレティコが今季の途中から導入した攻撃的なシステムとして有名である。

◆GK+CB+CHによるビルドアップ

これはGKを含めてビルドアップするパターン。早稲田はこの形のビルドアップも明確に仕込んできていた。GK+CB+CHで筑波のCFに対して5vs2の数的優位を作っていく。ここでのポイントは十分にひきこんだ位置でビルドアップを開始することである。そうすることによって筑波のCHは早稲田のCHを抑えにいくことができない。この理由は前項と同じだ。筑波のCHが前に出ると中盤のスペースを大きく開けることになるからである。そして、ここでもOMFがCHの周りを漂うのが効果を発揮している。

ここまでが早稲田が用意してきていた3つのビルドアップの形である。そして、どの形でも重要なのがCHの振る舞い。この2枚が状況判断をしながらビルドアップの舵を取っていた。

さらに、ここではあまり触れなかったがCFの働きも見逃せない。ディフェンスラインと常に駆け引きををしてライン間のスペースメイクをしつつ、ビルドアップが詰まった時の逃げ場としてもキープ力を見せつけていた。

では、それに対して筑波はどのような守備を用意していたのか。

早稲田の保持時② 筑波の守備プラン

筑波の基本方針としては4-4-2のブロックを組んで早稲田を迎え撃つというものだった。ただ、そのまま早稲田がミスをするの待っているのかというとそういうわけでもない。また、早稲田に付け入る隙がないということもなかった。

◆SHが前に出て守備

これはSHが一列前に出て、相手をハメに行く方法である。この際、SHが縦パスのコースを消しながらCHへ寄せることによって、筑波のSBが早稲田のSBにチャレンジしやすくなるということだ。

また、この形は早稲田のCHの降りる距離が甘い時に発動しやすそうだった。

◆中盤に残ったCHへの縦パスを狙う

こちらはとてもシンプルな方法だ。早稲田の中盤に入った縦パスを狙うというもの。ただ、「相手の完全に死角からプレスをかけられる」「もし、奪えたら中盤の脇のスペースを使って一気にゴール前までいける」というメリットがある。

◆SHがSBについていく

これは前半16分の中断以降に見られた形。SBがSHについて行って一時的に5-3-2を形成する。前からボールを奪う、カウンターによる攻撃の可能性は下がるが失点をしにくいという点においてはこの形は安定する。

ここまで、筑波が早稲田からどのようにボールを奪うのかいうことに書いてきたが、筑波がこの形でボールを再現性高く奪えていたのかというと少し疑問は残る

そして、前からボールを奪う形をどれだけ整備できていたのかが、勝敗を分けたと個人的には感じた。

筑波のボール保持時① 筑波のビルドアッププラン

基本的に筑波のビルドアップ時の形は1通り。そして、早稲田がやってる形によく似ている。

4-4-2の形から、SHが中に絞ってきて、ハーフスペースにポジショニング。大外のレーンには高い位置をとったSBが進出する。そして左右に開いたCBの間にCHが一枚降りて3-1-5-1を形成する。この試合、早稲田がボールを握る時間が長かったのだが、筑波もボール保持時にはこの形を実践していた。

実際に34:42のシーンではビルドアップからの素晴らしい縦パスが見られた。よければ見ていただきたい。

似たようなビルドアップを採用していたにも関わらず、なぜボール保持の時間に大きな差が出てきたのか。(後半にかけてCHがCBの間に落ちる形も見られた。)

それには前述したように両チームが用意してきたボールを奪う形に原因があった。

筑波のボール保持時② 早稲田の守備プラン

早稲田の基本的な狙いは第一優先としてボールをサイドに逃す。そして、次に片方のサイドに圧縮をしながらボールを奪うというものがあった。

◆ボールをサイドに逃す

筑波の可変に対して早稲田は上図のように対応した。

まず、CF+OMFで2枚のCHを抑えるこれで中央のコントロールタワーを封鎖。そして基本的にSHは絞った位置で縦パスのコースを封鎖しているのだが、その位置から、左右のCBに対してSHが縦パスのコースを切りながら寄せて行く。さらに、ディフェンスラインの4枚はコンパクトに絞ってポジショニングをする。

この時、筑波のSBは高い位置でフリーの状況になるため、筑波のCBはそこにボールを最終的に逃すことが多かった。

この高い位置をとったSBは筑波の攻撃の起点になることが多かったのだが、早稲田としてはそこのリスクを承知の上でのディフェンスだったと考えられる。

◆サイド圧縮

この場合はプレスのスイッチを入れるのはCF。正対する筑波のCHに対して片方に方向づけをしながらプレスをかける。この時、重要なのはOMFが筑波の中盤に残ったCHを抑えていることである。こうすることで早稲田は筑波のビルドアップ隊を中央で分断。サイドに圧縮しながら、筑波が作っていた数的優位を解消しつつ前からボールを奪いに行った。

そして、この戦術でもキーマンとなっていたのはCFの選手。簡単に書いてはいるが、プレスのスイッチを入れる際にかなり早いスピードで迫力を持って寄せないと、簡単に筑波のCHに前に持ち出されて剥がされてしまう。さらに、CHに寄せてから、CBに対して2度追いのプレスをかける場面もあった。このプレーを80分ごろに交代する直前まで行っていたのは恐ろしい。

筑波と早稲田の勝敗を分けたもの

ここまで考えてくると、筑波と早稲田の勝敗を分けたものが見えてくる

試合を通じて見られたのは早稲田がボールを保持して、それを筑波が迎え撃つ形。一見すると筑波がボールをつなぐ形が少なく、早稲田がボールポゼッションに優れたチームのように思える。ただ、実態としては筑波も早稲田もビルドアップの形はそれぞれで準備されていた

筑波と早稲田のポゼッションの質以上に差を感じたのはボールを奪う形の精度だ。早稲田はより確度の高いハイプレスを行っていた。特に、ビルドアップをしているチームが作り出す数的優位を解消するようなハイプレスが仕込まれていた。このため、筑波はボールを保持していたも奪い返される頻度が高くなる。一方で早稲田から筑波がハイプレスでボールを奪う場面は少なかった。結果として、早稲田のボール保持の時間は長くなっていたと考えれる。

戦術的な準備の他にも個の質の部分でも早稲田は優っていた。全体的にフィジカル能力で差が見れれたのだが特に突出していたのは早稲田のCFの加藤拓巳

前述したが、この選手が早稲田のハイプレスを支えていたといっても過言ではない。前線から先陣切って、時には二度追いも辞さない迫力満点の鬼のようなプレス&プレスバック。その様はボルシアドルトムントのエーリンハーランドを彷彿とさせた。そして、早稲田のビルドアップの最終的な逃げ場としてもキープ力を遺憾なく発揮。常にディフェンスラインを駆け引きし、ライン間のスペースメイクでも貢献していた。

試合結果

関東大学サッカーリーグ1部 第2節 2021.4.10

筑波大学×早稲田大学

スコア 0-1

得点者 西堂

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