「同志国」

 日本政府が武器供与を含めた支援を行うOSA(政府安全保障能力強化支援)の相手先を「同志国」と呼ぶのが、よく分からないと書き出したのが、昨日(2023年4月11日)の天声人語です。


 そして、〈同志と言えばかつての共産主義国でさかんに使われた呼称を連想してしまう〉と続けます。なるほど、ソ連だと「タヴァーリシ」ですね。


 さらに、〈同志と呼ばれなくなることは粛清を意味した〉〈時代がかった排他的響き〉と、「同志」の言葉を腐します。

 ところで、OSAの目的は、中国のとどまるところを知らない拡張主義に対する抑止にあります。ただし、朝日新聞は、だからといって〈軍の支援にまで踏み込むのは危うくないだろうか〉と疑問を呈します。はっきりと反対だとは言いませんね。

 わたしも、OSAがいいとか悪いとか、賛成だ反対だは、ここでは問題にしません。ここは「日本語」に関する論考ですから。

 しかし、この「天声人語」の最後のまとめ方は、恐れ入谷の鬼子母神も裸足で逃げ出すあっぱれ! いや、喝!

 〈もはや中国でも…同志はほぼ死語である。そんなイデオロギーにまみれた過去の表現がいま、日本の安全保障の舞台で闊歩しているのはなぜだろう。奇妙に感じられてならない〉

 おやまあ。中国が軍拡をやめれば、日本だってOSAなんて必要ないんです。そう書けばいいのに、天声人語を読み終わると、なんだか、日本のほうがイケナイことをしている気分になりました。

 これが、朝日新聞の言う「角度」なんでしょう。



 蛇足。書き終わってようやく気付いた。これはアレだ、左翼でもないくせに、だれに断って「同志」を使っているんだっ! おまえらなんかに神聖な「同志」を使ってほしくないね、という潜在心理がほとばしり出たのかもしれません。

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