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鎌倉暁文庫

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ベティとの朝の逍遥で迷い込んだ脈絡のない書肆
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記事一覧

【短編小説集vol,12】鎌倉千一夜〜鶴を折る女(ひと)

第59夜 母娘托生「 今年の花は大きい気がする」 母と鶴岡八幡宮まで朝の散歩をするのが日課に…

Kamakura Betty
11時間前
4

【短編小説集vol,11】鎌倉千一夜〜化粧坂情話

第54夜 ハッセルの血脈 カメラマン中澤佐喜雄の掻痒感はなかなか惹かなかった。6×6というフ…

Kamakura Betty
1か月前
10

【短編小説集vol,10】鎌倉千一夜〜花を創る

第49夜 青龍と八朔坊や 1月末、朝の犬の散歩は13年続けてきたとはいえさすがに堪える。あち…

Kamakura Betty
3か月前
9

【短編小説集vol,9】鎌倉千一夜〜あの日へネジを巻く

第44夜 ライカの死角  PCに向き合いすぎて視力を失った。撮影したデジタル画像をレタッチす…

Kamakura Betty
4か月前
4

【短編小説集vol,8】鎌倉千一夜〜すべては雑誌が教えてくれた

第39夜 鎌倉大学是空学部「地球が出来て何年と言われている? 「46億年です」 「では宇宙は?…

Kamakura Betty
5か月前
7

【短編小説集vol,7】鎌倉千一夜〜白粉花のしおり

第33夜 逍遥代行  両親亡き後、家に残り暮らしている。叔母からもらっていた縁談を昨夜断り…

Kamakura Betty
6か月前
11

【中編小説】猿楽町口伝

1  あんなビルが建っちまいましたけど、数年前まではあそこには果物屋だの薬局だの履物屋だの狭い軒の店が何件か連なってましてね、そん中になかなかくせのある古本屋があったんですわ。狭い間口の両側に天井までの本棚があって、そこに本がぱんぱんに詰まってるから、脚立で上がって上のほうのをちょっとでも無理して抜いたら崩れてくるんじゃないかってひやひやなんですわ。店の主人はそんなのに手を貸すこともなく奥のカウンターの中で黙々と分厚い本読みながらこっちも向かずに「気を付けてね」なんていいく

【短編小説集vol,6】鎌倉千一夜〜種を蒔く人々

第28夜 種を蒔く紳士 その史跡は再建されることもなくフェンスに囲まれた空き地になっていた…

Kamakura Betty
8か月前
8

【短編小説集vol,5】鎌倉千一夜〜胡蝶の夢よ

第23夜 シュレディンガーのシャッター 生まれた時からリビングの壁にかけられている大きく引…

Kamakura Betty
10か月前
12

【短編小説集vol,4】鎌倉千一夜〜しょっぱさは潮か涙か

第18夜 典座グルマン 物事は押し付け合わずに気がついた人がやればいいんです。それで大半の…

Kamakura Betty
11か月前
6

【短編小説集vol,3】鎌倉千一夜〜下り銀色列車にて

13,暗渠赤飯  いつも小さなことでも喜びのあった日には赤飯を買う。主人の昇進の日も、息子…

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【中編小説】ロートレックの掻痒

1 雨滴の軌道 アクセルを踏み込むとフロントガラスに残った一滴の滴が傾斜に沿って伝い落…

2

【短編小説集vol,2】鎌倉千一夜〜隧道のはるか先

7 妾隧道 暗い蓮沼に篝火が映る。沼は幅30m長さ50mほどで山に囲まれているため漆黒の鏡面の…

【中編小説シーズン3】Shabby Shic

1庵  これまでの人生を振り返るにつれ、穴があったら入りたいと思っていたら、いつの間にか穴蔵のような空間に身を置くことになっていた。ただし、岩肌むき出しのそれではなくここは外光も朧な障子に隔たれた庵である。もう少し補足すれば茶室である。 黒楽ならほぼ茶の泡に写り込んだ光が掌にかすかに見える程度、手にした碗もその暗さに紛れるほどの木々に囲まれた庵。 60歳になる記念に敷地内に設えた。 桜の大木に寄り添うように基礎を敷く際、 他の木々はすべて抜いたが庵が立ち上がってから新たに植