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有栖川有栖『スイス時計の謎』の小さなミス

有栖川有栖氏の『スイス時計の謎』には、とても小さなミスがあります。

と言っても、別にそれによって推理が成り立たなくなるとか、犯人が代わってしまうとかいうことでは、ありません。

講談社文庫版・第1刷を使って、説明します。
[ネタバレなし]

338ページ三行目から、338ページ十三行目にかけて、「将来あることをしなければならなかった」ので、『その時あることができなかった』ということを論じています。
(これを【証明A】とします。)

338ページ十四行目から、339ページ六行目にかけて、『その時あることができなかった』ので、「将来あることをしなければならなかった」ということを論じています。
(これを【証明B】とします。)

つまり、【証明A】の証明の途中で【証明B】の結論を用い、【証明B】の証明の途中で【証明A】の結論を用いているわけです。

もちろん、ミスと言えないほどの小さなものなので、推理に影響があるわけでも、犯人が代わるわけでもありません。

あえて言えば、346ページ五行目から346ページ十一行目にかけて、ある現象が起こった時点で犯人が確定する、となっている部分が、ある現象が起こったことを隠そうとした時点で犯人が確定する、となることぐらいでしょうか。

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