見出し画像

事業保障提案したければ、経営者のビジョンを知ることが重要


保障額をどう算出するのか?


法人保険の本質は「事業保障」です。経営者もしくはキーマンに万一の事があったときに、残された方々を守ること。これが保険募集人の皆様の使命であるとも言えます。「事業保障」が必要であることをどのように理解してもらうのか?については前回の記事で書きましたが、具体的に事業保障に必要な金額はどのように算出すればよいのでしょうか。
 
保険会社の所定のフォーマットには、こんな計算式が記されています。
(法人の販売管理費×6か月+借入金)×1.5という計算式。この計算式を皆様一度はお聞きになったことはありませんか。この計算式は現場では実際に使えないというのが私の本音です。実際にこの計算式に沿って、経営者の方に事業保障の提案をした場合、経営者はどのように感じると思われますか。

会社の方向性によって保障額の考え方は異なる


私も保険募集人の方がこの提案をされた現場に同行した経験があります。その時の経営者の反応はどこか納得していない様子でした。経営者が納得しない理由は、自身が亡くなったときどのような資金が必要なのかがイメージできていないからです。
 
私も小さいながら会社を経営しています。私と役員を含めて13名の会社ですが、私が万一死亡した場合、現在の状況では会社を清算する予定です。もちろん清算しなくて良いように、会社の仕組みを整えている最中ですが、今の段階では恥ずかしながら会社を継続する事は出来ません。しかし私も経営者として責任がありますので、残された従業員の方々がしばらく仕事に就けなくても問題ないように、2年分の給料を生命保険で準備しています。しかし私が亡くなったとしても会社を継続するのであればこの2年分の給料は確保する必要がありません。
 
つまり会社の方向性によって、経営者の死亡時に必要な資金が異なるという事です。にもかかわらず、先ほどお伝えした計算式で保障額を決めている(そもそも何となく保障額を決めている方も多い)方が多いのです。会社の方向性をヒアリングしないまま提案した保険提案には、全く血が通っていません。

会社の方向性によって必要な資金が異なる 

会社の方向性に関わらず必要な資金


経営者が亡くなったときに会社が取れる選択肢は「親族内承継」・「親族外承継」・「事業清算」の3つになりますが、それぞれのパターンによって必要な資金が異なります。大きくは「事業承継」・「事業清算」の2つに分かれますが、今回の記事では両方のパターンに共通して必要な資金について説明いたします。(次回の記事で事業承継時・事業清算時に必要な資金については記します)
 
事業承継・事業清算に共通して必要な資金は「借入返済に必要な資金」と「死亡退職金」です。「借入返済に必要な資金」については、親族内承継をするのか・親族外承継をするのかによって考え方が異なります。親族外承継の場合は第三者が連帯保証を引き継ぐという事(融資条件により、連帯保証がそもそも無い場合もあります)ですから、一般的には経営者の死亡時に借入を完済してしまう事が多いです。しかし親族内承継の場合は借入を完済しない事もありますので、方針を丁寧にヒアリングする必要があります。例えば「借入を完済する事で金融機関との関係性が薄くなるので、借入は残しておきたい」といったニーズがある場合もあります。 

借入金の返済資金準備
死亡退職金の準備

団体信用生命保険加入の有無


また団体信用生命保険の加入有無についても確認しておく必要があります。団体信用生命保険は、住宅ローンの際は一般的ですが、事業融資に関しても金融機関から提案される事があります。団体信用生命保険に加入している場合は、経営者の死亡時に借入残高が0になりますので、その場合は「借入返済に必要な資金」は不要です。ただし団体信用生命保険については、各借入に紐づけられますので1つ1つの借入について加入しているかどうかの確認が必要となります。

死亡保険金は個人で準備しておくことを推奨


続いて「死亡保険金」ですが、こちらは会社から「経営者のご家族」に支払われる資金です。これについては既に個人で加入しているケースもありますので、重複して保障を準備しないように注意しておくことが必要です。ちなみに個人的な意見としましては、経営者の家族の為の資金については個人保険で準備をしておくことが望ましいと考えています。

根拠をもって保険提案しよう

 
客観的な立場で保険募集人の方を見たときに、「この人は他の保険募集人の方とは違うな」と思う事があります。そう思える保険募集人の方の特徴は、「死亡保険金を一度でも運んだことがある方」です。死亡保険金を運んだ時に自分が提案した保険が正しかったのかどうかを真剣に考える機会となり、「保険」に対する考え方が大きく変わるからです。もちろん保険募集人の皆様が進んで死亡保険金を運ぶことはできませんが、もしお客様に万一の事があった時に、「根拠をもって保障額を算出しているので、残された方は金銭面では安心してもらえる」と思えるような提案をしたいですね。